![[フェブラリーS]ゴールドティアラ、ファストフレンド、トゥザヴィクトリー、ソダシ。フェブラリーSで牡馬に敢然と立ち向かった牝馬たち](https://uma-furi.com/wp-content/uploads/2022/11/04259078-B4FD-4CE4-8E11-CE6D474E2974.jpeg)
一年で最初におこなわれるGⅠフェブラリーS。2026年の出走馬には、過去2年の覇者コスタノヴァとペプチドナイルや、ダート二冠馬ナチュラルライズ、さらにGⅠ級2勝のウィルソンテソーロら実績のある面々が名を連ねる中、それらを差し置いて上位人気に支持されそうなのが牝馬ダブルハートボンドである。
デビューは3歳8月と遅かったものの、ここまで8戦7勝2着1回。JRAのレースでは負けておらず、前走のチャンピオンズCでGⅠ初制覇を成し遂げた。しかも、牝馬による同レース勝利は、サンビスタ以来2頭目の快挙だった。
ただ、JRAのダートGⅠを制した牝馬はこれら2頭だけ。フェブラリーSがGⅠに昇格した1997年以降、牝馬の勝利はなく、今回は30年近く破られてこなかったジンクスに挑む一戦となる。ただ、快挙へあと少しのところまで迫った牝馬も過去にはいた。
今回は、フェブラリーSで牡馬に敢然と立ち向かった牝馬を振り返りたい。
2000年 ゴールドティアラ、ファストフレンド
フェブラリーSがGⅠに昇格してから4度目の開催となった2000年。桜花賞馬キョウエイマーチとともに有力視されていたのが、ゴールドティアラとファストフレンドである。
このレースで2番人気に支持されたゴールドティアラは、デビューから芝とダートのレースに出走し計3勝。その後、10月のユニコーンSで重賞初制覇を成し遂げると、秋華賞16着、シリウスS1着、年明けの平安S3着を挟んで出走したのがフェブラリーSだった。

一方、ゴールドティアラより年が2つ上のファストフレンドは、3歳(当時の表記で4歳)5月にデビュー。3戦目で初勝利を手にすると、こつこつと力を付けながら条件戦を勝ち上がり、5歳春、地方・船橋のマリーンCで重賞初制覇を成し遂げた。
その後、オアシスSと武蔵野Sで3着に惜敗するも、スパーキングレディーC、エンプレス杯、クイーン賞と南関東の牝馬限定重賞を立て続けに勝利。さらに、JRAのオープン霜月Sで4連勝を達成すると、年末の大一番、東京大賞典が2着、川崎記念3着を挟んで臨んだのがフェブラリーSだった。
レースは、揃ったスタートからキョウエイマーチがハナを切ろうとするところ、地方・大井所属で南関東二冠とジャパンダートダービーを制したオリオンザサンクスがこれを内から交わして逃げた。ただ、前半800m通過は45秒3と非常に速く、これは2025年現在でもレース史上最速タイの猛ラップ。レース中盤からは大逃げとなり、その様子がビジョンに映るとスタンドは大きくどよめいた。
一方、そんな流れをはるか前に見ながら、ゴールドティアラは後方13番手を追走。同じく牝馬のレッドチリペッパーを挟んで、ファストフレンドは後ろから2頭目に位置し、最優秀ダートホースのタイトルを2年前に獲得したウイングアローが最後方に控えていた。
その後、オリオンザサンクスがようやくペースを落として迎えた直線。坂上で先頭に躍り出たのが前年覇者の岩手所属馬メイセイオペラで、後続を徐々に引き離そうとする中、セレクトグリーンが懸命にこれに食らいついた。
ところが、これでもスパートのタイミングが早かったか、ゴール前で様相一変。後方に控えていたゴールドティアラとファストフレンドが馬場の中央を勢いよく伸び、牝馬によるワンツーが目前まで迫っていたものの、最後の最後でこれらをまとめて交わしたウイングアローが1着でゴールイン。半馬身差でゴールドティアラが2着となり、ハナ差でファストフレンドが続いた。
それぞれ武豊騎手と蛯名正義騎手のほぼ完璧な騎乗に導かれながら、惜しくもビッグタイトル獲得はならなかった2頭の牝馬。ただ、この敗戦は両馬にとって次走以降に繋がる敗戦となった。
まず、ゴールドティアラは、ここから重賞タイトルを2つ上乗せした後に臨んだマイルチャンピオンシップ南部杯で、ウイングアローに雪辱を果たし4馬身差の圧勝。待望のGⅠ級初制覇を成し遂げた。
一方のファストフレンドも、東海Sをレコードで勝利したあとに臨んだ帝王賞でドラールアラビアンとのマッチレースを制し優勝。ゴールドティアラより一足早く待望のGⅠ級制覇を成し遂げると、年末の東京大賞典も勝利した。
同年にこれら2つのビッグレースを制した牝馬は、2025年時点でファストフレンドだけ。とりわけ、牝馬による東京大賞典勝利は今のところこれが最後で、非常に価値ある勝利となった。
2001年 トゥザヴィクトリー
21世紀最初のJRA・GⅠとしておこなわれた01年のフェブラリーS。このレースに、サンデーサイレンス産駒の牝馬として初めて出走したのがトゥザヴィクトリーである。
阪神・芝1600mの新馬戦で初陣を飾ったトゥザヴィクトリーは、3戦目のつばき賞も勝利。一躍クラシック候補に躍り出た。ところが、アネモネSで3着に敗れ優先出走権獲得を逃すと、なんとか抽選を突破して出走した桜花賞も3着。さらに、オークスもゴール寸前でウメノファイバーに差され2着と惜敗し、秋はローズSと秋華賞で4、13着と敗れ、よもや無冠に終わってしまった。
それでも翌年、復帰3戦目のクイーンSで待望の重賞制覇を成し遂げると、府中牝馬Sも連勝。エリザベス女王杯は4着に敗れたものの、阪神牝馬特別で3つ目のタイトルを獲得し、生涯初のダート戦に挑んだのがフェブラリーSだった。
レースは、わずかに出遅れたファストフレンドとイーグルカフェとは対照的に、大外枠のトゥザヴィクトリーが好スタート。そのまま逃げの手に出るかと思われた。しかし、これを内からレイズスズランとマンボツイストが交わし、ノボジャックとアローセプテンバーが加わったことで5頭が先行集団を形成。前半800m通過は47秒1と淀みない流れで、先頭から最後方までは20馬身近い隊列となった。
そんな流れの中、トゥザヴィクトリーは中間点付近から馬なりで上昇を開始。続く4コーナー出口で早くもノボジャックを交わすと、なんと単独先頭に立って直線を迎えた。
直線に入ってもまだ持ったままのトゥザヴィクトリーは、鞍上の武豊騎手がターフビジョンで後続との差を確認しながらギリギリまで追い出しを我慢。坂を駆け上がったところでようやく追い出しを開始した。
ここへ迫ってきたのは、ノボトゥルーとウイングアロー、サンフォードシチーの牡馬3頭で、ノボトゥルーがゴール前70mで先頭に躍り出たものの、トゥザヴィクトリーも必死に抵抗。しかし最後は力尽き、ウイングアローにも交わされて結果は3着だった。
ただ、初めてダート戦に出走した牝馬が、スペシャリストが集うGⅠの大舞台であわやの場面を作ったことは衝撃だった。とりわけ、直線に向いた時点での唸るような手応えは印象的で、四半世紀が経過した今もあのシーンを鮮明に記憶しているファンは少なくないだろう。
そして、この惜敗がフロックではなかったことを証明するように、次走ドバイワールドCに出走したトゥザヴィクトリーは、米国のキャプテンスティーヴにこそ完敗を喫したものの2着に健闘。同レースで連対を果たした牝馬は、2025年時点においてトゥザヴィクトリーだけである。
そして、さらにそこから7ヶ月半の休養をはさんだエリザベス女王杯で念願のGⅠ制覇を成し遂げると、有馬記念でも3着に好走。ホクトベガに続く二刀流の牝馬として、さらには重賞ウイナーを複数送り出した一流の繁殖として競馬史に名を刻んだのであった。

2022年 ソダシ
白毛馬として世界初のGⅠウイナーとなり、アイドルホースとしても確固たる地位を築いたソダシ。この馬もまた、フェブラリーSで牡馬に敢然と立ち向かった牝馬である。
デビューから4戦無敗で阪神ジュベナイルフィリーズを制したソダシは、休み明けの桜花賞も驚異的なレコードで優勝。その後、オークスで8着に敗れ連勝はストップしたものの札幌記念で古馬を一蹴し、早くも5つ目のタイトルを獲得した。
ところが、続く秋華賞から気難しい面が顕在化し、ゲートで突進した際に歯が折れたことも響いたか10着に大敗すると、初めてダートに挑戦したチャンピオンズCも12着。日本ダート界の伝説になった父クロフネとの親子制覇はならなかった。
それでも陣営はダート戦にこだわり、4歳シーズン初戦としてフェブラリーSを選択。ただ、前走の大敗もあってか、ソダシはデビュー以来最低となる4番人気に甘んじていた。
レースは、ほぼ揃ったスタートからテイエムサウスダンがいこうとするところ、サンライズホープが内からこれをかわし先頭。ソダシは2番手につけたが、3ハロン目でテイエムサウスダンが先頭を奪い返し、他の15頭を引き連れる展開となった。前半800m通過は46秒8のミドルペースながら、先頭から最後方まではおよそ12馬身。さほど縦長の隊列にはならず、その後も並びに大きな変化はないままレースは直線を迎えた。
直線に入ると、逃げ込みを図るテイエムサウスダンにソダシとカフェファラオが迫り、その後、カフェファラオが単独先頭に立った。しかし、ソダシも直線半ばで後退した前2走とは違い、テイエムサウスダンとともに必死に抵抗。ゴール前でもう一度ファイトしたものの、上がり3ハロン34秒3という素晴らしいスピードを繰り出したカフェファラオには及ばず、テイエムサウスダンからも半馬身遅れ3着でゴールイン。レース史上初の快挙が成し遂げられることは、またしてもなかった。
ただ、勝利こそならなかったものの、前走と同じ左回りのダートGⅠで大きく巻き返したソダシは、十二分に見せ場を作った。母ブチコも現役時はダートで出世したため、血統面からマイナスになるとは思えず、陣営の思惑は当たっていた。
そして、このレースで再浮上のきっかけを掴んだソダシは、そこから3ヶ月の休養を経て出走したヴィクトリアマイルを完勝。桜花賞以来となるビッグタイトル獲得に成功し、翌年の同レースでも2着に好走した。

ここまで振り返ってきたように、GⅠに昇格した97年以降フェブラリーSを制した牝馬はいないものの、3着内に好走した4頭は、すべてその年にGⅠ級のレースを勝利した。一方、2026年のフェブラリーSに出走するダブルハートボンドは、既に牡牝混合のダートGⅠを勝利している実績馬。秋春ダートGⅠ統一はもちろん、この先のさらなる飛躍、そして同じく坂井瑠星騎手が主戦を務めるフォーエバーヤングとの対決も楽しみになりそうだ。
写真:かず、Horse Memorys
