2023年1月9日、3歳牝馬限定の重賞フェアリーSで11番人気ながら鋭く差し切り勝ちを収めたキタウイング。新年早々、馬連211.4倍&三連単5174.3倍と、波乱のレースを演出した。
今回はそのキタウイングを勝利に導いた、鞍上・杉原誠人騎手にお話を伺ってきた。
「フェアリーSについては、会心の騎乗というよりは、ちょっとうまくいきすぎたという気がしています。ラストの内ラチぎりぎりのところは、本来ならあまり突っ込んではいけないところですから。結果的にはうまくいったんですが、上手に乗ったというよりは危なっかしい騎乗でしたね……」
ファンからすれば内側から鋭く伸びる抜群の好騎乗も、まずは反省の言葉を口にした杉原騎手。レースを「イチかバチか……がうまくいったんです」と振り返る。
出遅れにより道中は後方でのレースとなったものの、途中から9番手まで押し上げると、最後はメンバー最速の末脚で差し切った。
「4コーナーで、当初の想定よりもかなりポジションが前だと気がつきました。そこで『あれ? ここなら射程圏にいるな……』と。直線に向いてから『進路があくかなぁ』と思いましたが、内側からうまく伸びてくれました。今回は馬に助けられましたね。すごい根性でした。未勝利戦も接戦で勝ち上がりましし、今回のフェアリーSも接戦。ああいうギリギリのところから勝ち切れるというのは、キタウイングの気持ちの強さによるものだと思います」
そもそもデビュー戦(8番人気4着)、続く未勝利戦(3番人気1着)と、デビュー当初からコンビを組んでいた杉原騎手とキタウイング。新潟2歳Sでは戸崎騎手、阪神JFでは和田騎手とコンビを組んだため、今回は昨年8月以来のコンビ復活となった。
「未勝利戦の時とは雰囲気が全然違いましたね。返し馬でも『いい馬になったな……』と感じていました。ただ、勝ち切れるかどうかといえば、それは難しいかもしれないと思っていたのも事実です。もちろん勝つ気持ちで乗ることが大前提ではありますが、今回のレースにおける第一優先は、今後に向けて競馬を教える意味でも末脚をしっかり使わせること。さらにその日の中山の馬場状態を踏まえても、差して届くかは微妙なラインじゃないかな、と……。それを差し切ってくれるのですから、すごい馬です」
「今回のレースで、ああいうパフォーマンスができることがわかったのはプラスですね。実は、前走(阪神JF)と比べると状態はまずまずというレベルだったと聞いていますが、それで重賞を差し切ったワケですから。これで抜群のデキに仕上がっていれば一体どれほど……と、期待で胸が膨らみますね」
そんな杉原騎手は、今年に入ってすでに3勝。しかもどれも3歳牝馬かつ中山マイル戦という固め打ちを見せている。新馬戦ではシルバージュエリーに騎乗して2着に3馬身半差の快勝。こちらも楽しみな存在だ。
「新年からうまくいきすぎ、とは思っています(笑) フェアリーSの後には『大丈夫かな? 帰りの車で事故を起こしてしまうんじゃないかな?』と思ったほどです(笑) 新年には『(昨年、重賞初制覇をしたが)また今年も重賞を勝ちたい!』という目標を掲げていたのですが、すでに達成できましたし、もっと大きなところを目指していきたいですね! 今回のレースで、キタウイングの実力も再確認できました。重賞を2つ勝利している馬として、自信をもって次走以降も挑んでいければと思います。G1に挑戦する権利を得たので、当然、勝ちを狙っていきたいですし、それ以外のレースも全力で取り組んで去年の勝ち星を超えたいですね!」
昨年は12勝と、9勝だった2021年よりも勝ち星を伸ばした杉原騎手。ロケットスタートを切った2023年の更なる飛躍を、改めて期待したい。
写真:かぼす