[本日の重賞]7262頭の頂点に立つのはどの馬か?第87回東京優駿(日本ダービー)

「ダービーステークス」ってどんなレース?

1780年、第12代ダービー卿エドワード・スミス・スタンレーらにより、イギリスのエプソム競馬場で彼の名を称した 3 歳牡牝混合競走の『ダービー』が創設されました。出走条件は3歳限定。また、繁殖馬の選定のために行われるので、せん馬(去勢された牡馬)の出走は不可というものでした。
1歳時に出走登録を済ませていない馬は、追加登録料を支払わないと出走できないレースです。

『ダービー』という名前が世界に広まった理由として、優勝馬が種牡馬として成功したこと、産業革命の進展によって生まれた富裕階級の競馬愛好者からの注目を集めたこと、さらにエプソム競馬場が立地条件の良いところに位置していたことなどがあげられます。
1800年代中頃になると、さらに大きな人気を博するようになりました。

日本ダービーってどんなレース?

正式名は「東京優駿(日本ダービー)」です。
優勝した馬の関係者には内閣総理大臣賞・日本馬主協会連合会会長賞・東京馬主協会賞、朝日新聞社賞(騎手賞)が授与されます。

イギリスのダービーステークスを範として、1932年4月24日に目黒競馬場の芝2400mで「東京優駿大競走」として行われました。その後、1934年の第3回からは東京競馬場の芝2400mで開催。
第2次世界大戦で1945年・1946年は中止となりましたが、以降は3歳馬の最高の栄誉を掛けた毎年恒例の一大イベントとして開催されています。

今年の主な出走馬

コントレイル(牡3 栗東・矢作厩舎 57Kg 福永騎手騎乗)

皐月賞を無敗で制したコントレイルが父のディープインパクト(2005年)以来、無敗の二冠(皐月賞、日本ダービー)を目指し出走します。

父のディープインパクトはこれまで5頭の日本ダービー馬を送り出した名種牡馬です。今回、コントレイルなどのディープインパクト産駒が勝てば、サンデーサイレンス・トウルヌソルと並び、種牡馬として日本ダービー最多勝タイ記録達成となります。

母のロードクロサイトの競走馬時代は未勝利に終わりました。しかし、母方の祖母にあたるフォルクローレはアメリカのG1レース、ブリーダーズカップ・ジュヴェナイルフィリーズ(ダート約1700m)を勝つなど、2歳G1レースを2勝挙げた馬です。

東京競馬場では東京スポーツ杯2歳ステークスで芝1800mのJRA2歳レコード1分44秒5をマークする圧勝を演じました。今回は初めて挑む芝2400mですが、血統的背景から見ると問題なさそうです。

コントレイルという馬名の由来は英語で「飛行機雲」を意味します。
日本ダービーを単なる通過点として、ロンシャン(凱旋門賞)に向けて美しい飛行機雲を描くことができるのでしょうか?

サリオス(牡3 美浦・堀厩舎 57Kg レーン騎手騎乗)

朝日杯フューチュリティステークスを制し、皐月賞でコントレイルと接戦を演じたサリオスが巻き返しを狙います。

父のハーツクライは自身の日本ダービー(2004年)はキングカメハメハの2着に敗れました。しかし、息子からは2014年の日本ダービーを制したワンアンドオンリーを出しています。母のサロミアはドイツオークス(ディアナ賞・芝2200m)を制した馬で、半姉(父はディープインパクト)のサラキアは一昨年の秋華賞4着、ローズステークス2着の実績を持ちます。

サリオスにとって今回プラスとなる条件のひとつが、「東京コースへの変更」ではないでしょうか。
芝1600m戦ですが、デビュー戦とサウジアラビアロイヤルカップと東京コースは2戦2勝。ハーツクライ産駒はJRAのG1レースで12勝をあげていますが、そのうち東京コースは6勝。東京コースとの相性は抜群です。
サリオス自身の末脚の傾向を見ても、直線の長い東京コースに替わるのはプラスとなりそうです。

馬名の由来は、ローマ神話に登場する戦闘の踊りの発明者。
得意の東京コースでサリオスが躍動し、打倒コントレイルを目指します。

サトノフラッグ(牡3 美浦・国枝厩舎 57Kg 武豊騎手騎乗)

皐月賞ではコントレイルとサリオスと共に「三強」の一角を担っていたサトノフラッグ。
その皐月賞では5着に敗れましたが、武豊騎手との新コンビで、巻き返しを狙います。

父はディープインパクト。
母のバラダセールはアルゼンチンで現役生活を過ごし、日本でいう桜花賞にあたるポーリャ・デ・ポトランカス大賞(ダート1600m)、同じくオークスにあたるセレクシオン大賞(ダート2000m)を勝利しています。
特にセレクシオン大賞は2着に11馬身差をつける圧勝でした。

武豊騎手とのコンビは弥生賞ディープインパクト記念(1着)以来となります。
直前の騎手乗り替わりは日本ダービーで勝てない、というジンクスがありますが、日本ダービー最多勝の5勝をあげている武豊騎手が騎乗するのはジンクスを超えた心強さがあります。
また、武豊騎手が勝てば、増沢末夫氏の48歳7か月6日を抜いて51歳2か月17日と日本ダービー最年長優勝記録の更新となります。

ヴァルコス(牡3 栗東・友道厩舎 57Kg 三浦騎手騎乗)

芝2400mで行われたダービートライアル・青葉賞。
勝ったオーソリティはその後骨折で出走が叶いませんが、2着のヴァルコスが出走します。

父のノヴェリストは2013年の英国G1レース・キングジョージ(芝約2400m)で2分24秒6のレコードタイムを出した馬です。母のランズエッジの競走馬時代は未勝利に終わりました。しかし、母方の祖母ウインドインハーヘアはディープインパクト、ブラックタイドなどの母として知られています。

馬主は元メジャーリーガーの佐々木主浩氏。
これまでヴィルシーナやヴィブロスで牝馬三冠レースに出走してきましたが、牡馬三冠レースに愛馬を送り出すのは今回が初めてです。芝2400mの距離適性は青葉賞の2着、ゆきやなぎ賞(1勝クラス)で1着と、コントレイルやサリオス、サトノフラッグにはない経験を有しているのが魅力です。
馬名はラテン語で「価値のある」を意味します。
父ノヴェリストの、種牡馬としての価値をヴァルコスは高めることができるのでしょうか?

ビターエンダー(牡3 美浦・相沢厩舎 57Kg 津村騎手騎乗)

芝2000mで行われたタービートライアル・プリンシパルステークス。
勝った馬だけに出走権利が付与される厳しい条件のレースを制したのは、皐月賞14着のビターエンダーでした。

父のオルフェーヴルは2011年の牡馬三冠馬です。
種牡馬になってからは今年の大阪杯などG1レース2勝をしたラッキーライラック、皐月賞を制したエポカドーロを送り出しました。母のビタースウィートはJRAで3勝。大井競馬転厩後は重賞の東京シンデレラマイル(ダート1600m)など3勝をあげてきます。また、母の父のAfleet Alexはアメリカ三冠レースのプリークネスステークス、ベルモントステークスなどダートのG1レースを3勝挙げました。

騎乗する津村明秀騎手はこれが日本ダービー初騎乗となります。
東京芝2400mのG1レースに限ると、カレンブーケドールとのコンビで昨年のオークス・ジャパンカップで2着と健闘しています。特に、昨年のオークスでは12番人気のカレンブーケドールに跨り、勝ったラヴズオンリーユーと同タイムでのゴール(着差はクビ差)。
ビターエンダーは先行する馬ですので、レース展開のカギを占う馬になるでしょう。

ワーケア(牡3 美浦・手塚厩舎 57Kg ルメール騎手騎乗)

不気味な存在としてあげられるのは、弥生賞ディープインパクト記念で2着に入ったワーケアの存在です。
ホープフルステークスではコントレイルの3着に敗れましたが、東京コースに戻って巻き返しを狙います。

父はハーツクライ。母のチェリーコレクトは2012年のイタリアオークス、イタリア1000ギニー(日本でいう桜花賞)を制した馬です。母の父のOratorioは馴染みのない種牡馬ですが、大種牡馬デインヒルの産駒で、2005年のエクリプスステークス(英国G1)などG1レースを3勝した馬です。

ホープフルステークではコントレイルから0.5秒差、弥生賞ディープインパクト記念ではサトノフラッグから0.3秒差と実績は証明済みです。上述の通り、父のハーツクライはJRAのG1で12勝をあげていますが、そのうち東京コースで6勝と実績を残しています。
ワーケア自身も東京コースでは2戦2勝。
現在、騎手リーディングで1位のルメール騎手とのコンビも魅力的です。

その他では京都新聞杯を制したディープボンド(牡3 栗東・大久保厩舎 57Kg 和田騎手騎乗)、京都新聞杯2着のマンオブスピリット(牡3 栗東・斉藤崇厩舎 57Kg 北村友騎手騎乗)、皐月賞3着のガロアクリーク(牡3 美浦・上原厩舎 57Kg 川田騎手騎乗)が出走します。

また、毎日杯を制したサトノインプレッサ(牡3 栗東・矢作厩舎 57Kg 坂井騎手騎乗)は、騎乗する坂井瑠星騎手が日本ダービー初騎乗と共に23歳の誕生日を迎えます。誕生日を自らの手で祝えることができるのでしょうか?

なお、日本ダービー当日は無観客での開催となります。
昼休みに行われる日本ダービー騎手紹介イベントではSNSを通じて、出走馬、騎乗ジョッキー、管理調教師、厩舎スタッフなど日本ダービーに関わるすべての人への、投稿者の熱いエールが披露されます。
その様子はYoutubeの「jraofficial」チャンネルでライブにて配信されます。
また、レース直前の国歌斉唱では昨年のラグビーワールドカップの日本対ロシア戦でも国歌斉唱された歌手の平原綾香さんが務めます。こちらは競馬中継内でご覧になれます。

また、全頭紹介はこちらからご覧いただけますので、競馬ファン以外のご友人・ご家族とも「ダービー」をご堪能ください!

あなたにおすすめの記事