[本日より開催]古河原泉が描く「美しい馬の世界」Horses展
■内面を描き出す「今までになかった馬の絵」

2025年11月13日、翌日より開催される『古河原泉が描く「美しい馬の世界」Horses展』のメディア向け披露会が行われた。会場は代官山駅にほど近いTHE OBSESSION GALLERY。

馬の内面を描き出すその美しい作品群を、ひと足早く肌で感じることができた。

今回の個展では、アーティストの古河原泉氏が描く絵の中でも馬をモチーフとした油彩・版画を中心に約20点が展示されている。

「東山魁夷の白い馬やドガの描いた競走馬のように、馬をモチーフにした作品はたくさんあるが、今までになかったような馬の絵」

——主催であるアートオブセッション代表の出川博一氏がそう述べたように、独特の色彩とタッチで描かれる古河原氏の作品は、従来の馬の絵画とは一線を画しているように感じられる。

「今までになかった」理由は、古河原氏の「描きたいもの」についての思いに拠るところが大きいだろう。

「単純に馬のアウトラインの肉体の美しさや、走っている姿の綺麗なシーンを描きたいというのとは少し違っています。馬と人との対話、関係性を描きたい。それは馬の内面でもあるし、そこに確かに馬が生きているということを描きたいと常日頃から思っています。馬の息遣い、砂を踏む音、近づくと感じる体温などを五感で感じてそれを表現できたら」

馬の姿形を写し描くのではなく、馬と対峙し、長い時間をかけて経験と体験を重ね、馬の内面を描く。2022年には浦河に4日間滞在し取材を重ねたという馬に対する真摯さは、古河原氏の「(取材の時に)観察はするのですが、目を瞑ってただひたすら馬が生きているということを感じるということもしていました。馬が生きている証を、生の感情をキャンバスにぶつけたい」という言葉からも感じ取ることができた。

■エフフォーリアの優勝レイも展示

2023年に北海道へ行き、エフフォーリアと会い、今回展示されているエフフォーリアの一連の作品を描き上げた古河原氏。そんな縁もあり、エフフォーリアの2021年天皇賞・秋と有馬記念の優勝レイがキャロットクラブ提供のもとで会場に展示されており、描かれた馬たちを見守っている。

また、披露会にはエフフォーリアを現役時代に管理された鹿戸雄一調教師も訪れた。「今にも動き出しそうな絵で感動した」という鹿戸調教師の言葉に、真摯な姿勢が裏付けされたように感じる。

■古河原泉とエフフォーリア

「小さい頃から馬は好きでした。馬に乗るとか触れ合うような機会はなかったのですが、ずっと馬を描いてみたかった」

古河原氏は、浦河でデビュー前の若馬や母馬を中心に、穏やかで自然な馬の姿を描いた。また、地元である宇都宮に馬事公苑が移転していた時期には、馬術の取材もしたそうだ。そんな古河原氏も、今回の展示作品のモデルとなったエフフォーリアを描いたことには驚きを隠せない。

「まさかこんな有名な馬を描かせていただける機会が訪れるとは。レースのワイルドなエフフォーリアだけではなく、引退後の繊細さや、目線の先に何かメッセージを感じさせる魅力がありました」

古河原氏は、競走馬が『レース中の表情』と『(引退後の)牧場での表情』が全く違うことも実感したという。レース中は、騎手との見えない対話を表現することが難しいと感じた一方で、引退後のエフフォーリアには実際に会うことができたため、自分なりに表現することができたそうだ。

競馬ファンや競馬関係者など、馬に接している人たちに作品がどのように見えるのかドキドキしているという古河原氏。「絵から『馬が生きている』ということを感じていただけたら嬉しいです」と微笑んだ。

■新進気鋭のアーティスト、古河原泉の姿

古河原泉氏は栃木県宇都宮市出身。2000年に宇都宮大学教育学部美術科を卒業した後、美術団体「光風会」に所属した。2011年に団体退会後は独立し、2013年の渋谷Bunkamuraギャラリーでの初個展を皮切りに、百貨店や画廊等で個展を開催している。

作品のモチーフは「人物(特に女性)」を多く描き、バレエダンサー、女優、音楽家などをモデルに作品を制作することもある。動物ではボルゾイ(犬)、競走馬、馬術馬を描き、そのモダンなタッチで抽象と具象の間に対象となる存在を浮き立たせる。

また、古河原氏はSNSでのフォロワー数が10万人を超えている。その人気の高さは、作品がただ美しく素晴らしいだけではなく、その根底に流れるエネルギーに多くの人が感銘を受けているからだろう。それはモデルとなる対象のエネルギーであり、古河原氏のエネルギーであり、我々鑑賞者自身のエネルギーでもある。

「人間特有の生々しい複雑な内面にエネルギーを感じ、その様を古河原泉オリジナルの“ことば(表現方法)”で描写したい。」と古河原氏のサイトのアーティストステートメントにあるように、作品の前に立つと体の底から湧き上がるようなエネルギーが感じられる。そしてそれは今回のテーマである「馬」の作品についても同様であった。

■「馬とアート」の新しい切り口で

今回の展示は、写実とも違うカジュアルなアート作品として、新しい切り口で競馬を知ることができる機会となっている。アート作品による競馬界への貢献を目指し、売上の一部は引退競走馬の支援団体であるオールド・フレンズ・ジャパンに寄付されるとのことだ。

美しい馬がさらに芸術作品として昇華された「美しい馬の世界」。
日頃、競馬ファンが感じているものとはまた違った馬の美しさが見つかるかもしれない。

古河原氏は今後、他の競走馬も描いていくとのこと。
これから古河原泉の世界をどんな競走馬が駆け抜けていくのか、今から非常に楽しみである。


『古河原泉が描く「美しい馬の世界」Horses展』

会 期:2025年11月14日(金)~29日(土)11:00-18:00
※16日(日)、23日(日)、24日(月・祝)は休廊

会 場:THE OBSESSION GALLERY
https://www.art-obsession.co.jp/
東京都渋谷区猿楽町29-10 ヒルサイドテラスC-25

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