2月2週目の週末は、日本列島を大寒波が覆った。
土曜日は降雪の影響で東京競馬場では8R以降が取りやめとなり、京都競馬場、小倉競馬場でも開催を終えた夜の間に積雪に見舞われた。
日曜日は小倉競馬のみ開催され、除雪作業と安全性の観点から4Rの障害レースは取りやめ。
開催時間を後ろ倒しにしてレースが行われた。
東京・京都の開催は除雪作業を行うため、2日遅れの火曜日まで開催がずれ込むこととなった。

そうして“火曜日”の京都競馬場メインレースとなった、G3きさらぎ賞には9頭がエントリーした。
関東馬が3頭参戦したうち、ラフターラインズとゴーイントゥスカイは事前に栗東トレーニングセンターに滞在。一方、土曜日に美浦トレーニングセンターから京都競馬場入りしたゾロアストロは、本番まで3泊を京都競馬場の滞在馬房で過ごす調整となった。
それでもファンはこれまでの実績を評価し、ゾロアストロを1番人気に推した。
鞍上は短期騎手免許で来日中のハマーハンセン騎手だ。シンザン記念ではサンダーストラックを勝利に導いているが、ここで重賞2勝目となるだろうか。

続く2番人気はエムズビギン。
セレクトセールで5.9億円の落札価格が付いたキタサンブラック産駒で、重賞は初参戦となるが、名門・友道厩舎からクラシックを目指す一頭だ。半兄リラエンブレムは前年のシンザン記念を制し、日本ダービーまで駒を進めた。その兄に続き、クラシックへの道を切り開きたいところだ。

3番人気はゴーイントゥスカイ。
新馬戦では先行抜け出しの競馬で勝ち切ると、続く京都2歳ステークスでは大外を回っての末脚勝負で3着に好走。勝ったジャスティンビスタの一瞬の切れ味には屈したが、京都の重賞を経験している点は強みと言える。美浦の上原佑紀厩舎から早めに栗東トレーニングセンターへ移動し、万全の態勢で臨んできた。こちらはコントレイル産駒初の重賞勝利への期待を背負い、鞍上は主戦の荻野極騎手が務める。

火曜日の京都競馬場に揃った9頭を応援するべく、ファンも寒さに負けず集った。
クラシックを目指す登竜門へ、挑戦が始まった。

レース概況

スタートでラフターラインズが伸び上がるような形でゲートを飛び出し、後方からの競馬を余儀なくされた。ゴーイントゥスカイ、ゾロアストロも発馬で後手を踏み、こちらも後方からのスタートとなる。

逃げの経験があるコレオシークエンスとストームゲイルがハナを目指したが、内を空ける形でコレオシークエンスが先手を奪う。2番手にはストームゲイルが内埒沿いに収まり、その直後にエムズビギン。3番手外目にショウナンガルフが続き、ちょうど中段の位置にはサトノアイボリーの芦毛の馬体が見える。その直後にゴーイントゥスカイとゾロアストロ、さらに4-5馬身ほど離れた後方にラフターラインズとローベルクランツが続き、9頭の隊列が定まった。

コレオシークエンスが刻んだ前半1000mは62秒2のスローペース。坂の下りでエムズビギンがストームゲイルの外へとポジションを移し、直線勝負に備える。残り600m付近で後方に離れていた2頭も馬群に追いつき、9頭一団のまま直線の攻防へと入った。

直線に向いても、逃げるコレオシークエンスは馬場の良いところを探しながら内を空けて進む。これを見てストームゲイルは内、エムズビギンは外を選択したが、コレオシークエンスの直後にいたゾロアストロは最内勝負を選んだ。ハマーハンセン騎手の左鞭が一発入り、前を目指してゾロアストロが進出開始。

逃げるコレオシークエンスも一度はストームゲイルに交わされる場面があったが、最後にもう一脚を使って粘り込みを図る。その外からエムズビギンが末脚を伸ばし、さらに後方からは最後方待機のラフターラインズが、エムズビギンのさらに外へ進路を取って末脚全開で一気に差し込んできた。

ゴール直前でストームゲイルが4頭に交わされ、横並びのままゴールへ。
最後の最後にアタマ差抜け出したゾロアストロが、惜敗続きにピリオドを打ち、ついに重賞初制覇を果たした。大接戦の2着争いはアタマ差でエムズビギン、さらにハナ差でラフターラインズが3着。コレオシークエンスが4着、最後に交わされたストームゲイルも5着に踏ん張った。

直線では9頭中7頭が33秒台の末脚を繰り出す末脚比べとなったが、その攻防をゾロアストロは最内から制してみせた。

各馬短評

1着 ゾロアストロ ハマーハンセン騎手

2歳時の4戦はいずれもスローペースからの瞬発力勝負。マイル戦のサウジアラビアロイヤルカップ3着、距離を1800mに延ばした東京スポーツ杯2歳ステークスでも2着と善戦を続け、きさらぎ賞でついに重賞タイトルを手にした。

初の右回り、京都競馬場で火曜日までレースを待たされるという難しい調整過程でも、その影響を感じさせない走りを披露。レースではこれまで積み重ねてきた経験値と、高い精神力を存分に示した。

道中はエムズビギンの後方で脚を溜め、直線では最内を選択。パトロールビデオを見れば分かる通り、各馬が芝の綺麗な外を目指すなかで、ハマーハンセン騎手はあえてインを突く判断を下した。ストームゲイルと併せる形になってからの伸びは鋭く、最後は後続を振り切ってゴール。

これまでの安定した実績に、今回の勝利が加わったことで、クラシック路線に向けた期待はさらに高まった。

2着 エムズビギン 川田将雅騎手

キタサンブラック産駒らしい雄大な馬格の持ち主。新馬戦では、後に東京スポーツ杯2歳ステークスで4着に入るテルヒコウに逃げ切られたが、続く未勝利戦では逃げ馬セキテイリノをきっちり差し切り、初勝利を挙げた。

3戦目の今回も道中は逃げ争いを演じる2頭の直後で脚を溜める形を選択。直線では外目に進路を取り、追い出されてからは確実に伸びてきた。瞬時の加速力というタイプではないが、追った分だけ長く良い脚を使えるのがこの馬の持ち味で、距離は2000m以上あった方が向いている印象を受ける。

クラシック戦線を見据えても、ここで2着に入り賞金を加算できた意義は大きい。
重賞初挑戦ながら自らのスタイルで接戦を繰り広げた結果は、今後につながる収穫の多い一戦となった。

3着 ラフターラインズ 藤岡祐介騎手

スタートでの出遅れは痛かったが、それでもスローペースの最後方から僅差3着まで追い込んだ末脚は際立っていた。出走9頭中で唯一32秒台の上がりを記録しており、能力の高さは数字からも明らかだ。

未勝利戦の勝ち時計1分46秒0は、東京スポーツ杯2歳ステークスでゾロアストロが記録した走破時計に並ぶもの。牝馬ながら牡馬相手でも互角以上に戦える下地は、すでに示していたと言える。

直線では、先に仕掛けた馬たちのさらに外を回る形になったが、それでもゴール前で一気に差を詰めてきた。スローペースの展開と道中最後方の位置取りを考えれば、負けて強しの競馬をしたと言える。

今後もゲートには課題を残すものの、牡馬相手の重賞でこれだけの末脚を使えた意義は大きい。
牝馬クラシックに挑むためには賞金加算、あるいは優先出走権が必要になるが、抜群の末脚で道を切り開いていけるはずだ。

レース総評

G1競走2勝のサトノダイヤモンド、京都巧者トーセンラー、二冠馬ネオユニヴァース、菊花賞馬ナリタトップロード、そしてダービー馬スペシャルウィーク。きさらぎ賞は1800m戦でありながら、その後G1戦線で主役を張る馬たちが勝ち上がってきた、まさにクラシックへの登竜門である。

今年その一戦を制したゾロアストロが見せた走りは、「堅忍不抜」という四文字に尽きるものだった。寒波による順延、火曜日まで待たされる異例の開催、思い描いていた調整が叶わない難しい過程。それでも折れることなく、荒れたインコースを突いて勝ち切った姿は、走力だけでなく高い精神力を備えていることを示している。

また、このレースが価値ある一戦だった理由は、勝ち馬だけにとどまらない。接戦で2着に敗れたエムズビギンは、瞬時の切れ味よりも持続力を武器とするタイプで、今回の1800mはむしろ通過点に過ぎない印象だ。距離が延びる舞台でこそ、その持ち味はより生きてくるだろう。

3着のラフターラインズも同様で、出遅れという不利を抱えながら、最後方から鋭い末脚を繰り出して僅差まで詰め寄った内容は評価が高い。直線での末脚勝負が生きるレース、例えばオークスのような舞台に替われば、また違った結果を見せても不思議はない。

雪の影響が残る馬場、順延開催という特殊な環境のなかで行われた今年のきさらぎ賞は、単なる前哨戦ではなく、各馬の「強さの質」と「将来像」を浮かび上がらせる一戦となった。
その中心で人気に応えて勝利をつかんだゾロアストロは、困難に耐え、志を曲げずに貫く―堅忍不抜。
その言葉を体現する存在として、クラシック戦線へ歩みを進めていくことになる。

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