高知で咲き、高知で生涯を終えた名馬。2017年黒船賞覇者、ブラゾンドゥリス

少し肌寒く感じるようになった11月頭のこと、寂しいニュースが飛び込んできた。ブラゾンドゥリスが亡くなったとの報。2022年のことである。2017年に黒船賞を制すと、その後は高知競馬へと転入。引退後は当地で誘導馬となり、今後の活躍が期待されていたところだった。

父ノボジャック、母ブライアンズソノ、母の父マヤノトップガンという血統。父は01年のJBCスプリントほか、全国のダート短距離重賞を勝ちまくった。黒船賞も01年、03年と2度制している。母系は辿っていくと、川崎が産んだ大輪ロジータに行きつく名牝系。ブラゾンドゥリスは地方で走るため、活躍するための血統と言ってもいい。ジャック×ロジータからの連想なのだろう「ブラゾンドゥリス」の馬名には、フランス語で「百合の紋章」という意味が込められている。

14年12月にJRAでデビューすると、安定した成績でつぎつぎに白星を重ねていった。初勝利までには5戦を要したが、そこからはトントン拍子に勝ちを量産。ほとんど壁という壁を感じないまま、16年7月の桶狭間ステークスを制してオープン入りを果たす。続く武蔵野ステークスこそ、初めての重賞のペースに戸惑い11着に敗れたが、オープン特別では相変わらず安定ぶり。福島民友カップ2着、師走ステークス3着、すばるステークス2着と結果を残し、バレンタインステークスで勝利を挙げた。

そして、二度目の重賞挑戦に選んだのが黒船賞だった。フェブラリーステークス5着で、同年のJBCスプリントを制すニシケンモノノフを筆頭に、1400mで7勝を挙げていたキングズガード、重賞5勝馬ディアマルコなど好メンバーが揃った一戦。

五分のスタートから3番手に付けると、3、4コーナーからしぶとく脚を伸ばし続け、最後はニシケンモノノフをとらえ、キングズガードの追撃を振り切ったところがゴール。土佐の地で、待望の初タイトルを手にした。

だが、その後は目立った活躍がなく、ホッカイドウ競馬、兵庫県競馬と渡り歩き、現役最期の地に選んだのも高知競馬だった。黒船賞馬が当地に帰ってくると、話題になったのを覚えている。ブラゾンドゥリスもすでに9歳。少し衰えも感じる年齢になっていたが、元日に行われた初夢特別を快勝すると、大高坂賞3着、だるま夕日賞2着と重賞でも見せ場を作り、続く御厨人窟賞を3馬身差で圧勝。

実に4年ぶりのタイトルをつかんでいる。最終的に翌年7月のトレノ賞まで現役を続け、55戦12勝。うち重賞2勝という輝かしい成績を挙げた。2012年に第一世代の募集を開始したノルマンディサラブレッドレーシングにとっても、黎明期を支えた一頭と言って良いだろう。

そして「引退後は高知競馬場で誘導馬に」というアナウンスがあった。

ブラゾンドゥリスはその後も高知で活躍を続けることになったのである。引退後の22年9月から、さっそくトレーニングを開始。2ヶ月ぐらいすると、先輩誘導馬のチャオとともに、レースを先導することも増えていった。最近では1頭で誘導することも増え、「初心者マーク」が外れるまであと少しのところだった。

しかし、飛び込んできたのはブラゾンドゥリスが故障により、息を引き取ったとのニュース。筆者も地方競馬ファンの一人として、すごく寂しい気持ちになったことを思い出す。高知競馬も「本当にありがとう。ご冥福をお祈りします」とコメント。Twitterや、ニュースコメント欄でも多くのファンが悲しみにくれた。

あれからもう1年半が経つ。今後も黒船賞が来るたび、私はブラゾンドゥリスのことを思い出すことだろう。高知に咲き、高知で終えた百合。その存在を今後もファンの中で確りと語り継いでいきたい。

写真:Mr.KQ、330smile330、ユーイチ

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