今年で56回目を迎えた中日新聞杯は、中京競馬場で行われる伝統のハンデ重賞。
ローカルのハンデ重賞らしく、毎年のようにフルゲートに近い多頭数となり、過去10年で3連単の配当が10万円を超えたレースは5度と、やや波乱傾向にある。
今年も、フルゲートの18頭がエントリーし、単勝オッズで10倍を切った馬は4頭いたが、とりわけその中の3頭に人気が集まった。

その中で、オッズ3.7倍の1番人気に推されたのはヴェロックスだった。
昨年の皐月賞が2着、ダービーと菊花賞でも3着というクラシックでの実績は、現役馬の中でも屈指のものだが、意外にもここまで重賞のタイトルは手にしていなかった。今年2月、確勝を期したGⅢの小倉大賞典でよもやの9着と大敗し、その後は脚部不安で休養。今回が復帰戦となった。

2番人気に続いたのは、GⅠ2勝馬ラブリーデイを兄にもつ良血馬のボッケリーニ。
6月に、3勝クラスの江の島ステークスを快勝した後は、オープン特別で2戦連続2着と十分に見せ場を作った。ヴェロックスと同様に金子オーナーの所有馬で、共に重賞初制覇を目指してここに出走してきた。

そして、3番人気の支持を集めたのはグロンディオーズだった。
ボッケリーニが勝利した江の島ステークスが実に1年8ヶ月ぶりのレースで、さすがにそこは15着と大敗したが、その後は3勝クラスで2着、1着と着順を上げてオープンに昇級。
この馬も重賞初制覇を達成すべくここに出走してきた。

レース概況

ほぼ揃ったスタートから、予想通りタガノアスワドが逃げる展開に。
1馬身半差でバラックパリンカとテリトーリアルが並走して2番手となり、さらに1馬身差でシゲルピンクダイヤとショウナンバルディが追走した。その後ろに、上位人気3頭が固まり、その3頭に次ぐ人気に推されていたサトノソルタス、サトノガーネット、トリコロールブルーは、中団よりも後方に構えて、レースは向正面へと入った。

キャリアのほとんどのレースで、平均~ハイペースで逃げてきた実績を持つタガノアスワドだが、このレースでの1000mの通過は61秒5と、かなりのスローペース。

その後、隊列に大きな変化がないまま3コーナーに入ると、今度は2番手にいたバラックパリンカがタガノアスワドの外から並びかけ、この2頭のリードは2馬身となった。
続く4コーナーで、シゲルピンクダイヤが一つポジションを上げ、依然として上位人気3頭は、先頭から5馬身ほどの中団やや前に位置し、レースは最後の直線へと入った。

直線に入ると、タガノアスワドが再び1馬身ほどリードをとり、それを内から順に、ショウナンバルディ、バラックパリンカ、テリトーリアル、シゲルピンクダイヤの4頭が追う。
中でも外のシゲルピンクダイヤの脚色が優勢で、残り200mを切った地点で先頭に立ち、念願の2勝目と重賞初制覇を成し遂げるため、懸命にゴールを目指す。

それを阻止せんと後続から迫ってきたのが、同じ勝負服の2頭、ヴェロックスとボッケリーニだった。
特にボッケリーニの勢いがよく、残り50m地点でシゲルピンクダイヤを内から捕らえて先頭に立ち、最後はクビ差のリードを保ったまま1着でゴールイン。
2着にシゲルピンクダイヤが入り、ヴェロックスは休み明けが響いたか、最後に末脚が鈍って3着となった。

各馬短評

1着 ボッケリーニ

4歳シーズンが間もなく終わりに差し掛かる中で、これがキャリア12戦目。デビュー戦の6着が最低着順で、それ以外は全て4着以上と堅実な成績を残している。

同じ池江厩舎に所属していた全兄のラブリーデイは、5歳初戦の中山金杯をレコードで勝利して重賞初制覇を達成すると、そこから半年で重賞を4勝し宝塚記念を制覇。さらに秋には、京都大賞典と天皇賞秋を連勝してこの年だけで重賞を6勝し、一気に古馬の頂点へと上り詰めた。

同じ活躍を期待するのはさすがに酷だが、ここまで大切に使われ、まだ底を見せていない戦績というのは魅力。兄と同じ5歳シーズンに才能が一気に開花し、古馬の中距離戦線で上位争いを見せてもなんら驚かないほどのポテンシャルは秘めている。

2着 シゲルピンクダイヤ

惜しくもクビ差に泣き、念願の2勝目と重賞初制覇には手が届かなかった。ヴェロックスはクラシックで好走した実績があったが、思い返せば、この馬にも昨年の桜花賞2着、秋華賞3着の実績があった。

ダイワメジャー産駒らしく、直線が長く坂のあるタフなコースが向いているが、おそらく、上がりが速いとか、かかるとかそういうことは関係なく、いかに気分よく走れるかが好走する条件なのではないだろうか。

今回、ゲート入りが上手くいかなければ引退という話もあったようだが、無事にそれはクリアして好走し、次走は同じ舞台で行われる愛知杯を目指すとのこと。気性的に、あてにしづらい馬だが、その難しさが顔を覗かせなければ、いよいよ念願の2勝目と重賞初制覇が見えてくるだろう。

3着 ヴェロックス

絶好の手応えで直線に向いたが、最後の伸びを欠いたあたりは休み明けの影響だろうか。前走の小倉大賞典と前々走の有馬記念は、それぞれ9着、8着と崩れたが、この馬もそれ以外のレースでは全て4着以内に入っていて、相手なりに堅実に走っている。

また、ラブリーデイが5歳でブレイクしたというなら、この馬の父ジャスタウェイも、現役時は重賞で惜敗を繰り返しながら成長し、4歳秋から5歳春にかけて一気にブレイクして頂点を極めた名馬。母系に流れるヨーロッパの重厚な血が後押しすることで、善戦マンからの脱出を期す5歳シーズンとしたいところだろう。

レース総評

スローからの上がり勝負となったため、後続に構えた馬には展開が向かず、タイムもやや平凡なものとなってしまった。ただ、上位入線を果たした馬はいずれも4歳馬で、内2頭は昨年のクラシックで複数回好走実績がある馬だったため、比較的順当な結果だったといえるのではないだろうか。

また、3頭とも今回がキャリア12~14戦目と少ないため、血統的背景を考えれば、来季ブレイクできる下地は十分に秘めている。今回の勝利により、依然として戦歴ではほぼ底を見せていないボッケリーニはもちろんのこと、惜敗が続くヴェロックスとシゲルピンクダイヤも、勝利というきっかけが一度でも掴めれば、昨年のクラシックのように、再度トップクラスで戦える力は十分に秘めている。

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