フローラステークスは、1週間後のスイートピーステークスと同様、オークスのトライアルレースで、2着馬までに優先出走権が与えられている(スイートピーステークスは1着馬のみ)。毎年のように多頭数の大混戦で行なわれるが、2021年も例に漏れず出走頭数は17頭と揃った。

その中で、1番人気に推されたのはオヌール。
キャリア2戦2勝で、父ディープインパクトに、母はフランスの1000ギニーとオークスを無敗で制したアヴニールセルタンという良血馬。全姉のデゼルも、2020年のスイートピーステークスや、今年4月の阪神牝馬ステークスを制した勢いのある血統である。本番で敗れた姉のリベンジを果たすためにも、是が非でも出走権を獲得したい一戦となった。

僅差の2番人気に推されたのはユーバーレーベン。
阪神ジュベナイルフィリーズの3着を含め、重賞では2着1回3着2回と、あと一歩のところまできている。このメンバーでは明らかに実績は抜けていて、念願の重賞初制覇なるか注目を集めていた。

3番人気となったのはパープルレディ。
こちらはオヌール同様ディープインパクト産駒で、母が北九州記念を制したメリッサ、全兄にミッキーグローリーとカツジという、2頭の重賞勝ち馬がいる良血。初勝利まで3戦を要したものの、1勝クラスのゆりかもめ賞を連勝で勝ち上がった。そのゆりかもめ賞はオークスと同じ舞台。なんとか優先出走権を獲得し、得意の舞台で行われる本番への出走を目指していた。

レース概況

ゲートが開くと、最内のウインアグライアが好スタートを切った。それを、8枠からアンフィニドールが勢いよく交わして先手を奪う。2コーナーを回って向正面に入るところでは、そのリードは早くも5馬身となった。

2番手にララサンスフルが続き、スライリーが3番手、メイサウザンアワーとクールキャットが4番手を併走。一方、人気のオヌールとユーバーレーベンは、ちょうど中団の8、9番手を追走し、パープルレディは12番手にポジションを取った。

前半800mまでは47秒3と、そこそこのペースで流れたものの、次の1ハロンは12秒9とペースが落ち、1000m通過は1分0秒2。先頭から最後方までは18馬身ほどの縦長となったが、3~4コーナー中間で、先頭と2番手の差が3馬身に縮まる。続く4コーナーを回るところで後続の各馬も追い上げを開始し、全体の差はさらに縮まり直線へと入った。

迎えた直線勝負。アンフィニドールが、少し内にささったすきをついてララサンスフルが先頭に並びかけた。そこへ、メイサウザンアワー、スライリー、クールキャットが迫り、4頭が横一線に。さらに、残り200m標識の手前で、スライリーとクールキャットが抜け出して2頭のマッチレースとなりかけるも、クールキャットが単独先頭に立ってリードは1馬身。

残り100mを切ったところで、ようやくユーバーレーベンが猛追してきたものの、先頭までは及ばず。

結局、クールキャットが1馬身のリードを保ったまま1着でゴールイン。ハナ差粘りきったスライリーが2着に入り、3着にユーバーレーベンの順に入線。

良馬場の勝ちタイムは1分59秒4。クールキャットとスライリーの2頭がオークスへの優先出走権を獲得し、ユーバーレーベンにとっては、痛すぎるハナ差となってしまった。

各馬短評

1着 クールキャット

2020年のウインマリリンに続き、スクリーンヒーロー産駒が連覇。牝馬の活躍馬がなかなか出てこなかったスクリーンヒーロー産駒ではあるが、この2頭をはじめ最近は盛り返している。直近3年の芝の勝利数は、むしろ牝馬が上回っている。

また、父スクリーンヒーローにメジロの母系、さらに母系にモガミが入る血統は、国内外のGⅠを6勝したモーリスと同じ組み合わせ。フローラステークスの勝ち馬は、過去5年で3頭がオークスで2着となっており、本番でも活躍が期待される。

2着 スライリー

14番人気ながら大健闘を見せ、本番への切符を獲得した。

東京コースは3戦1勝で着外が2度と、得意とはいえない条件だっただけに、驚きの激走だった。母系の特徴を出すオルフェーヴルの産駒で、母の父はディープインパクト。そのディープインパクトが得意とする、東京コースの根幹距離でその血が騒いだか。

3着 ユーバーレーベン

道中はスローペースで流れたため、先行馬が上位を占める中、上がり最速の末脚で追い込むも3着惜敗。

ゴールドシップ産駒は、ウインマイティーが2020年のオークスで3着に入っている。上がり最速×距離延長で本番へ臨む点は期待が大きく膨らむ。ただ、賞金面で、出走できるかどうかギリギリのところ。

出走が叶えば、かなり期待したい。

レース総評

前半1000mが1分0秒2、後半1000mが59秒2の後傾ラップ。特に上がり3ハロンは、11秒3、11秒0、11秒5で、中団から後方に構えた馬にとっては、厳しい流れとなってしまった。

上述の通り、それでも差してきたユーバーレーベンには本番でも期待がかかるが、賞金面で出走できるか微妙なところ。果たして、どうなるだろうか。

また、今回勝利したルメール騎手は、その成績ゆえ、騎乗するだけで常に人気になってしまう存在。重賞を、単勝オッズ10倍以上で制したのは、2018年JBCスプリントのグレイスフルリープ以来で、芝の重賞では、その2週間前の菊花賞をフィエールマンで制して以来となる。

今回の成績を含めない直近3年(2018年4月28日~2021年4月18日)で、競馬場別の重賞勝利数を見ると、東京競馬場の22勝が断然多く、次いで中山競馬場が12勝となっている。続いて、東京競馬場の重賞での乗り替わりの有無別で見ると、あらゆる指標で乗り替わりがあった方が良く、単勝回収率は236%で、複勝回収率も132%。また、外枠の5~8枠だと良く、今回の成績が含まれると、その数字はさらに伸びる。

これからの季節は、東京競馬場で毎週のように重賞が行なわれ、おそらくそのほとんどにルメール騎手は騎乗するため、この数字は覚えておきたい。

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