カペラステークスは、同じ中山ダート1200mで1月に行われていたガーネットステークスを引き継ぐ形で施行されるようになり、今年で13回目を迎えた。
2011年以外はフルゲートの16頭で行われ、2018年のコパノキッキングまで1番人気馬の勝利はなかったものの、毎年のように大波乱が起きているわけではなく、中波乱で決着することが多い。

今年も16頭が出走し、単勝オッズ10倍を切った上位人気馬は4頭で、その中でも僅差の1番人気に推されたのがレッドルゼルだった。2月の橿原ステークスを勝利してオープン入りを果たすと、7月のプロキオンステークスでは1番人気で8着に敗れたものの、その前後のオープン特別では3戦2勝2着1回という成績。前走は室町ステークスを勝利していた。プロキオンステークスと3歳時の端午ステークスで7着となった以外は、10戦6勝2着4回という堅実な成績も魅力だった。

2番人気に続いたのはダンシングプリンス。昨年8月にデビューし、2戦未勝利のまま一度は地方の船橋競馬に移籍したが、いずれも圧勝で3連勝を飾り、中央再転入を果たした。すると、さらにそこから3連勝して連勝を6に伸ばし、今年のダート短距離界最大の新星といえる一頭となった。また、着差だけでなく、2走前はレコードで勝利するなど内容も伴っており、今回は初重賞制覇とさらに連勝を伸ばせるかに注目が集まった。

3番人気となったのは、昨年の2着馬テーオージーニアスだった。オープンに昇級後は、2着5回と勝ちきれないレースが続いているが、今回は休み明け3戦目の狙いすましたローテーションでここに出走。昨年の好走を再現し、惜敗続きにピリオドを打つためここに臨んできた。

そして、4番人気となったのはジャスティン。3月に、今回と同じ舞台で行われた千葉ステークスを快勝すると、4月の東京スプリント、さらには10月の東京盃と、大井1200mの交流重賞を2つ制した。しかし前走のJBCスプリントでは、1番人気に推されながらも8着に敗れ、今回は中央の重賞初制覇を目指し、このレースに挑んできたのだった。

また、それ以外にも地方所属馬が3頭出走。中でも、注目を集めたのはサブノジュニアで、前走のJBCスプリントでは、地方生え抜きながらGⅠ級のレースを制するという、大変な快挙を達成していた。その実績は、今回の出走馬の中では断然で、メンバー唯一の59kgや、芝スタート、そして直線に急坂のある中山コースを克服できるかが焦点となった。

レース概況

ゲートが開くと、ダッシュがつかなかったデュープロセスが最後方となったが、他はほぼ揃ったスタートとなった。真ん中から、ダッシュ良くダンシングプリンスが一度は先頭に立ったものの、内からヒロシゲゴールドが手綱を押して強引に先手を奪い、3番手をジョーカナチャンとジャスティン、そしてスズカコーズウェイの3頭が併走。

一方、レッドルゼルは、先頭から最後方まで20馬身ほどとなった隊列のちょうど真ん中、前から数えて10番手をぽつんと進み、テーオージーニアスはさらに大きく離れた後方2番手となって3コーナーへ入った。

戦前の予想通り、前半3ハロンは33秒1のハイペース。
しかし、先行したダンシングプリンスとジャスティンの手応えはかなり良いように見え、レースはそのまま4コーナーを回って直線に向いた。

直線に入ると、ヒロシゲゴールド、ダンシングプリンス、ジャスティンの3頭がしばらく併走したが、残り200mでヒロシゲゴールドが脱落し、そこからは2頭の叩き合いとなった。
3番手以下は3馬身ほど差が開き、かわってその2頭を大外から猛追してきたのは、道中は中団に構えていたレッドルゼル。ゴールに近づくにつれ、一完歩ごとに前2頭との差が詰まってくる。

片や、前2頭の争いは、ゴールまで残り50mでジャスティンが半馬身ほど前に出て決着し、そのまま粘りきって中央の重賞初制覇のゴールイン。クビ差の2着争いは、猛追したレッドルゼルと、粘るダンシングプリンスの接戦となったが、ここもクビ差でわずかにレッドルゼルが先着して2着となった。

各馬短評

1着 ジャスティン

道中はハイペースを先行し、直線ではマッチレースを制して押し切るという、着差以上に強い内容だった。前走のJBCスプリントは人気を裏切る結果になってしまったが、揉まれる競馬が良くなかったとのこと。今回のように、外枠を引いて気分よく走ることができれば、今後も好走が期待できる。

また、矢作厩舎所属の坂井騎手が主戦のため、普段の調教から騎乗できて、馬と頻繁にコンタクトがとれること、日常からいろいろなことを教えられることは非常に大きい。

オルフェーヴル産駒は、先週のステイヤーズステークスで平地の芝最長距離重賞を制したが、今週は正反対のダート短距離重賞を制した。特にダートでは、本馬のように母の父が米国のスピード血統だと相性が良く、他にヴァイスリージェント系の繁殖との配合でも好成績を収めている。

2着 レッドルゼル

2度目の重賞挑戦は2着惜敗となったが、全く悲観する内容ではなかった。道中、中団前後につけられれば、確実に末脚を発揮できるようになっており、展開に注文はつくものの、今後もこの末脚を武器に戦っていくことになるだろう。また、そういった意味では、直線がさらに延びる根岸ステークスに出走してくれば、引き続き勝ち負けになるのではないだろうか。

3着 ダンシングプリンス

連勝こそ止まってしまったものの、ジャスティン同様ハイペースを先行して粘った内容は、重賞初挑戦ながら見せ場十分だったといえる。
中央のダートでは、距離は1200m以下、コースは福島と中山競馬場しか経験がなく、また間隔を詰めて使うとどうなるかなど、克服する内容や課題はたくさんあるが、これまでと今回の内容を見る限り、それらをあっさり乗り越えられるだけの実力が備わっていることは十分に確認できた。

レース総評

ダートの短距離重賞らしく、逃げ・先行馬が多数おり、道中はハイペースで推移することが予想された。実際、その通りの厳しい流れとなり、人気上位に推された馬がそのまま上位入線を果たす結果となった。この3頭は、引き続き1400m以下のダート短距離路線では、繰り返し上位争いを演じていくことになるだろう。

ところで、ダート短距離路線は、交流重賞(ダートグレード競走)が数多く施行されていて、国内最大のレースはJBCスプリントである。2021年は、2ターンで馬場を1周する金沢1400mで行われるため、1ターンのコースが得意と思われる今回の上位3頭が出走してきた場合は、その適性を慎重に見極める必要がある。

しかし、今回のレースは厳しい流れとなりながらも4着以下を離していることからも、それぞれが今後の成長次第で、その条件を克服する可能性を十分に秘めている。

カペラステークスの過去の優勝馬で、後にGⅠ級のレースを制してトップに上り詰めた馬は、現在のところダノンレジェンドしかいないが、今回の3頭の中からその系譜を引き継ぐ馬が現れることを期待している。

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