最終回 はじめての予想&馬券購入、その結末は……?!

さて、おなかもいっぱいになった所で、いよいよ馬券購入です!……と、馬券を買う前に、しなければならない大切なことがありました。そう、ここからは競馬の肝とも言えるだろう予想の時間です。

とはいえ、ビギナーさんにいきなり競馬新聞を渡して予想しろというのも無理なお話。
そこでまずは簡単に予想方法について説明しました。血統、距離適性、過去の成績、調教、パドックなど、様々な要素が折り重なり、競馬の予想は行われていきます。どの要素をメインに考えるか、イコール自分の予想スタイルを選ぶのも大切なことです。誕生日馬券や好きな馬名で選ぶ方法など、馬券の買い方は人それぞれであることを伝えてから、いよいよ1部の競馬新聞を3人で覗き込みます。

ビギナーさんが競馬の敷居を高く感じる理由のひとつに、競馬新聞があると思います。
とにかく専門用語と数字ばかりで、見方がさっぱりわからないというのです。6歳の頃から競馬新聞とにらめっこをしてきたわたしは自然と新聞の読み方をわかっているのですが、今回はその「わかっていること」を教えるのが大変でした。
普段自分が何気なく見ているものこそ、きちんと言葉にして説明出来るようにならないとダメだなと痛感。冷や汗をかきながらもどうにかして説明をすることが出来た、その結果。ゴールドシップ大好きなYちゃんは競馬の知識があるので、彼女なりの考えから応援する馬を決めました。そして競馬は全くの初心者であるKさんは、奥さんが今朝夢で勝つのを見たという2番の馬を買うことに。わたしは大好きなステイゴールドの産駒を中心に買い目を決めます。
結局、競馬新聞は馬名チェックと簡単な説明以外、ほとんど出番がありませんでした……。これもビギナーさんあるある、でしょうか。

さて、買い目がそれぞれ決まったところで、いよいよ馬券購入です。マークカードと赤ペンを手に、塗り方を教えます。これもビギナーさんには少し難しいみたいでした。「試験みたいですね」と話しながら、マークを赤く染めていきます。
ゆっくり丁寧にマークカードを塗ったあとは、最後の難関である発券機へ。最初にわたしが操作するところを見てもらい、それに倣ってKさんははじめての馬券を購入しました。発券機前に立つKさんの後ろ姿を見るのは、巣立つ雛を見守る親鳥のような気持ちです。
そしてわたしは「お金を先に入れてね」と何度も念を押します。
なぜなら、わたし自身が何度もマークカードを先に入れようとして、発券機に怒られているからです。自分と同じ失敗はさせまい、という親心でしょうか。しかしやがて聞こえてきたのは、Kさんの操作している発券機から「紙幣を先に入れてください」のアナウンス。残念ながら、雛鳥は親に似てしまったみたいです。

はじめて馬券を買って見るレースは、今まで芝生で寝転んで見ていたレースとは心持ちが全然違います。スタートする前から手に汗握り、緊張で心臓はバクバク、最後の直線の応援にも自然と力が入ります。わたしは応援していると夢中になってつい声を出してしまうのですが、ビギナーさんは声の出しどころもよくわからないとのこと。
「どのタイミングで、なんて叫べばいいの?」ですって。
叫ぶタイミングや内容は当然特に決まっていませんので、好きなときに好きなように叫んで大丈夫だよと伝えました。そうは言っても最初はなかなか照れもあり難しいもの。しかし慣れてくれば自然と声を発してしまうものではないかなと思います。叫ぶだけがレースの楽しみ方ではありませんし、周りに迷惑がかからない程度にアズユーライクで楽しんでもらえたらと思います。

そして、さあ、肝心の馬券の行方はというと。わたしの馬券は外れても良いから、せめて二人どちらかの馬券は当たってほしい……という、せめてもの願いはことごとく打ち砕かれます。
誰一人、何も惜しいところなく、全員まるっとハズレました。
その後、メインも含め3レースほど勝負しましたが、誰一人として当たらないという結末。ビギナーズラックはどこへ行ってしまったのでしょう……。なんとも残念な結果に、全員肩を落として帰路につきました。わたしは、馬券を当てて良いところを見せたい!と思っていたのですが、そういう時に限って簡単には当たらないのが競馬というものですよね。そういえば、最終レース前にはパドックへ行き競走馬を間近で見ることも出来ました。
はじめてのパドックにKさんは静かなる興奮を覚えていたようです。

パドックは、馬との距離が縮まる大チャンス。Kさんの様子を見て、最初にパドックへ連れてくれば良かったなぁと反省しました。わたしとしたことが、パドックを忘れるとはうっかりしていました。おそらくパドックはビギナーさんの一番食いつきの良い場面ではないかなと思います。

以上、KさんYちゃんと行くはじめての東京競馬場ツアーでした。

一応、一通り競馬らしいことは出来ましたし、ピクニック気分も楽しむことが出来ました。心から楽しんでいる表情、「また来たいです!」という素直なその言葉が聞けただけで、誘って良かったと思えます。わたしが競馬ファンとして当たり前だと思っていることも、ビギナーさんにとっては物珍しいことばかり。ビギナーさんと一緒に競馬場へ行くと、その度に新しい発見が出来ます。
これからも競馬に興味があるけど踏み出せない友人たちをどんどん競馬場へ誘っていきたいと思います。

最後に。開催時期にもよりますが、はじめて競馬を体験して貰うのであれば、わたしはなるべくなら東京競馬場を選ぶようにしています。
綺麗な建物、楽しいイベント、迫力のレース。
初心者向けでもあり、競馬の面白さを全身で感じることが出来る東京競馬場は、競馬のすべてを凝縮したような素晴らしい競馬場だと思います。

競馬ビギナーのあの人を誘って、競馬場へ行ってみませんか?きっと新しい競馬の魅力を発見出来ますよ!

写真:笠原小百合

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