[重賞回顧]東からもシンデレラ候補が誕生 ~2021年・ダービー卿チャレンジトロフィー~

ダービー卿チャレンジトロフィーは、53回目を迎えた伝統のハンデ重賞。ヴィクトリアマイルや安田記念といった、東京競馬場で行われるマイルGⅠの前哨戦となっている。

2008年以降は毎年フルゲートで行われ、なおかつハンデ戦のため、いっそう大混戦となっている。しかしここを勝利したショウワモダンとモーリスは、その年の安田記念を制覇。さらに、2016年の2着馬ロゴタイプもその年の安田記念を制し、3着馬のサトノアラジンも、翌年の安田記念を制している。

今年はウインカーネリアンが出走を取り消して15頭立てとなったが、単勝オッズ10倍を切ったのは5頭と、やはり混戦模様。その中で、1番人気となったのはスマイルカナだった。彼女にとって中山芝1600mは、ここまで4戦3勝2着1回、重賞を2勝している相性の良い舞台。また、この馬のオーナーは、先月急逝したビッグレッドファームグループ代表の岡田繁幸氏で、弔いの一戦となるかにも注目が集まった。

2番人気に続いたのは、ルフトシュトロームで、1年前に、同じ舞台で行われたニュージーランドトロフィーの勝ち馬。前走の京成杯オータムハンデキャップでは16着に敗れたものの、中山芝1600mは4戦3勝とやはり好相性。ルメール騎手が騎乗することもあり人気を集めた。

3番人気となったのはテルツェット。ここまで5戦4勝3着1回と大崩れがなく、現在3連勝中。ディープインパクト産駒の良血ということもあり、注目を集めていた。

以下、前走の東京新聞杯で人気薄ながら2着と好走したカテドラル、昨年の2着馬で、この舞台が得意なボンセルヴィーソが人気順で続いた。

レース概況

ゲートが開くと、ボンセルヴィーソが好スタートを切った一方で、エメラルファイトが2馬身ほど出遅れてしまった。

逃げ争いは、最内のスマイルカナを制して、1年ぶりの復帰戦となったマイスタイルがハナを切り、1馬身半のリード。以下、トーラスジェミニ、スマイルカナ、メイショウチタン、ボンセルヴィーソの順で続き、早くも縦長の隊列となった。

他の上位人気馬は、ルフトシュトロームが10番手、テルツェットが11番手、カテドラルが13番手と、それぞれ中団よりも後方を進む展開に。

最初の600m通過は34秒3と平均ペースだったものの、そこからも11秒台前半のラップが連続し、1000m通過は57秒1のハイペース。

出遅れて大きく馬群から離されたエメラルファイトと、異常歩様となってさらに大きく離れたレイエンダを除くと、先頭から13番手のカテドラルまではおよそ15馬身。ただ、前の10頭は7~8馬身差で固まっていた。

勝負所の3~4コーナー中間点でも、依然として先頭はマイスタイルで、リードは変わらず1馬身半。そして、残り600m標識を通過したところで、馬群から離れていたテルツェットやカテドラルが一気に差を詰め、14頭がほぼ一団となって4コーナーを回り直線へと入った。

迎えた直線勝負。

マイスタイルがリードを2馬身と広げるも、そこへ襲いかかってきたのが、テルツェットとボンセルヴィーソの2頭。とりわけテルツェットの伸び脚が良く、坂を上りきったところで先頭に立った。ボンセルヴィーソも懸命に食らいつくが、外からカテドラルが一気に差し脚を伸ばし、ゴール寸前で2番手に上がるも先頭までは届かず。

結局、テルツェットが1馬身差をつけて1着でゴールイン。2着にカテドラル、3着にボンセルヴィーソが入った。

良馬場の勝ちタイムは1分32秒6。テルツェットが4連勝で、初の重賞タイトルを獲得。また、騎乗したミルコ・デムーロ騎手は1100勝を達成し、区切りの勝利を重賞制覇で飾った。

各馬短評

1着 テルツェット

脚質は対照的だが、日曜日に大阪杯を勝利したレイパパレと同じディープインパクト産駒の4歳牝馬で、連勝を伸ばした点や、馬体重が420キロ前後しかないところも共通している。

速いペースに恵まれた面もあったが、この馬も、800m標識を過ぎてから徐々に追い出され、長く脚を使っていた。

本質的には直線の長いコースが得意なはずで、ヴィクトリアマイルに出走すれば有力となるが、いかに馬体重と今回のダメージを回復できるかがカギになりそう。さらに間隔をとり、ヴィクトリアマイルをパスして安田記念に出走してきた際も、穴馬として面白い存在になるのではないだろうか。

2着 カテドラル

3歳時にNHKマイルカップで3着に入った実績もあるが、その後、不振が続いていた。

しかし、昨夏の朱鷺ステークスで久々の勝利を挙げると、続く2走は掲示板外に敗れたものの、前走の東京新聞杯・今回のダービー卿CTと、全く違う条件の重賞で連続して2着に好走。

2・3歳時に、マイルの速い流れを経験したハーツクライ産駒が、5歳にしていよいよ本格化してきた可能性がある。もう一つ二つ前のポジションでレースを運べれば、大レースでの激走があっても不思議ではない。

3着 ボンセルヴィーソ

こちらも、NHKマイルカップで3着の実績がある7歳馬。中山のマイル戦を得意にしていて、特に昨年からは、5戦して2着と3着が2回ずつと、勝ちきれないものの安定している。

先にはなるが、秋の京成杯オータムハンデキャップで、念願の重賞タイトル獲得できるか注目したい。

レース総評

前述の通り、勝ったテルツェットと大阪杯を勝利したレイパパレは共通項が多い。小柄なだけに、パドックで牡馬に混じるとあまり見栄えはしないが、それでいてこの勝利。成長すれば、さらに上を目指せる可能性がある。

また、各馬短評のコーナーで触れられなかったが、前半1000mの通過57秒1は、昨年と同じタイムで、直近10年では2位タイ。そのハイペースで逃げて4着に粘ったマイスタイルは、昨年のこのレース以来1年ぶりのレース。1・2着馬も楽しみだが、この馬も、次走の上積みはかなり大きいのではないだろうか。

写真:shin 1

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