[重賞回顧]心身ともに充実期を迎えたメイケイエールが、スプリント路線の頂点に王手~2022年・セントウルS~

サマースプリントシリーズ最終戦のセントウルSは、スプリンターズSの最も重要な前哨戦。直近でも、2018年のファインニードルと翌19年のタワーオブロンドンが、当レースと本番を連勝している。また、ファインニードルの2着となったラブカンプーも、本番で11番人気の低評価を覆して2着に好走。21年の1、2着馬レシステンシアとピクシーナイトも、順番こそ入れ替わったものの、本番で再びワンツーを決めている。

そんなセントウルSの見所といえば、シリーズを戦ってきた上がり馬と夏を休養に充てたこの路線の実績馬。そして、春の大レースで実績を残した馬の対決ではないだろうか。ただ、シリーズ唯一の別定GⅡということもあってか、近年は実績馬がやや優勢。2022年も、この路線の実績馬と春の大レースを制した牝馬2頭に人気が集中した。

単勝2倍を切る1番人気に推されたのが、この路線の実績馬メイケイエール。真面目すぎる性格が災いし、以前は大敗することもあったが、今期初戦のシルクロードSから課題を克服し、ここまで重賞5勝。前走の京王杯スプリングCでは、前半やや危なっかしい場面がありながらも勝ち切り、4ヶ月ぶりの今回も大きな注目を集めていた。

これに続いたのが、春の大レースで実績を残したソングライン。2走前のヴィクトリアマイルは、3コーナーで躓いたことが影響したか5着に敗れたものの、前走の安田記念では牡馬を撃破。悲願のGIタイトルを獲得した。今回の注目点は、400mの距離短縮と初のスプリント戦に対応できるどうか。ただ、この後はブリーダーズCマイルへの挑戦も控えており、またメンバー唯一のGI馬でもあるため、結果と内容の両方が問われる一戦となった。

この2頭が単勝10倍を切り、以下、中京得意のダディーズビビッド。2走前の高松宮記念で、勝ち馬から0秒3差の9着に健闘したサンライズオネスト。前走の北九州記念で復調気配を見せたモントライゼが人気順で続いた。

レース概況

ゲートが開くと、全馬出遅れのない揃ったスタート。逃げ争いを演じたのは、内の3頭と8枠のファストフォースで、その中からシャンデリアムーンがハナを切った。

ファストフォースをはさんで、ボンボヤージとジャスパープリンスが続き、これら4頭が先行集団を形成。そこから1馬身半差の5番手にメイケイエールがつけ、モントライゼ、サンライズオネスト、ダディーズビビッドの3~5番人気馬は中団を追走。2番人気のソングラインは、これら3頭から2馬身差の10番手を追走していた。

前半600m通過は32秒5のハイペース。先頭から最後方のラヴィングアンサーまではおよそ15馬身差で、かなり縦長の隊列となった。

その後もペースはほぼ落ちることなく、折り合いが心配されたメイケイエールも、勝負所ではやや促されるほど。そのハイペースを作り出したシャンデリアムーンは4コーナーで後続に2馬身のリードを取り、最後の直線を迎えた。

直線に入っても逃げ脚は衰えず、2馬身のリードをキープしたシャンデリアムーンだったが、坂の途中で失速。替わって先頭に躍り出たのは、2番手を追走していたファストフォースで、ここから後続を一気に突き放すかと思われた。

ところが、4コーナー入口では、まだ先頭まで5馬身以上の差があったはずのメイケイエールが一瞬でこれを捕らえると、残り150mで単独先頭。そこからは、後続との差を徐々に広げて最後は独走となり、大歓声と拍手が沸き起こる中、後続に2馬身半の差をつけて1着でゴールイン。ファストフォースが2着に粘り、内から末脚を伸ばしたサンライズオネストが、1馬身4分の1差の3着に入った。

良馬場の勝ちタイムは1分6秒2のコースレコードで、これはJRA史上3位の好タイム(小倉競馬場以外では最速)。ついに6つ目の重賞タイトルを手にしたメイケイエールが、スプリント路線の頂点に王手をかけた。

また、このレースをもって2022年のサマースプリントシリーズが終了。14ptを獲得したナムラクレアがチャンピオンに輝いた。

各馬短評

1着 メイケイエール

次走を見据えてか、前走からプラス14kgと大幅な体重増。しかし、ほぼすべてが成長分と思えるような見た目で、太く見せるようなところはまるでなかった。

心配された折り合いに関しても、ハイペースで流れたせいかまるで問題なく、勝負所では促されるほど。その後、坂の頂上で一気に前を捕らえ、最後は独走となった。

心身ともに充実期を迎えたように思われ、少なくとも今回に関しては完璧なレース。スプリンターズSは中2週の関東遠征と決して簡単ではなく、なおかつ気性面の危うさは常につきまとうが、短距離界の頂点に王手をかけたといっても決して言い過ぎではないだろう。

2着 ファストフォース

久々の快走で1年ぶりに連対を確保。6歳でベテランの域に入るが、十分やれることを示した。

メイケイエールがマークした1分6秒2は、JRA史上3位の好タイムだが、2位の記録を持っているのが本馬。上位人気の2頭以外、今回はややメンバーにも恵まれたが、今後枠順や展開に恵まれて気分よく先行できた際は、再びの好走があってもおかしくない。特に、11月の京阪杯が差し馬場になっていなければ狙ってみたい。

3着 サンライズオネスト

淀みない流れに強いのがダイワメジャー産駒の特徴。そのお手本と言わんばかりに中団からしぶとく末脚を伸ばし、3着を確保した。

横山典弘騎手のコメントを見ると、放牧先から体重が減って帰ってきたようで、これでもまだ本調子ではなかった様子。展開に大きく恵まれたわけでもなく、次走あまり人気しないようであれば、GIに出走したとしても相手には忘れずに加えたい。

レース総評

前半600mは32秒5、同後半が33秒7=1分6秒2。もちろん前傾ラップで、1000mの通過は54秒2。直千競馬並みのハイペースで、これが直線平坦の競馬場であれば、確実に1分5秒台が計時されていただろう。

そんなハイペースを味方にしたのがメイケイエール。無論、自身が経験した最速のペースで、折り合いがどうこうという問題ではなかった。この先も、気性面の危うさは常につきまとうが、メンタル面だけでなく馬体が成長している点も大きく、今回はデビュー以来最高の484kg。デビュー時から30kg近く成長しているが、見た目の太さはまるで感じられなかった。

メイケイエールの気性面や性格に話を戻すと、これだけの実力がありながら、前を追いかけすぎるという真面目な性格の持ち主は、過去の歴史を遡っても希有な存在といえる。

しかし、4歳を迎えて心身ともに充実し、メンタルという決して高くないハードルを乗り越えようとしている彼女を応援したいというファンは非常に多い。

先日、京都競馬場が主催したアイドルホースオーディションでも、2位以下を大きく突き放して圧勝したそうで、今回も、ゴール板を通過する前後に、歓声と大きな拍手が沸き起こっていた。もはや、同じ一族のソダシに勝るとも劣らない人気ぶり。手にしていないのは、GIタイトルだけといっても過言ではない。

次走のスプリンターズSは、中2週の関東遠征で大幅にメンバーも強化されるため、これもまた高くないハードルといえる。しかし、あらゆる課題をクリアして頂点に立った時、その先に訪れる感動は、これまでにないほど大きなものになるだろう。

写真:かぼす

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