今や、出世レースとして定着した感のあるシンザン記念。
過去には、シーキングザパール、タニノギムレット、ミッキーアイル等が、ここをステップにGⅠを勝利した。さらに、ジェンティルドンナとアーモンドアイという、牝馬三冠馬であり年度代表馬に2度選出された名牝も、このレースの勝ち馬。また、2着に敗れた馬からも、牡馬三冠を達成し年度代表馬に2度選出されたオルフェーヴルが出現しているように、注目の一戦といって間違いない。
今年は15頭が顔を揃え、単勝オッズが10倍を切ったのは3頭。
中でも2頭に人気が集まり、牝馬のククナがオッズ2.4倍の1番人気に推された。デビュー戦は3着に敗れたものの、2戦目で勝ち上がり、前走のGⅢ・アルテミスステークスでは、2歳女王となるソダシの2着に好走。今回は、それ以来2ヶ月半ぶりの実戦となったが、重賞での連対実績、クラシックで活躍した両親を持つ血統背景、さらにルメール騎手が騎乗することからも、多くの支持を集めた。
2番人気に支持されたのはバスラットレオン。札幌の新馬戦を快勝した後に出走したGⅢ・札幌2歳ステークスでは、1番人気に推されたほどの逸材で、こちらもソダシに敗れたものの3着に好走した。前走のGⅠ・朝日杯フューチュリティステークスで4着の実績は、今回のメンバーではアタマ一つ抜けているといっても過言ではなかった。
そして、3番人気に続いたのはロードマックス。こちらも、前走は朝日杯フューチュリティステークスに出走して6着と健闘。また、前々走もGⅡの京王杯2歳ステークスで2着に好走。さらにメンバー中、唯一のディープインパクト産駒ということもあってか、上位人気に推されることとなった。
レース概況
ゲートが開くと、わずかにレゾンドゥスリールのダッシュがつかなかったものの、ほぼきれいなスタートが切られた。近3走内に、4コーナーを先頭で回った馬が不在で、ある意味で先行争いが注目されたが、ハナを切ったのは、前走出遅れて後方からの競馬となったピクシーナイトだった。
トーカイキングも行く気を見せたが、無理には競らずに控え、それを外から交わしていったのは、上位人気のバスラットレオンとロードマックス。さらに、内枠のブルーシンフォニー、カスティーリャ、ダディーズビビットの3頭が続き、1番人気のククナは、後ろから4頭目にポジションをとった。
前半の600mは34秒7の平均ペースで流れ、先頭から最後方まではおよそ15馬身差で縦長の展開。先行勢では、ロードマックスとダディーズビビットが、やや折り合いを欠いているように見えた。
レースは進み、残り600mの標識を通過したところで、バスラットレオンとロードマックスが先頭のピクシーナイトに半馬身差まで迫り、ククナは依然として中団より後方の内目を追走して徐々にポジションを上げ、4コーナーを回った。
直線に入ると、ピクシーナイトが再びリードを1馬身半差に広げて坂を駆け上がる。追ってきたのはバスラットレオンと、外から追い込んできたルークズネストで、ロードマックスは後退。ククナも、脚を伸ばしてはいるものの、ジリジリとしか差を詰めることができない。
そんな後続を尻目に、坂を登り切ったピクシーナイトのリードは3馬身に開き、さらに逃げ脚を伸ばしてゴールを目指す。2番手争いは、ゴール手前50mでルークズネストがバスラットレオンを交わしたが、先頭に並びかけるまでには至らなかった。
結局、1馬身4分の1差をつけてピクシーナイトが逃げ切り勝ち。2着にルークズネストが入って、ノーザンファームが生産したモーリス産駒のワン・ツーとなり、さらに4分の3馬身遅れてバスラットレオンが3着、1番人気のククナは4着だった。
良馬場の勝ちタイムは、1分33秒3。この勝利により、鞍上の福永祐一騎手は、JRA通算2400勝を達成した。
各馬短評
1着 ピクシーナイト
一言で言えば、現在の中京競馬場の特性を考えた、福永騎手の作戦勝ちだった。
ただ、1000mの通過は58秒1で、そこまで楽なペースだったとはいえない。スローに落とさず、淀みない流れで先行し、坂を上るところで減速せずに差を広げたシーンは、ロベルト系種牡馬の底力を見せつけた象徴的な場面だった。
個人的な希望になってしまうが、その見方が正しいかどうかを判断するためにも、次走は、中山か阪神のような直線に急坂のあるコースに、再度出走してくれないものだろうか。
2着 ルークズネスト
前走で未勝利を脱出し、果敢に重賞にチャレンジして2着と好走。
前々走の京都では、重馬場が応えた可能性はあるが5着と敗れた一方で、阪神と中京では、今回も含めて3戦1勝2着2回と好成績。まだ、3歳になったばかりの馬にそういう傾向だと決めつけるのは早計かもしれないが、やはりこの馬も直線に急坂のあるコースが向くのではないだろうか。
3着 バスラットレオン
現在の中京コースに先行有利という前提がある以上、道中でとったポジションは狙い通りだったように思う。
しかし、4コーナーでロードマックスと一緒に上がっていった場面で、仕掛けをワンテンポ遅らせていれば……と思ったりもするが、そのロードマックスも有力馬の一頭と目されていたため、致し方なしの部分はあった。そう考えれば、やはりこの馬も強い競馬をした一頭だったといえる。
レース総評
中京競馬場の芝コースは、年明けから依然として内ラチ沿いを通った馬が伸びる傾向にあり、逃げ・先行有利の状況が続いている。枠に関しても、内枠有利というよりは、前にいって内を通った馬が有利、といった方が正しいのかもしれない(内枠の方が先行しやすいので、結局は内有利になってしまうが……)。
そういう意味で、4着に敗れたククナは、大外枠に入った上に差し・追込み脚質のため、今回は厳しい展開となってしまった。むしろ、その条件下で牡馬相手に4着という結果は大健闘だったといえる。キングカメハメハ産駒は、毎レース全力で走る真面目な性格の産駒が多いため、十分に間隔を開けた上で、次走、同様の馬場傾向にならなければ、見直す余地は十分にあるのではないだろうか。
一方、前述したとおり、1、2着に入ったモーリス産駒は、おそらく、直線に坂のあるコースや、淀みない流れからの持久力勝負を得意とする傾向にあると推測される。他のモーリス産駒も含め、中山や阪神の1800m以上のレースでどういう結果になるか。2ヶ月後の皐月賞トライアル、そして3ヶ月後の本番が待ち遠しい限りだ。