[重賞回顧]「黄金トリオ」が、2ヶ月連続で3歳重賞を制覇~2022年・きさらぎ賞~

1986年まで、中京競馬場で行なわれていたきさらぎ賞。過去の勝ち馬から、スペシャルウィークやネオユニヴァースといったダービーが誕生している。一方、2006年の2着馬メイショウサムソンは、ダービー他、GIを4勝。2011年3着のオルフェーヴルは、続くスプリングSから連勝を重ねて三冠馬となり、最終的にGIを6勝。歴史的名馬となった。

例年、少頭数で行われ、2022年の出走頭数は11頭。それらすべてが1勝馬で混戦とみられ、4頭が単勝10倍を切ったものの、その中の3頭に人気は集中した。

1番人気に推されたのはストロングウィル。新馬戦2着から挑んだ前走の未勝利戦は、4コーナー先頭から楽々と押し切り勝利。シルバーステートの初年度産駒で、その中でもひときわ目立つ勝ちっぷり。重賞の舞台でも注目を集めた。

2番人気のマテンロウレオは、今回3頭出走したホープフルS組の最先着馬。その前走は、ゴール前での末脚が特に目立ち、勝ち馬から0秒5差の6着は胸を張れる実績。重賞初制覇が期待された。

前走、レベルが高いとされる東京スポーツ杯2歳Sで4着だったのが、3番人気のダンテスヴュー。兄姉たちは、中京競馬場で好走実績が多数あり、自身の初勝利も今回と同じ舞台。母クロウキャニオンから4頭目の重賞ウイナーが誕生するかが注目されていた。

そして、少し離れた4番人気に外国産馬のエアアネモイ。前走の新馬戦は、逃げて上がり最速をマークし完勝。ポイントオブエントリー産駒は、JRAでデビューした7頭すべてが勝ち上がり、2021年の関屋記念を制したロータスランドが、日本での代表産駒。ケガから復帰した福永騎手とコンビを組み、重賞初制覇を狙っていた。

レース概況

揃ったスタートからいく構えを見せたのが、エアアネモイ、ストロングウィル、セルケト、メイショウゲキリンの4頭。その中で、メイショウゲキリンがハナを切った。以下、セルケト、エアアネモイ、ストロングウィルの順で2コーナーを回り、口向きの悪さを見せたショウナンマグマが、コーナーで大きく膨れてしまう。

一方、他の上位人気馬では、ダンテスヴューが中団5番手。そして、マテンロウレオはその1馬身半後ろを追走。前半1000m通過は1分0秒6と、まずまずのペースで流れていた。

勝負所の3~4コーナー中間を迎えても、縦長の隊列はほぼ変わらず。前は、セルケトが先頭に並びかけようとするも、それをメイショウゲキリンが振り切り、直線の勝負へと移った。

直線入口で、メイショウゲキリンのリードは1馬身。その後、坂下で2馬身半に広がった。失速したセルケトに変わって上位人気3頭が前を追い、中でもマテンロウレオとダンテスヴューの伸び脚が目立つ。

残り100m。懸命に逃げたメイショウゲキリンもここで捕まり、今度はマテンロウレオとダンテスヴューが先頭。そこから2頭の叩き合いとなり、お互い全く引かないまま、最後は馬体を併せてゴールイン。

写真判定の結果、わずかに先着していたのはマテンロウレオだった。惜しくも、ハナ差及ばなかったダンテスヴューが2着。3着は、逃げ粘ったメイショウゲキリンがアスクワイルドモアの猛追をクビ差しのいだ。

良馬場の勝ちタイムは2分0秒5。初の重賞タイトルを手にしたマテンロウレオが、春のGIに向け、駒を1つ進めた。

各馬短評

1着 マテンロウレオ

道中は、中団やや後ろを追走。向正面で少しいきたがっているようにも見えたが、シンザン記念のマテンロウオリオンと同様、横山典弘騎手が引っ張り殺さないギリギリのところで抑え、直線の末脚を引き出した。

そのマテンロウオリオンと同じ騎手、調教師、オーナーの「黄金トリオ」ともいえるチームで、2ヶ月連続重賞制覇。2頭が同じGIに出走した場合、横山典騎手がどちらに騎乗するのか注目される。

2着 ダンテスヴュー

道中ほぼスムーズに運ぶも、最後の最後わずかに及ばず2着。クラシック出走に向けて、手痛いハナ差となってしまった。

こちらは、1月の日経新春杯を勝ったヨーホーレイクの半弟で、やはり同じ騎手、調教師、オーナー。きさらぎ賞2着は、奇しくも、前年の兄と同じ結果だった。

日経新春杯の回顧でも触れたとおり、母クロウキャニオンの産駒は中京競馬場が得意。9レースのトリトンSでは半兄のストーンリッジが2着し、前走の新春Sでも15番人気で3着に激走している。

少し先の話になりそうだが、今後ダンテスヴューが中京競馬場のレース出走した際は、大いに注目したい。

3着 メイショウゲキリン

逃げ馬にとっては不利な大外枠からのスタートも、幸騎手が行き切らせて、見せ場をたっぷりと作った。

前走は、4頭立て(5頭立てのうち1頭が発走除外)の1勝クラスで3着ながら、2走前は、後にホープフルSで2着するジャスティンパレスから0秒1差の2着。好走の下地はあった。

キズナ産駒の牡馬で、明らかに持久力タイプ。小回りコースや、非根幹距離のレースで持ち味を発揮しそう。

レース総評

前半1000mは1分0秒6、後半1000mが59秒9。そして、レースの上がり3ハロンは35秒9。数字上はやや後傾ラップでも、中京競馬場の中距離らしい、持久力が求められる展開だった。

この日、東西の重賞を制したハーツクライ産駒。同馬は、2020年に種牡馬を引退しているため、2021年に産まれた1歳馬が最後の世代となる。

マテンロウレオの母の父はブライアンズタイム。この組み合わせは他に、タイムフライヤーが2017年のホープフルSを勝利。そして、牝馬のマジックタイムも、2016年のダービー卿チャレンジトロフィーとターコイズSを勝つなど、中山コースと相性が良い。マテンロウレオも、皐月賞に直行すれば、十分チャンスがあるのではないだろうか。

そして、開催最終日を迎えたこの日は、見た目以上に馬場が良くなかったとのこと。マテンロウレオは、この馬場に苦労しながらも底力で凌いだが、1番人気のストロングウィルは良さを消されてしまった。きれいな良馬場のレースに出てきたときは、見直す必要があるだろう。

また、4番人気のエアアネモイは10着に大敗。喉に疾患があり、気温が低くなってもろに影響が出たようで、気温が上がり、湿度の高い梅雨時などが狙い目になりそうだ。

写真:せっちゃん

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