[インタビュー]馬の魅力を多くの人に伝えたい! サンケイスポーツ・三浦凪沙記者 - 『知れば知るほど楽しくなる!ウマに恋する競馬ガイド』

 現在、好評発売中の書籍『知れば知るほど楽しくなる!ウマに恋する競馬ガイド』(小学館クリエイティブ)。競馬初心者が競馬を好きになるための入門書としても、競馬を既に知るファンが競馬をさらに知るためのガイドブックとしても人気を集め、発売約2週間で重版が決まった。著者は、サンケイスポーツ・三浦凪沙記者。父で横浜DeNAベイスターズ監督の三浦大輔氏は馬主としても知られる。今回は三浦凪沙記者に、競馬の魅力、そして本書の魅力を伺った。


多くの関係者によって成り立つ競馬界を知る一冊

「この本のテーマは『みんなを競馬の沼に引き摺り込もう』ということ。編集の方との最初の打ち合わせで決めました。多くの人に競馬の魅力をお伝えできれば嬉しいです!」と話す三浦さん。三浦さんは競馬の魅力・奥深さのひとつに「関わっている人の多さ」を挙げる。

「1頭の馬がレースを迎えるまで、本当にいろいろな人が関わっています。生産牧場の方から育成牧場の方、トレセンの方…。そしてその人たちは自分が関わった馬を心から応援していらっしゃいます。それこそ、直接的に金銭として得るものがないような立場でも、レースの際には声援を送っています」

 競馬に関わる人というのは、厩務員や調教助手といった、レースに向けて調教を積んでいく立場の人たちだけではない。三浦さんは「獣医さんや装蹄師さんなど、数えきれないほどの人たちが関わっていて、その中のひとりでも欠ければ競馬は成り立ちません」と力をこめる。

「本書には入りきらないくらいたくさんの方たちが関わっていて、たとえば私が週中に過ごしている美浦トレセンのスタンドは、午前の調教が終われば床が砂だらけになります。しかし、また翌朝に行くと綺麗な状態に戻っているのです。馬道のボロ(馬ふん)もそうです。競馬場もそうですが、調教やレースが終わると、それらを掃除してくださっている方たちがいらっしゃいます。その方たちのおかげで日々綺麗な場所で仕事ができているので、普段からトレセンにいる身としては常に感謝しながら過ごしています」

 三浦さんが挙げる「競馬に関わる人たちの多さ」は、書籍でも触れられている。調教師や厩務員に加え、生産牧場や育成牧場、レーシングマネージャーの方にも取材。普段は見られない舞台裏を知ることができるのは競馬ファンにとっても新鮮だ。

「競走馬は、1頭1頭にドラマがあります。競馬で何気なく見ている馬たちも、その場所にたどり着くまでの道のりが凄く大変だった馬もいます。それがたとえ、ファンからするとノーマークの未勝利馬でも同じです。最初はまともに走れなかった子だったり、ものすごく小さく生まれた子だったり…そういった数々の難関を乗り越えてデビューまで辿り着く馬もたくさんいるんです」

「結婚したいランキング1位はエイシンフラッシュでした(笑)」

 三浦さんはサラブレッドの美しさについても「ぜひ、多くの人に知っていただきたいです」と語る。

 学生時代には、エイシンフラッシュの見た目の良さに惚れ込んでいたという。

「テレビでエイシンフラッシュを見て、なんてカッコいい馬なんだと。結婚したいランキング1位なんて言っていたときもありましたね(笑) エイシンフラッシュの引退後、社台スタリオンステーションさんにお邪魔する機会があり、実際にこの目で見ることができたときは本当に感動しました。最近はムキムキな馬が好きなので、今はシュネルマイスターが1位です(笑)」

 記者となった今は、1頭1頭に詳しくなったことで、更にそれぞれの可愛さ・美しさに惹かれるようになったという三浦さん。まさに「知れば知るほど楽しくなる!」ということだ。記者になりたてのころはエフフォーリア、ユーバーレーベン、シュネルマイスターが活躍する時期であり、彼らの活躍が心の支えの時期もあったという。その21年クラシック世代が次々と引退したことで「今はロスになりました」と苦笑する。初心者の人におすすめの「推し馬」候補を問われると、手塚厩舎のレッドアトレーヴの名前が挙がった。

「レッドアトレーヴはレースではメンコをしているので分かりづらいですが、額が広めな子で、馬房で見た時のなんとも言えない表情がたまらなくかわいいです。性格もおっとりしていて、最近の推しです(笑)。あとは、パドックで推し馬を探すのもおすすめです! 私はリーゼントブルースを初めて間近で見た時に『こんなに可愛い生き物がこの世にいたのか!?』と驚きました。イラストなどで描かれるような『馬』のイメージよりもずっとカッコよくて綺麗な生き物なんだなと思いました。近くで見るとまた違った印象があると思うので、ぜひ馬を間近で見てほしいです!」

三浦さんならではの「表紙のNGカラー」

 今回が初めての書籍執筆となった三浦さん。初めに企画が持ち上がった時は「私で良いの!?」と驚きがあったそうだが、競馬の魅力を広げたいという思いから引き受けたという。そこからの執筆において、いくつもの壁があった。

「まず、競馬用語をどのレベル感で解説すれば良いかどうか、頭を悩ませました。私の日常で当然のように使われていた競馬用語たちでも、競馬を知らない人には伝わらないものが多くあります。厩舎、牡馬、牝馬などがその例ですね。改めて学ぶことも多く、おかげで『そもそも競馬とは?』『超キホンの競馬用語』のページは初心者の方にとって便利なものに仕上がったと思います。

「一番大変だったのは、(特集を組んだ)矢作先生が栗東にいる日に取材に行くことでした(笑) 電話だけならすぐに取材できたのですが、今回は厩舎にいる矢作先生を取材したかったので…。矢作先生と福島でご飯を食べている時にお願いしたのですが、ご快諾いただいたものの『その週はいない』『その日も東京』『その時は海外』とタイミングが合わず…秋から色々とスケジュールを探っていたのですが、気がつけば年を越していました(笑)」

 ようやく取材が決まったものの、GⅠレースの狭間のタイミングだったため、事前に「今、うちの有名どころはいないかも」と言われていた。しかし、実際に厩舎に行ってみると、東京大賞典がおわった直後のフォーエバーヤングの姿があったという。「いないものだと思っていたので、最初は見間違いかと思いました」と三浦さんは笑う。予想外の遭遇でフォーエバーヤングの特集ページの追加が決まった。他にも書籍では、松岡騎手に解説してもらったという馬具の説明など競馬ファンも大満足であろうディープな面も描かれている。

「表紙のデザインはすぐ決まったのですが、何色にするかで悩みました。なるべく多くの人が親しみやすいようにしたくて…。緑やピンクなどが候補で、個人的にはピンクが可愛いと思ったのですが、女性だけでなく男性にもとっていただきやすいようにと編集さんが違う色をご提案くださいました。ただそれが、なんというか、プロ野球の某球団を連想する色で…(苦笑) 『ちょっとその色は、家庭の事情で…』と変更してもらいました(笑)」

松岡騎手と三浦記者

「人生で本を出せるなんて思ってもいませんでした。10年前の自分に言っても信じないでしょうね。発売日に父は沖縄にいたのですが、こちらに戻ってきた翌日に自分で買いに行ってくれました。本屋に並んでいるところを見たかったみたいですね。美浦から家に帰ったら本が増えていてびっくりしました。母も発売日に購入してくれていたので、地元の本屋では一時、売り切れになりました(笑) 父は知り合いに『娘が本を出しました』と言って回ってくれていて、直接的な言葉はなくても喜んでくれているように見えます。『サインをください』と言われたので、サインをしました。ちゃんと宛名は『三浦大輔さんへ』と書いてあげましたよ(笑)」

 競馬に興味を持った人であれば誰しもが興味を抱いてしまうような一冊。馬主である三浦大輔監督の本棚にも、大切に飾られていることだろう。

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