[東京スプリント]リュウノユキナ - キッカケはとあるベテラン騎手との出会い。デビュー36戦目でようやく噛み締めた重賞の味。

デビュー2戦目で重賞を勝利する馬もいれば、20戦、30戦とキャリアを積み、やっとの思いでタイトルを掴む馬もいる。今回ご紹介するリュウノユキナは、キャリア36戦目にしてようやくタイトルを手にした遅咲きの代表格。彼を言葉で表すなら「雪に耐えて梅花麗し」。デビュー当時から見ていた筆者としては、苦労の末にタイトルを掴んだ姿に感慨深いものがあった。

運命変えた名手との出会い

2017年6月に門別競馬場でデビューを迎えたユキナは初陣で2着に好走。続く7月のJRA認定競走で初勝利を挙げる。同年9月にはJRAの舞台にも挑戦し、2歳OPすずらん賞を人気薄ながら快勝。父ヴァーミリアン、母父クロフネというダート色濃い血統ながら、溢れ出す高いスピード能力は芝でも通用を見せた。その後も福島2歳Sで2着に入り、翌年にも1000万特別のSTV賞で5位入着を果たすなど活躍。その後、ホッカイドウ競馬のシーズン終了に合わせてJRAの美浦・小野次郎厩舎に移籍した。

転入3戦目には久々のダート戦に出走し、逃げ切り勝ちを収めたが、次走は16着と大敗してしまう。一息入れて同年7月の桶狭間Sに出走したのだが、行きっぷりが良すぎるのだろうか……ダート1400mでは記録的な前半3F32.6という超ハイペースに巻き込まれ再び大敗。スピードもある。能力もある。しかし何とも歯がゆい。ユキナは常に一生懸命走ってしまうのか、他馬を恐れているのか、いつも目いっぱいに逃げてしまい、脚の使いどころを活かせないでいた。そんな折、夏の新潟で手綱をとったのが美浦の大ベテラン柴田善臣騎手。名手との出会いがユキナを変えていく。

活躍への鍵は脚質転換

19年12月のアクアラインSで初タッグを組むと、これまでの逃げ、先行のイメージから一変し、中団差しの競馬を見せるようになった。すぐには結果が出なかったが、コンビ3戦目の初春Sを7番手から差し切り勝ち。OP昇級後も控える競馬を徹底し、徐々にユキナも走り方を覚えていった。20年9月のながつきSでは5番手から直線鋭く伸びて2着。古馬のOP格では初めての連対だったこともあるが、このレースで27戦ぶりに上がり最速を記録し脚質転換に成功。その後の大活躍へと繋げる1つのキーポイントになった。

そして21年1月のジャニュアリーS。柴田善臣騎手が怪我から復帰し再びタッグを組むと、圧巻の競馬を見せた。いつも通り中団に控え折り合いよく追走すると、直線はあっという間に後続を突き放し6馬身差を付ける鮮やかな勝ちっぷり。善臣騎手もレース後に「色々と試してきたことが、ようやくこの年齢で覚えてくれた」と、確かな手応えを口にした。

6歳春に掴んだ栄光のタイトル

続く大和Sも快勝し、本格化を印象付けたユキナは堂々の1番人気で東京スプリントに出走した。土砂降りの雨と強い風で最悪ともいえるコンディションの中でレースはスタート。ゲートが開くと、ベストマッチョやサイクロトロン、ヒロシゲゴールドといった逃げ馬を上手く捌いてユキナと善臣騎手は4番手に付けた。「ちょっと行き過ぎるところがあったので…」真面目なユキナは少し力むところがあったようだが、ガッチリ抑えて逃げ馬を追いかけていく。

3、4コーナーの中間地点。善臣騎手が外目にうながすと、ユキナは外から一気に逃げ馬に並びかけ、ねじ伏せるように直線に入る。雨で田んぼのようになった馬場の中で、すっかり白くなった芦毛の馬体が踊った。ゴール前でサブノジュニアやキャンドルグラスが追ってきたが手応えは余裕。着差以上の強さで待望の重賞初制覇を飾った。デビュー36戦目で掴んだ栄冠。大ベテランとの出会いが馬を変え、飛躍へのキッカケとなったのである。

写真:かぼす

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