今回は、タイトルにもある通り、一口馬主の魅力をお伝えしていきます。
私、うまぞらがこの趣味を始めたのが2018年の秋ですから、まだまだ新米の一口馬主です。
歴は浅いですが、その分フレッシュな感想をそのまま文章にできるのではとの思いで、今回記事を書かせて頂くことにしました。一口馬主は、馬券予想とは全く違う「競馬の楽しさ」「競馬の奥深さ」を感じられる、素晴らしい趣味です。
この記事で、少しでも一口馬主の魅力を皆様にお伝えできれば幸いです。
出資馬の検討
一口馬主という趣味の中で最も肝となるイベントが、最初に訪れます。
それは「出資馬の検討」です。
父、母の現役時代の成績、出生時母年齢、血統、馬体、募集価格など、気にするポイントは多種多様。全ての条件が完璧という募集馬はまずいません。もしいたとすれば、相当な争奪戦になることでしょう。
自分好みの馬を見つけるのは簡単なことではありませんが、募集馬リストが発表されてから応募開始日までの間じっくりと検討を重ね、自分の財布とも相談しながら応募馬を選定するのは、何事にもかえられない楽しさがあります。
話は変わりますが、私が子供の頃は、ちょうど初代ポケモンの全盛期でした。好みのモンスターを探して、仲間にして、育てて、強敵に挑む……その過程が非常に楽しくハマっていたことを覚えています。表現が適切かどうかは分かりませんが、実はこの流れが一口馬主の楽しさに似ていて、私がこの趣味にのめり込む要因の1つだったのではと思ったりもします。
馬名を考える
出資馬が決まった後は馬名の応募です。
この馬名を考えるというのも一口馬主の醍醐味の一つで、個人的にはパズルを組み立てていくような楽しさを感じています。
以前、ありがたいことに命名させて頂いた馬がいますので、その馬名を例にあげてみます。
その馬名は「シェノン」。
父がキズナで、その初年度産駒でした。キズナは私が初めてダービーを現地で観戦した時の思い出の馬でもあります。また、この馬の生産牧場はパカパカファーム。キズナと同じディープインパクトを父に持つダービー馬ディープブリランテの生産牧場です。さらにディープブリランテの預託厩舎は矢作芳人厩舎で、この募集馬の預託先でもありました。
この経緯や、父名からヒントを得て「繋がり」というキーワードで様々な国の言葉を検索したり辞典で調べることにしました。そしてフランス語で「繋いでいくこと」の意味を持つ「シェノン(Chainon)」という言葉を見つけ「これだ!」と思い応募。
会員間の馬名投票を経て命名に至りました。
「シェノン」の場合は父名やバックグラウンドから連想しましたが、他にも母名、兄弟名、毛色など様々な角度から馬名を考えることが出来ます。様々なピースを当てはめて1頭1頭じっくりと馬名を考えるうちにその馬に対する思いも深まりますし、命名出来た時の思いはひとしおです。そしてデビュー戦でその馬名が競馬場に響いた時の感動は一生の思い出になります。
出資からデビュー戦まで
クラブや出資馬の状況にもよりますが、募集開始時期からデビューまでは約1年かかります。
その間、HPなどで定期的な近況を読んで出資馬の成長具合を見守るのですが、これも一口馬主のかかせない楽しみの1つです。
「馬体重は増えているかな?」
「気性は落ち着いてきたかな?」
「この前の熱発は大丈夫だったかな?」
「調教の進み具合はどんな感じかな?」
「そろそろ移動や入厩の予定は出るかな?」
などなど、出資馬のことを気にしながら日々を過ごします。
中には頓挫して入厩が延期になったり、デビューの日を迎えられない馬がいるのも現実です。そんな中で無事にデビュー出来ることがどれだけ素晴らしいことか、新馬戦を勝つということがどれだけ偉大なことか……。
一口馬主を始めなければ、ここまで新馬戦に大きな思いを寄せることはなかったと思います。出資馬がデビューする日は当日のGIレースが目に入らないほど、新馬戦のことで頭がいっぱいになります。
勝ち上がりに向けて
もちろん、デビュー勝ちが出来れば理想ですが、実際はそんなに甘くありません。
新馬戦で負けてしまうと次は未勝利戦の舞台で戦うことになります。未勝利戦といえどもレベルは決して低くなく、3歳夏の未勝利戦終了時点で勝ち上がれるのはデビュー馬全体の半数にも満たない厳しい世界です。輝かしいクラシック戦線の裏では、そんな勝ち上がりをかけた熱い戦いが繰り広げられています。
この未勝利戦に対する緊張感も、馬主や一口馬主という立場でこそ強く味わえる感覚のひとつだと思います。そして、新馬戦から何度も敗戦を繰り返してきた出資馬が勝ち上がった時の感動は、想像以上です。
迫るタイムリミットからの開放と安堵感、昇級戦への期待で「天にも昇るような気持ち」と言っても過言ではありません。
この感動を味わえるだけでも、一口馬主を初めて良かったと思えるほどです。
重賞への挑戦
無事に勝ち上がることができれば、2歳~3歳の早いタイミングなら賞金次第でいきなり重賞への挑戦も可能です。
私の出資馬の初重賞デビューはゼノヴァースという馬でした。2歳時の12月に未勝利戦(中山芝2000m)を2馬身半差の勝利。年明けに満を持して同条件の京成杯へと駒を進めました。
鞍上はマーフィー騎手が予定され、1勝馬ながら人気も上々(最終3番人気)、レース当日まで本当に夢見心地でした。
私は関西在住ですが、迷わず中山競馬場までの遠征を決定。競馬場では同じゼノヴァース出資者の方とも初めてお会いすることができ、同じ馬を応援している方がこんなにいるんだと心がときめいたことを覚えています。
そして待ちに待ったレースの時。自分の胸の鼓動が聴こえてきそうなほど緊張しました。
「全馬一斉にスタート」
ゼノヴァースは少し出遅れたものの、道中は折り合いも付き気持ちよく走れています。
最終コーナーにさしかかり徐々に進出を開始「このまま直線差し切れるか!?」という思いも束の間、後続に飲み込まれて9着という結果に……。
「やっぱり競馬は甘くないな……」としみじみ感じさせられた瞬間でした。
ゼノヴァースが所属しているワラウカドというクラブは、レース後にレクチャーと呼ばれるイベントがあり、集まった会員にスタッフの方が調教師や騎手のコメントを伝えてくれます。
このレクチャーのおかげで、かなり心が救われました。
私以外の出資者もおそらく惨敗のショックで放心状態だったと思いますが、お互いに励まし合って、最後は皆さん笑顔で競馬場を後にされていました。勝利の喜びを分かち合うのはもちろん最高ですが、こういった敗戦時にも、むしろ出資者同士の絆が深まるような気がしました。醍醐味の一つだと思います。
初めての重賞制覇
2020年11月7日、その日はついに訪れました。
キャロットクラブの出資馬モントライゼが前走小倉2歳Sで収得賞金を積み、京王杯2歳Sへ参戦。
このレースの1番人気はそれまでの2戦で圧倒的なパフォーマンスを見せてきたリフレイムという牝馬。モントライゼはそれまで過去に2度敗戦をしていましたが、その2頭がヨカヨカとメイケイエールという牝馬だったので、また牝馬が壁として立ち塞がるのかと少し不安がありました。
しかし鞍上はリーディングジョッキーのルメール騎手。あとは、名手の手綱さばきを信じるのみです。
モントライゼは好スタートから先団につけ、直線で一気に先頭に。
もうここからは黙って画面を見つめて祈ることしかできませんでした。
しかし、そんな不安を一掃するようにモントライゼとルメール騎手はそのまま後続を突き放し、最後は少し詰められるも見事1着でゴール!!!
コロナ禍で残念ながら競馬場に行くことはできませんでしたが、テレビの前で意識が飛ぶほどの感動を味わいました。もしかすると本当に、少し(?)意識が飛んでいたかもしれません。
夢を見ているんじゃないかと思ったほどです。
一口馬主とTwitter
もし、これから一口馬主を始めたいという方がいらっしゃいましたら、是非Twitterもあわせて始められることをおすすめします。
私がここまで一口馬主にのめり込んでいる大きな理由の1つが、Twitter上での会員同士の交流です。
出資馬のレースに一喜一憂したり、お互いの出資馬が勝利した時には祝福し合ったり──。
普通に生活していれば繋がることのなかったような方とも、同じ出資馬を通じてすぐに仲良くなることができます。
大げさかもしれませんが、人との繋がりが増え人生に新たな彩りが加わると思います。
良ければ、私のTwitterアカウントをフォローして頂けると幸いです。
時間の許す限り、自慢の出資馬について語り合いましょう!
そして、いつの日か皆様とウィナーズサークルでお会いできることを楽しみにしています。
写真:うまぞら、三木俊幸