[Rewind the race]神秘之石~2016年オークス~

2016年春の3歳牝馬戦線は「3頭」の実力馬を中心に回っていたように思う。
阪神ジュベナイルフィリーズを制したメジャーエンブレム、シンザン記念で牡馬相手に素晴らしいパフォーマンスを見せたジュエラー、そして無敗でトライアルを勝利したシンハライト。
レーススタイルや馬の強みもそれぞれ違うこの3頭のぶつかり合いに、競馬ファンは注目を集めていた。

結果的には3頭とも1つずつG1タイトルを獲得したのだが、今回はシンハライトが樫の女王に上り詰めたオークスについて振り返っていく。

2016年の桜花賞。
違う路線を歩んでいた「3強」が唯一、一堂に会したレースだった。
単勝オッズも3強が中心。中でも2歳女王メジャーエンブレムは1倍台という圧倒的な支持を得ていた。
しかしメジャーエンブレムが直線で苦しむ中、真っ先にゴール板前を駆け抜けたのはジュエラー、次いでシンハライトであった。
ミルコ・デムーロ騎手と池添謙一騎手の壮絶なたたき合いで、軍配はジュエラーに上がった。その差数センチというわずかな差は、シンハライトの初タイトルを大きく遠ざけてしまった。

それでも打倒ジュエラー、そしてクラシックへのリベンジのため、シンハライト陣営はオークスに挑んだ。
3強のうち、メジャーエンブレムはNHKマイルに出走して優勝。
3歳でG1タイトルを獲得していない「3強」はシンハライトのみとなった。
ジュエラーとの再戦が期待されたオークスだったが、ジュエラーが出走回避。
再戦は持ち越しとなってしまったものの、俄然シンハライトの初タイトルがより現実味を帯びてきた。
それでも初遠征や初距離、さらには馬体重の軽い馬はデータ上不利など厳しい条件がシンハライトの前に立ちはだかったのだ。
2016年オークス当日。
5月の東京競馬場は見事なまでの好天であった。府中で行われるクラシックは共にスタンド前にゲートがあり、多くの大歓声が18頭に注がれる。
当日の人気はシンハライトに集まり、堂々の1番人気に押された。馬体重は422キロで過去5年を振り返っても勝利すれば最軽量ということになる。
馬体重の小柄なシンハライトがどう2400mを攻略するかに大きな注目が集まった。

ファンファーレが鳴り響き、レースがスタート。
中枠の馬が好スタートを切り、1コーナーへ向かう。ダンツペンダントやエンジェルフェイスが先団にとりつき、縦長の展開となった。
シンハライトは中団後ろと、桜花賞の時よりも後方につけてのレースを選択する。
スローな流れの中レースは進み、3コーナーのケヤキを超えると次第に後方勢が進出。
徐々に横に広がってく馬群であったが、まだシンハライトは動かない。後方ラチ沿いで脚をためながら直線に入る。各馬が殺到の中、池添謙一騎手は外に進路を求めた。

残り400m。
先頭エンジェルフェイスにジュエラーの主戦であるミルコ・デムーロ騎手が騎乗したビッシュが追い詰める。坂を上がってもまだシンハライトは中団、進路が見いだせずにいた。
逆にビッシュを捕えにかかったチェッキーノがシンハライトを飲み込んでしまっていた。

万事休すと思われた直後、シンハライトの前に道が開けた。
池添騎手のアクションが大きくなると同時にシンハライトの差し脚が爆発。
1度は交わされたチェッキーノをあっさりと捕らえるとその脚でビッシュを一気に抜き去った。

この間100m。
まさに「切れ味鋭い」末脚だった。
着差以上のパフォーマンスで、シンハライトは見事樫の女王に輝いた。
レース後、ウイニングランで池添騎手は噛み締めるように拳を握った。
大歓声がこだました東京競馬場、今後シンハライトがどのようなパフォーマンスでジュエラーやメジャーエンブレム、そして古馬に挑むのかというワクワク感も感じられた。

しかしながらオークス後初戦となったG2を1勝して引退。もっとパフォーマンスが見たかっただけに残念な引退だったが、そのワクワク感は産駒に受け継がれ、ターフへと帰ってくる。

母の強さ、そして思いを受け継いだ子供はいったいどんなパフォーマンスを見せてくれるだろうか。

クラシックからクラシックへ。
その血は、より輝きを増している。

写真:Horse Memorys

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