[重賞回顧]小春日和の府中に輝く天狼星!~2026年・共同通信杯~ 

前週は寒波による大雪の影響で開催が火曜日まで順延した中央競馬も、今週は一転して3月から4月並みの暖かさの中で行われた。
京都競馬場では西の登竜門・きさらぎ賞が施行されたが、東京競馬場では東の登竜門・共同通信杯が行われる。

共同通信杯の出走馬からは、昨年の天皇賞馬マスカレードボールをはじめ、過去10年でも多くのG1ホースが誕生している。16年ディーマジェスティ(皐月賞)、17年スワーヴリチャード(大阪杯、ジャパンカップ)、19年ダノンキングリー(安田記念)、アドマイヤマーズ(朝日杯FS、NHKマイルカップ、香港マイル)、21年エフフォーリア(皐月賞、天皇賞秋、有馬記念)、シャフリヤール(日本ダービー、ドバイシーマクラシック)、22年ジオグリフ(皐月賞)、ダノンスコーピオン(NHKマイルカップ)、23年タスティエーラ(日本ダービー、QE2世カップ)、24年ジャスティンミラノ(皐月賞)、ジャンタルマンタル(牡馬国内マイルG1全勝)と、出走馬から12頭ものG1ホースを輩出してきた。

歴代勝ち馬のその後の勝鞍を見ると、1800mという距離でありながら、より長いクラシックディスタンスでも、1ハロン短いマイル路線でも活躍馬を送り出している点が、このレースの懐の深さを物語っている。

今年は9頭立ての少頭数となったが、顔ぶれは充実。ホープフルステークスを制したロブチェンを筆頭に、同レースを回避してここから始動するラヴェニュー、新潟2歳ステークス勝ち馬リアライズシリウス、名牝クロノジェネシスの初仔べレシートが上位人気を形成した。さらに、スワーヴリチャードとの父子制覇を目指すディバインウィンドまでが1桁オッズで支持を集める。

大舞台での実績か、府中での経験値か。未知なる大物の出現か。
春に向けた9頭の3歳初戦が幕を開ける。

レース概況

ゲートが開いた瞬間、ロブチェンが抜群のスタートを決め、1馬身ほど前に飛び出した。内からはガリレア、外からはリアライズシリウスが前をうかがう。並ばれたことでロブチェンはやや力み、松山騎手は無理をせず中団まで下げる選択を取った。

先手を奪ったのはガリレア。2-3馬身差の2番手にリアライズシリウスが続き、さらにその後ろにディバインウィンド、イージーライダー。ロブチェンは中団5番手に下げた。その内にサノノグレーター、ロブチェンをマークする形でラヴェニューが構える。後方ではべレシートがやや掛かり気味に折り合いをつけ、最後方にサトノヴァンクル。こうして9頭の隊列が定まった。

ガリレアが淡々と刻む流れのなか、2番手のリアライズシリウスは余裕の手応えで追走。3番手以下とはやや間隔が空き、縦長のままコーナーへと向かう。残り600m、逃げるガリレアの直後にリアライズシリウスが並びかけ、直線入口では早くも馬体を併せた。

残り400mでリアライズシリウスが先頭に立つと、外からロブチェンが追撃を開始。そのさらに外へ進路を取ったべレシートは、前にいたラヴェニューの外へ持ち出すまでに一瞬待たされる場面があったものの、態勢を整えると鋭く伸びてくる。

前でリードを保つリアライズシリウスに、ロブチェンが半馬身差まで迫り、その外からべレシートが並びかける。三つ巴の追い比べはゴール板まで続いたが、アタマ差粘り切ったリアライズシリウスが勝利。新潟2歳ステークスに続く重賞2勝目を挙げた。

2着べレシート、3着ロブチェンはタイム差なしで入線。勝ち時計1分45秒5は従来のレースレコードを0.5秒更新する高速決着となった。開催が進んだ馬場状態でも、各馬の高いスピード能力を示す一戦となった。

各馬短評

1位 リアライズシリウス 津村明秀騎手

3歳2月にして早くも重賞2勝目。新馬戦、新潟2歳ステークスと左回りで結果を残してきた馬で、前走の朝日杯FSは右回りへの対応に苦しんだ印象があった。現状は左回りの舞台でこそ、その能力がより引き出されるタイプに見える。

今回は逃げたガリレアが馬体重を10kg増やして448kgでの出走だったのに対し、リアライズシリウスは既に530kgの雄大な馬体を誇る。その大きなストライドで巡行スピードを維持し、早め先頭から押し切る競馬を完遂。見た目にもパワフルな内容だった。

3歳春シーズン、まだ完成途上の段階でこのパフォーマンスを見せた点も心強い。今年の中山金杯、フェアリーステークスとすでに重賞2勝を挙げ、好調を維持する津村明秀騎手とのコンビで大舞台へ向けた準備は整ったと言っていい。人馬ともに自信をもって挑めるはずだ。

2位 べレシート 北村友一騎手

母クロノジェネシスの主戦を務めた北村友一騎手とのコンビで、今年のクラシックを目指す良血馬。前日のクイーンカップでは、母の半姉ノームコアの娘ドリームコアが勝利を挙げており、母母クロノロジストの孫世代が2日続けて3歳重賞で活躍。血統面の勢いも感じさせる存在だ。

レースでは道中やや掛かり気味に進み、直線でも進路を確保するまでにひと手間を要した。それでも実質的に進路が開けた最後の200mで一気に加速。上がり33秒0の鋭い末脚を繰り出し、アタマ差までリアライズシリウスを追い詰めた内容は豊かな才能を感じさせる。

末脚を引き出しやすい東京競馬場との相性は良好で、折り合いが改善されれば父母の血統背景から見ても距離が延びて問題ないタイプに見える。重賞2着で賞金を加算できた意義も大きく、大舞台で再びあの切れ味を見せる日を期待させる走りっぷりだった。まさに“負けて強し”の内容である。

3位 ロブチェン 松山弘平騎手

抜群のスタートを決めたことが、かえって折り合いを難しくしてしまった印象があった。それでも松山弘平騎手は無理に主張せず、中団まで下げて脚を溜める競馬を選択。G1馬として迎えた3歳初戦で、将来を見据えた運びに徹した判断は評価したい。

数少ないワールドプレミア産駒で唯一の重賞ウィナー。そのタイトルがいきなりG1だっただけに、このメンバー相手にどこまで戦えるかが注目された。直線ではリアライズシリウスを追う形となり、ホープフルステークスでも見せた、加速時に重心が沈み込む伸びやかなフォームを披露。追われてから左手前に替わり、本格的な加速フォームに入るまでにやや時間を要したあたりは、ステイヤーだった父の面影を感じさせる。

勝ち馬、2着馬とはタイム差なし。敗れはしたものの、G1制覇が決してフロックではないことは示した。すでに中山2000mで実績を持ち、今回の東京1800m経験も大きな財産。本番の皐月賞はもちろん、日本ダービーでも楽しみな存在である。

レース総評

西の登竜門・きさらぎ賞が寒波による順延という特殊な環境のなかで行われたのに対し、東の登竜門・共同通信杯は春を思わせる陽気のもとで行われた。舞台こそ対照的だったが、いずれもクラシック戦線を占う上で大きな意味を持つ一戦となった。

今年の共同通信杯が特に印象的だったのは、上位3頭すべてがここまで主戦騎手との継続騎乗で臨み、コンビネーションを深めている点だろう。リアライズシリウスと津村明秀騎手、べレシートと北村友一騎手、ロブチェンと松山弘平騎手。それぞれが馬の個性を理解し、課題と武器を把握したうえで運んだ内容だった。陣営と騎手が描く青写真は、より鮮明になりつつある。

クラシックは、能力だけでなく経験と信頼の積み重ねが問われる舞台だ。人馬の継続がもたらす安定感と成長曲線。その答えが示される春は、すぐそこまで来ている。共同通信杯の上位3頭が本番でどのような走りを見せるのか。東西それぞれの登竜門を経た3歳馬たちから、ますます目が離せない。

「堅忍不抜」のゾロアストロが困難を貫いた冬の勝者なら、小春日和の府中を駆け抜けたリアライズシリウスは「雄渾闊達」。ダイナミックで伸びやかなストライドが、春の大舞台への可能性を雄弁に物語っていた。

写真:@QZygbdf8L1kEB9U、s1nihs

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