「ベリー・ベリー・ホース」のダノンデサイル、“欧州の壁”に挑むも悔しい5着。2025年インターナショナルステークスを振り返る

2025年8月20日、深夜。ドバイを制した「ベリー・ベリー・ホース」はイギリスへ渡り、インターナショナルステークスに出走した。欧州でも「ベリー・ベリー・ホース」を狙っていた。

ダノンデサイルのインターナショナルステークス出走は歴代で4頭目。過去にインターナショナルステークスに挑戦した日本調教馬は、ゼンノロブロイ(2005年)、シュヴァルグラン(2019年)、ドゥレッツア(2024年)の3頭。武豊騎手とのコンビで2着に食い込んだゼンノロブロイが最高着順で、ダノンデサイルが勝てば初制覇となるはずだった。

ダノンデサイルは、昨年の日本ダービー優勝馬であり、今年に入ってアメリカジョッキークラブカップ(GⅡ)、ドバイシーマクラシック(GⅠ)を連勝している。海外GⅠ初制覇となったドバイシーマクラシックでは、カランダガン(キングジョージ勝ち馬)やレベルスロマンスなど、世界の強豪を退けて優勝。この実績は、世界レベルの証と言っても過言ではない。更にドバイシーマクラシック勝ち馬が、同年のインターナショナルSに出走した過去3例はすべて勝利しているというデータは、ダノンデサイルの勝利を後押ししているように思えた。

しかし、伝統の欧州GⅠとなれば、そう簡単にはいかなかった。インターナショナルステークスの舞台は、イギリス・ヨーク競馬場。左回りの広いコースで、直線約1000mという持久力と瞬発力が試されるコース形態であり、ハードルは高い。出走メンバーもドラクロワ(エクリプスS勝ち馬)やオンブズマン(プリンスオブウェールズS勝ち馬)という、欧州で実績のある馬たちが相手である。ドラクロワは3歳馬で勢いがあり、斤量面でも有利。ダノンデサイルが61キロに対し、ムーア騎乗のドラクロアが57.5キロで出走できるのは、少々気になるところ。またオンブズマンは、公式レーティング127の欧州現役馬トップクラスの評価を受け、安定したGⅠ成績を残している。あとは新潟で絶好調の戸崎騎手が、 “欧州の壁”に対して「勢い」と「気合」と「度胸」でぶつかってくれれば…。

6頭立てとなったレースは、少数精鋭の中、ペースメーカーとしてバーキャッスルが大逃げを打つ展開になる。ダノンデサイルは2番手で追走し、やや力んでいるようにも思えたが直線の差し比べに持ち込めるだろうとみていた。直線に入ってもバーキャッスルの逃げ脚は衰えず、一瞬ヒヤリとする。しかし直線で各馬が一斉に仕掛けると差は一気に縮まった。ダノンデサイルも先頭争い加わったが最後は伸びを欠き、結果は5着。勝利を収めたのは英国のオンブズマン。見事な末脚で突き抜け、最後はドラクロワに3馬身半の差をつけていた。

インターナショナルステークスへのチャレンジ。過去の名馬たちと同じく、ダノンデサイルもまた“欧州の壁”に跳ね返されてしまった。

戸崎騎手の欧州での「ベリー・ベリー・ホース」インタビューを期待していたが、今回はお預けとなった。しかし、日本ダービー馬ダノンデサイルが欧州の強豪たちに挑む姿は、まさに“世界と戦う日本調教馬”の象徴である。チーム・ダノンデサイルの挑戦姿勢は、日本の競馬が未来に向かうための「価値ある1シーン」だ。ここで立ち止まるのではなく捲土重来、次なる大舞台での飛躍を楽しみに待ちたい。

ダノンデサイルの秋は、国内のレースに専念するという。ジャパンカップ、有馬記念…ダノンデサイルの美しい栗毛の馬体が、パドックで見ることができるのは嬉しい限り。国内で出走するのは、1月のアメリカジョッキークラブカップ以来となる。海外遠征を経て成長したダノンデサイルの馬体と、鞍上の戸崎騎手の笑顔を早く見たいものである。


楽しみにしていた、戸崎騎手の「“欧州版”ベリー・ベリー・ホース」インタビュー。

やっぱり、聞きたかったなぁ…。

Photo by I.Natsume

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