![[AJCC]ミホシンザン、スペシャルウィーク、ダノンデサイル。AJCCで意地を見せたクラシックホースたち](https://uma-furi.com/wp-content/uploads/2026/01/202601222.jpeg)
およそ2ヶ月に渡っておこなわれた中山開催の掉尾を飾るアメリカジョッキークラブC。関西でおこなわれる古馬のGⅡ日経新春杯とは似て非なる条件のレースといえ、とりわけ大きな違いといえるのが、前者は別定戦で後者はハンデ戦だということ。日経新春杯にGⅠ馬が参戦する機会はさほど多くないものの、アメリカジョッキークラブCに出走するのは決して珍しいことではない。
今回は、アメリカジョッキークラブCに出走したGⅠ馬の中でも、意地を見せたクラシックホースを振り返りたい。
1987年 ミホシンザン
グレード制導入以降、二冠馬として初めてアメリカジョッキークラブCに出走したのがミホシンザンである。
馬名のとおり、日本競馬史上2頭目の三冠馬シンザンの産駒ミホシンザンは、デビューから4戦全勝で皐月賞を制覇。しかし、レース後に骨折が判明し、史上初となる父仔三冠制覇の夢は幻に終わってしまった。
その後、秋に戦列復帰したミホシンザンは、セントライト記念こそ悪化した馬場に脚をとられ初黒星を喫したものの、京都新聞杯と菊花賞を連勝。見事、二冠を達成した。
ところが、続く有馬記念で一つ上の三冠馬シンボリルドルフに完敗を喫し2着に敗れると、休み明けの日経賞6着後に前年と同じ箇所を骨折していることが判明。再び休養に入り秋に復帰するも、毎日王冠から有馬記念まで4戦連続3着となり、充実期を迎えるはずだった4歳シーズンは、まさかの未勝利に終わってしまう。
そんなミホシンザンが完全復活を果たすため、有馬記念から中4週の間隔で出走してきたのがアメリカジョッキークラブCだった。
この年の出走馬は6頭立てと少頭数ながら、前年の天皇賞(春)を制したクシロキングや、ここまで5つの重賞を制し当年の宝塚記念も勝利することになるスズパレードら好メンバーが集結。それでも、ミホシンザンは復活を期待するファンから単勝1.5倍と断然の支持を集めた。
レースは、スタート後まもなくミホシンザンがややいきたがるのをなだめながらもハナを切るという意外な展開となった。しかし、鞍上はデビュー以来すべてのレースで手綱をとってきた柴田政人騎手。1コーナーを回るところで早くも折り合うとペースを落ち着かせることに成功し、1馬身半後方にサクラサニーオー、その後メジロディッシュが2番手につける展開となっても意に介することはなかった。
そして、残り1000m地点から徐々にペースを上げはじめ、後続に2馬身のリードを取って迎えた直線。他馬より重い59キロの斤量が影響したか、追うスズパレードとクシロキングを引き離せないながらもゴール寸前までその差を詰めさせなかったミホシンザンは着差以上の強さを見せつけ、1年2ヶ月ぶりに先頭でゴール板を駆け抜けたのである。
迫るライバルたちに意地でも馬体を併せることを許さなかったこの貫禄の勝利は、微妙に狂っていたミホシンザンの歯車を再び回し始め、ここから日経賞、春の天皇賞と重賞3連勝。久々のビッグタイトル獲得に成功し、自身の復権と、名馬シンザンの種牡馬としての名声も高める晩年の傑作となった。
1999年 スペシャルウィーク
今も史上最強の呼び声高い95年生まれ世代。日本調教馬として初めて凱旋門賞で2着と好走したエルコンドルパサーをはじめ、同じ外国産馬でグランプリ三連覇の偉業を成し遂げたグラスワンダー。さらに、二冠馬セイウンスカイや、短距離で大輪の花を咲かせた良血キングヘイローなど、数多くのスターホースがいるこの世代の中心的存在となったのがスペシャルウィークである。
大種牡馬サンデーサイレンス産駒のスペシャルウィークは、2戦目でよもやの敗戦を喫するも、きさらぎ賞と弥生賞を連勝。続く皐月賞は大外18番枠に泣き3着に敗れたものの、ダービーでは後続に5馬身もの差をつける圧勝で世代ナンバーワンの座に就くとともに、トップジョッキーとしての地位を確固たるものとしていた武豊騎手にダービージョッキーの称号をプレゼントした。
ところが、秋初戦の京都新聞杯を快勝した後に臨んだ菊花賞では、セイウンスカイの完璧な逃げの前に為す術なく2着に敗れると、続くジャパンCでもエルコンドルパサーの快走の前に3着と敗戦。生涯初の連敗を喫し、4歳シーズンの初戦として出走したのがアメリカジョッキークラブCだった。
このレースで初めてO・ペリエ騎手とコンビを組んだスペシャルウィーク。ただ、勝ち切れない近走の内容や、皐月賞で持ち味の末脚を発揮できなかった姿をファンは重ね合わせたか、その単勝オッズは2.0倍で、前走準オープン(現3勝クラス)を完勝した同世代の菊花賞4着馬メジロランバート(同2.9倍)や、中山金杯で2度目の重賞制覇を成し遂げたサイレントハンター(同3.4倍)らと大きな差はなかった。
しかし、ダービー史に燦然と輝く圧勝劇で頂点に立ったスペシャルウィークが、この評価に黙っているはずはなかった。
ゲートが開くと、逃げると思われたサイレントハンターを制し、内からテイエムトップダンがハナを切った。1度目のゴール板を過ぎ早くも見た目に遅い流れとなる中、スペシャルウィークはいきたがる素振りを見せながらも先頭から5馬身差の5番手につけ、メジロランバートは最後方を追走していた。
レースが動いたのは3~4コーナー中間。サイレントハンターがテイエムトップダンを交わして先頭に立ち1馬身のリードを取ると、スペシャルウィークもペリエ騎手に促されながら上昇を開始し、サイレントハンターの1馬身半後方まで差を詰めて直線を迎えた。
直線に入るとすぐ、ねじ伏せるようにしてスペシャルウィークが先頭に入れ替わったものの、突き放すのにやや手こずっているようにも見えた。しかし、坂を上りきったところでもう一段上のギアが入るとあっという間に差は広がり、最後はサイレントハンターに3馬身差をつけ先頭でゴール板を駆け抜けた。

勝ち時計は2分16秒8と平凡ながら、決して得意とはいえない中山コースでの完勝劇はこの年の飛躍を予感させるのに十分で、そのとおり古馬中・長距離の王道を驀進したスペシャルウィークは、続く阪神大賞典、天皇賞(春)と重賞3連勝。その後、宝塚記念でグラスワンダーの2着、京都大賞典はよもやの7着に敗れるも、驚異的な巻き返しで天皇賞(秋)を制すると、「日本の総大将」として凱旋門賞馬モンジューら海外の強豪を迎え撃ったジャパンCも連勝してみせた。
さらに、引退レースとなった有馬記念では、わずか4センチだけグラスワンダーに及ばなかったものの、日本の競馬史に残る名勝負を演出。種牡馬としても、年度代表馬のブエナビスタや、日米のオークスを制したシーザリオを送り出すなど成功を収めた。
2025年 ダノンデサイル
GⅠ馬が出走してくること自体はさほど珍しくないアメリカジョッキークラブC。ただ、ダービー馬となると話は別で、前年のダービー馬(4歳馬)が出走してくることはかなり珍しい。前述したスペシャルウィーク以来、26年ぶりに4歳のダービー馬として参戦を果たしたのがダノンデサイルだった。
初年度から無敗の三冠馬を送り出したエピファネイア産駒ながら、初戦は3番人気、2戦目は5番人気、続くラジオNIKKEI杯京都2歳Sでは11番人気と、デビュー当初のダノンデサイルは、お世辞にも注目を集める存在とはいえなかった。しかし、その評価を覆すように好走を続け、年明けの京成杯で重賞初制覇を成し遂げると、皐月賞はスタート直前に除外となるも、ダービーではその無念を晴らす走りで皐月賞馬ジャスティンミラノを降し、見事、世代の頂点に輝いた。
ところが、それ以来の実戦となった菊花賞は道中、度々不利に見舞われるなどして6着に敗戦。さらに、有馬記念では逃げて見せ場を作りながらも3着と惜敗してしまう。
この内容に、春に感じていた走りとはほど遠く、重苦しさを感じた安田翔伍調教師は、3歳時にはなかった短期間の出走で変化を求め、その反応を知りたいという意図で参戦したのがアメリカジョッキークラブCだった。
このレースで戸崎圭太騎手を鞍上に迎え、再び東上したダノンデサイル。人気は、セントライト記念、オールカマーに続く「中山芝2200mのGⅡ完全制覇」がかかるレーベンスティールとほぼ同等ながら、僅かの差で1番人気に推され、中山のGⅠで連対実績があるコスモキュランダ、ボルドグフーシュが2頭に続いた。
レースは、外から押してアウスヴァールが先手を切り、前年の覇者チャックネイトや、有馬記念までダノンデサイルとコンビを組んでいた横山典弘騎手が騎乗するマテンロウレオ、さらにはGⅠ馬ポタジェが続く展開。ダノンデサイルとレーベンスティールは仲良く中団につけ、コスモキュランダは後方に位置していた。
動きがあったのは1000m通過地点で、いつもどおりマクりをかけたコスモキュランダが3番手まで上昇。すると、この動きを察知したチャックネイトが早目にスパートし、3~4コーナー中間で単独先頭に立ってペースを上げる。さらに、続く4コーナーで人気2頭もスパートをかける中、レースは直線勝負を迎えた。
直線に入ると、外からコスモキュランダ、内からマテンロウレオがチャックネイトに襲いかかって先頭に立ち、後続に2馬身の差をつけた。しかし、坂下で3番手まで押し上げていたダノンデサイルが、残り100mを切ったところでさらに加速すると、ゴール寸前で図ったように2頭を差し切り先頭ゴールイン。接戦の2着争いを制したマテンロウレオとの差は4分の3馬身だったとはいえ、自身8ヶ月ぶりの勝利は、陣営が意図した変化をしっかりとダノンデサイルにもたらした。

その後、初の海外遠征となったドバイシーマクラシックで、カランダガンら強力なライバル相手に完勝を収めたダノンデサイル。レース後の馬上インタビューで、戸崎圭太騎手から「ベリーベリーホース!」という競馬史に残る名(迷?)言が出ると、8月に英国でおこなわれたインターナショナルSこそ5着に敗れるも、ジャパンCと有馬記念で続けて3着に好走。2026年も活躍が期待される。
さて、ここまで振り返った3頭は、いずれも前走のGⅠで3着と惜敗しながらアメリカジョッキークラブCで意地の勝利を収め、その後、春のGⅠを制したという点で共通していた。
2026年のレースにGⅠ馬の登録はないものの、クラシック好走馬やGⅡ勝ち馬が複数参戦しており、春のビッグレースに向け飛躍のきっかけを掴む馬が現われるのか。結果を見守りたい。
写真:かず、突撃砲
![[リーディング]ルメール騎手が5勝をあげ、トップの戸崎騎手に急接近 武幸四郎厩舎からは2週続けて牝馬クラシックの有力候補が誕生](https://uma-furi.com/wp-content/uploads/2026/01/202601213-300x200.jpeg)