[Rewind the race]砂塵邁進~2013年・ジャパンカップダート~

暮れのダート王決定戦「チャンピオンズカップ」。

「チャンピオンズカップ_として中京競馬場で行われるようになったのは2014年からで、それまではジャパンカップダートという名前で、東京競馬場や阪神競馬場でレースが施行されていた。

コースやレース名こそ違いがあれど、数多くの『砂の王』がこの舞台で誕生した。
今回はそんな砂の王者決定戦の中から、日本ダービーに出走した芝の優駿が砂に転向し頂点までたどり着いた2013年のジャパンCダートについてご紹介していく。


ベルシャザールは2008年に生を受けた。
そして、いわゆる「オルフェーヴル世代」の一角として、クラシック戦線に挑む。

重賞勝利こそないものの皐月賞や日本ダービーに挑み、ダービーではオルフェーヴル、ウインバリアシオンに続く3着を手にした。3冠馬が相手というだけに、この3着は誇れるものであり、この世代では上位級の能力を持っている証明となった。
しかしながらこのダービーの後は勝ち星に恵まれず、菊花賞とダービー卿チャレンジトロフィーで二桁着順を取った後は1年の休養を取ることとなった。そして1年後の復帰戦。選んだ舞台はこれまでの芝ではなくダートだった。そしてこの路線変更が、この馬を覚醒させることとなる。

3勝クラスからの再出発となったダートへの挑戦。
その初戦は3着だったものの、2戦目で勝ち上がるとオープン昇級。
1番人気で迎えたラジオ日本賞で2着、続くブラジルカップでオープンクラス初勝利と、瞬く間に上位クラスへと駆け上がった。
特筆すべきは、ダート転向後1度も馬券圏内を外していないその安定感。砂に転向後初めて挑んだ重賞武蔵野ステークスでも1番人気に支持されたが見事1着と、連勝で初めての重賞タイトルとなった。
そして勢いそのままに、G1の舞台に挑んだのだった。


2013年のジャパンカップダートは阪神競馬場で行われる最後のダート王者決定戦として行われた。

久々の外国馬参戦や多くのG1馬の出走など、話題の多いメンバー構成の中で、人気は破竹の連勝を重ねたホッコータルマエに集まった。昨年のリベンジを図るホッコータルマエは1番人気に支持され、中央G1初制覇に期待がかかっていた。
一方ベルシャザールは3番人気。重賞タイトルはあるものの屈強なメンバーの中で3番人気に支持されたのはやはり安定感と勢いを買われてのことだろう。

スタンド前でゲートオープン。レースがスタートした。
混戦の先行争いから抜け出したのは、ジャパンカップダート制覇の経験もあるエスポワールシチー。続いてホッコータルマエ、昨年の王者ニホンピロアワーズなどが続き、先行集団がずらっと広がる。一方、ベルシャザールは後方寄りの追走。前団を虎視眈々と探りながらレースを進めていた。

レースが向こう正面に差し掛かると、ベルシャザールが仕掛けた。
後方からポジションを上げ、中団まで浮上。さらに3、4コーナー中間では先行集団の後ろまで押し上げたのだ。

各馬が広がって迎えた直線。
残り300m地点で満を持してホッコータルマエが先頭に立つ。
しかしホッコータルマエを目掛けて1頭の青いメンコの馬が襲い掛かる。ベルシャザールが馬場の真ん中から一気に伸びてホッコータルマエをとらえる。
そして大外から猛追したワンダーアキュートを振り切ってゴールイン。3連勝でついにG1タイトルまで上り詰めた。しかもその1勝は並み居る強豪を抑えての勝利。もはや勢いだけではなく、確かな能力の高さの証明であった。

見事仁川で砂の王に輝いたベルシャザール。
翌年、フェブラリーSで3着となり、ドバイにも挑んだ後に引退、種牡馬となった。

ダートを舞台に新たな能力の開花したベルシャザール。チャンピオンズCと名前を変えても、レースの歴史はこれからも脈々と繋がっていく。

写真:RINOT

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