例年、話題を集める輸入新種牡馬たち。
今年も楽しみな種牡馬が輸入されています。今回は、ナダル・シスキン・ノーブルミッションと、3頭の輸入種牡馬を取り上げたいと思います。

なお、セリ市での落札価格は税込価格です。

ナダル

父:Blame 母:Ascending Angel
血統登録された産駒数:98頭

2021年の新種牡馬ドレフォンの活躍を含め、社台スタリオンステーションは輸入種牡馬の導入に積極的です。2024年も2頭の輸入種牡馬の産駒がデビュー。そのうちの1頭が2020年のアーカンソーダービーを制したナダルです。

2020年はケンタッキーダービーが9月に順延するなど変則的な開催となったアメリカ競馬。ケンタッキーダービーの前哨戦であるアーカンソーダービーも例年より1ヶ月遅い5月開催となりました。そのアーカンソーダービーには99頭の出走登録があったため、2つのレースを行う分割開催という異例の開催となりました。分割開催となったアーカンソーダービーの1つを制したナダルは一躍アメリカ牡馬三冠路線の主役の1頭になりましたが、調教中に骨折。復帰が難しいとの事で5月下旬には現役引退が発表されました。その後10月には、社台スタリオンステーションがナダルを購入しています。

父のブレイム(Blame)は2010年のブリーダーズカップ・クラシックを制した馬で、代表産駒には2017年のディアヌ賞(フランスオークス)を制したセンガ(Senga)がいます。日本で走ったブレイム産駒はスイートピーステークスを制し、愛知杯などの重賞で3着に入ったランドネなど。母の父のプルピット(Pulpit)はアメリカを代表する種牡馬で、現在のアメリカ競馬にも強く影響を残しています。

5月10日に行われた2歳馬のセリ市「2024年度 千葉サラブレッドセール」で上場された47頭中、落札価格が唯一1億円を超えた馬がナダル産駒のスクラッタの2022(牝 母:スクラッタ 厩舎:未定)で今福洋介オーナーが1億2,100万円で落札しました。また、4月23日に行われた「2024年度 JRAブリーズアップセール」で木村美惠子オーナーが2,970万円と同セリ最高額で落札したトウカイライフの2022(牡 母:トウカイライフ 厩舎:未定)もナダル産駒でした。

一口クラブ所属のナダル産駒で注目は、社台サラブレッドクラブが総額5,000万円で募集したエミーズプライドの2022(牡 母:エミーズプライド 美浦:高木厩舎)。半兄に2022年のUAEダービーや昨年のコリアカップを制したクラウンプライドがいる血統です。

ナダル産駒の適性は父と同様ダートでの競馬がベストでしょう。距離は東京ダービーや羽田盃が行われる1800~2000mがベストだと思いますが、ナダル自身はダート6.5ハロン(約1300m)戦でのデビュー戦を勝っていますから、配合次第によってはダート1600m前後の距離を克服できる産駒が出てきてもおかしくはありません。2歳よりも3歳シーズンに1つの成長のピークが来るタイプではないでしょうか。

シスキン

父:First Defence 母:Bird Flown
血統登録された産駒数:7頭

社台スタリオンステーションに繋養されている輸入新種牡馬はナダル以外にもいます。2020年のアイルランド2000ギニーなどヨーロッパのG1レースを2勝挙げたシスキンです。ただ、シスキンは初年度だった2021年の種付けの途中に転倒し怪我をしてしまったため、血統登録された産駒数は僅か7頭しかいません。

シスキンの父のファーストディフェンス(First Defence)は現役時代にアメリカのG1レース・フォアゴーステークス(ダート約1400m)を制した馬。父方の祖父はコントレイルやスワーヴリチャードの母の父でお馴染みのアンブライドルズソング(Unbridled's Song)です。母の父のオアシスドリーム(Oasis Dream)はヨーロッパのスプリント戦線で活躍をおさめました。

僅か7頭しかいないシスキンの初年度産駒ですが、セリに上場した5頭の産駒全てが落札されるなど評価は高いようです。2023年のセレクトセール1歳馬部門で「テリオス」の冠号でお馴染みの鈴木美江子オーナーが5,280万円で落札されたテリオスララ(牝 母:シャンドランジュ 美浦:田島厩舎)の兄は昨年のみやこステークスなどを制したセラフィックコールなどがいる血統で、母方の祖母のハルーワスウィートはシュヴァルグランやヴィヴロス、ヴィルシーナの母として有名です。

一口クラブのシスキン産駒で注目馬はキャロットクラブが総額5,000万円で募集したアドマイヤセプターの2022(牡 母:アドマイヤセプター 美浦:田中博厩舎)。半兄には皐月賞トライアルの若葉ステークスなど4勝挙げているデシエルトなどがいます。叔父にはドゥラメンテが、母方の曽祖母はエアグルーヴが、母方の祖母はアドマイヤグルーヴがいる良血馬です。

シスキン産駒の適性は、シスキンの現役時代を見るに芝の短距離から芝のマイル路線がベストでしょう。しかしヨーロッパの短距離路線で活躍して引退後は日本で種牡馬生活をした馬はダートでも結果を残している傾向があります。さらにシスキンの父方の祖父のアンブライドルズソングはダートでも活躍している馬を送り出している点を踏まえると、ダートの短距離からマイル路線で結果を残す可能性があると考えられます。シスキンが2歳5月にデビューした点から行けば2歳の早い時期から活躍する馬が出てくるのではないでしょうか。シスキンの血統やシスキン自身が3歳夏以降成績が伸び悩んだことを踏まえると、成長のピークはかなり早くなりそうです。

ノーブルミッション

父:Galileo 母:Kind
血統登録された産駒数:85頭

ナダルのところでも触れました「2024年度 JRAブリーズアップセール」。2008年の朝日杯フューチュリティステークスを制したセイウンワンダー、2021年の北九州記念を制したヨカヨカもこのセールの出身です。今年のJRAブリーズアップセールに7頭が上場し、そのうち5頭が1,000万円以上の値がついたのが新種牡馬ノーブルミッションの産駒たちです。

ノーブルミッションは近年のヨーロッパの競馬界において最強と言われたフランケルの全弟。ノーブルミッション自身もイギリスのG1レースのチャンピオンステークス(芝約2000m)などヨーロッパのG1レースを3勝した実績を持っています。

2015年にアメリカで種牡馬入りしたノーブルミッション。初年度からアメリカのG1レース・トラヴァーズステークス(ダート約2000m)を制したコードオブオナー(Code of Honor)を出し、昨年のブリーダーズカップ・ターフスプリント(芝約1000m)を制したノーボールズ(Nobals)の父としても知られております。日本ではこれまで5頭のノーブルミッション産駒が外国産馬または持ち込み馬としてデビューしていますが、JRAのレースで勝ったのは東京ダート2100mの未勝利戦を勝ったベルゲンハーバー1頭のみです。

セリ市でのノーブルミッション産駒の最高値は昨年の北海道セレクションセールで今福洋介オーナーが5,940万円で落札したリアライズハロック(牡 母:イシス 美浦・池上厩舎)。半姉は昨年のクイーンステークスを制し、オークスでも3着と健闘したドゥーラがいます。また、前記のブリーズアップセールで米山晴敏オーナーが1,595万円で落札した アドマイヤラックの2022(牝 母:アドマイヤラック 厩舎:未定)は叔父に2006年の日経新春杯などを制したアドマイヤフジがいます。

ノーブルミッション産駒の傾向ですが、ノーブルミッションと同様芝の中長距離で大物を出すのではないかと期待されます。ただ、ヨーロッパの中長距離路線で活躍した馬がジャパンカップで苦戦している傾向を踏まえると、切れ味を求める東京や京都の様なコースよりも洋芝の札幌や函館、そしてパワーを要する中山のコース向きの馬が出るのではないでしょうか。適性距離に関してはマイルから2400m辺りの距離がベストだと思います。

地方競馬では既に2歳新馬戦がスタート。5月1日にホッカイドウ競馬の門別競馬場で行われた新馬戦で新種牡馬レッドベルジュール産駒のウィルオレオールが初勝利を飾りました。

6月から始まるJRAの新馬戦。
果たして今回取り上げた馬たちから来年のクラシックやダート路線で活躍する馬が出るでしょうか?

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