阪神ジュベナイルフィリーズってどんなレース?

1949年に、関西所属の3歳(現2歳)馬チャンピオン決定戦として「阪神3歳ステークス」の名称で創設されました。施行距離は当初芝1200mでしたが、1960年に芝1400mに距離延長された後、1962年より芝1600mに変更され、現在に至ります。

1991年より牡馬・牝馬のチャンピオン決定戦を明確にすることを目的として、本競走は牝馬限定戦に変更。あわせて競走名も「阪神3歳牝馬ステークス」に変更され、3歳(現2歳)牝馬チャンピオン決定戦として位置づけられました。

2001年に馬の年齢表記を国際基準に変更(3歳→2歳)したのに伴い、レース名を「阪神ジュベナイルフィリーズ」に変更されました。ジュベナイル(Juvenile)とは、英語で「少年」「少女」という意味です。フィリー(Filly)は牝馬、特に4歳未満の牝馬のことをいい(複数形はフィリーズ Fillies)、この言葉には社交界にデビューする少女(女性)という意味も含まれています。

サラブレッドの毛色について

サラブレッドの毛色は全部で8種類あります。一番メジャーなのは鹿毛(かげ)と言われる毛色で、サラブレッドの毛色の約4割を占めています。代表的な鹿毛の名馬は、ディープインパクトやアーモンドアイなど。

次に多いのは栗毛(くりげ)と言う毛色で、全体的に黄褐色なのは特徴です。代表的なのはオルフェ―ウルやミホノブルボンあたりでしょうか。3番目に多いのは黒鹿毛(くろかげ)と呼ばれる毛色で、こちらは全体的に黒味がかった赤褐色が特徴。ナリタブライアンやエルコンドルパサーなどが黒鹿毛の代表馬です。4番目に多いのが青鹿毛(あおかげ)。全身ほとんど黒色の馬を指します。メジロラモーヌやマンハッタンカフェなどが青鹿毛の代表的な名馬です。

一般的に言う「白い馬」は、大抵が芦毛(あしげ)の事を指します。芦毛は英語で「Gray」と言われている様に、年をとる度に白い毛が多くなります。オグリキャップやクロフネ、ゴールドシップらが代表的な馬でしょう。

さらに、全体的に黒色で季節によって毛の先の色が変わって黒鹿毛や青鹿毛のように見えるのが青毛(あおげ)という馬で、シーザリオやヴィヴロスらが青毛です。黒味がかった黄褐色から黒味の濃いものまでさまざまな毛色をしているのが栃栗毛(とちくりげ)で、マーベラスサンデーやノンコノユメが代表的な栃栗毛の馬です。

さらに生まれながら白い毛色なのは白毛(しろげ)。遺伝子の突然変異で生まれた毛色で、未だに白毛の生まれるメカニズムはまだ分かっていない事が多いのだとか。さらに白毛には首からトモ(後肢の膝から上くらい)にかけてまだら模様がある馬もいます。2020年9月現在ではJRAに登録されているのは僅か8頭しかいません。

今年の見どころ

ソダシがJRA初の白毛馬によるG1レース制覇を達成するのか?

札幌2歳ステークスとアルテミスステークスを制したソダシ(牝2 栗東・須貝厩舎)。勝てばJRA初の白毛馬によるG1レース制覇を達成します。

ソダシの母馬はまだら模様の白馬で人気のあったブチコ。ソダシの祖母には白毛馬のシラユキヒメがいます。

芝1800mのデビュー戦を制し、続く札幌2歳ステークスでは札幌競馬場の芝1800mのレコードタイムをマークし、白毛馬初のJRA芝重賞勝利を制覇したソダシ。続くアルテミスステークスでは好スタートを決めると2番手に付ける競馬を披露しました。直線で抜け出すと、ラスト600mのタイムが33.9秒を披露し、2着のククナに0.3秒(1馬身3/4)差を付けて重賞を連勝しています。

アルテミスステークスの勝ち馬からはリスグラシュー(2016年)、ラッキーライラック(2017年)などG1レースを制した馬がいます。ソダシの名前の由来はサンスクリット語で「純粋、輝き」を意味します。白毛の馬体が躍動し、史上初の「白毛馬によるJRA芝G1レース初制覇」となるのでしょうか?

メイケイエールが無敗で2歳女王に輝くのか?

シラユキヒメの血を持つ馬で阪神ジュベナイルフィリーズに出走する馬はソダシだけではありません。
鹿毛の馬ですが、小倉2歳ステークスとファンタジーステークスを制したメイケイエール(牝2 栗東・武英厩舎)。シラユキヒメのひ孫にあたります。

芝1200m戦のデビュー戦で2着に0.8秒(5馬身)差を付ける圧勝を演じ、続く小倉2歳ステークスではデビュー戦とは違い大雨の中で行われましたが、モントライゼ(後に京王杯2歳ステークスを制覇)に0.2秒(1馬身1/4)差を付ける快勝を見せました。前走のファンタジーステークスでは4番手を追走し、1分20秒1の芝1400mJRAレコードタイムをマークし、重賞連勝を飾りました。

ポイントは気性の難しさ。
デビュー戦から前半から力んで走ってしまう面があり、騎手が必死になだめようとするシーンが続いています。この力んで走る面は200m距離が延長する今回にどう影響するかが大きなポイントになるでしょう。

騎乗する武豊騎手は管理する武英智調教師とは、はとこの関係にあたります。武英智調教師は騎手としてデビューしましたが、目の病気のため騎手を引退し、調教助手を経て調教師になった苦労人です。同じ血を持つソダシの前に立ちはだかる存在として「チーム武」がコンビを組んで挑みます。

新種牡馬モーリスの娘インフィナイトが出走

メイケイエールの父であるミッキーアイルは今年の新種牡馬。ほかにも今年注目の新種牡馬の1頭には、天皇賞・秋などG1レースを6勝したモーリスがあげられます。今のところ重賞勝ちの馬こそありませんが、2歳馬のリーディングサイヤーで勝ち馬頭数が25頭とディープインパクトやキズナを抑えてトップに立っています(11月30日現在)。

そのモーリスの娘からはサウジアラビアロイヤルカップで2着に入ったインフィナイト(牝2 栗東・音無厩舎)が参戦します。

不良馬場で行われたデビュー戦は2番手から直線で抜け出し、ラスト600mのタイムがメンバー中最速の1位の35.0秒を披露し優勝したインフィナイト。道悪競馬の適性の高さをアピールしました。続くサウジアラビアロイヤルカップはデビュー戦以上のタフな馬場で行われましたが、2着と健闘しました。良馬場での経験はないのですが、綺麗なフォームで走る馬なので、良馬場で本領を発揮する馬でしょう。

サトノレイナスが血統の良さでG1レースを制覇するのか?

ソダシ、メイケイエールと無敗の馬が揃いましたが、無敗の馬は他にもいます。
デビュー戦、2戦目のサフラン賞を快勝したディープインパクトの娘サトノレイナス(牝2 美浦・国枝厩舎)は潜在能力からG1レースを制覇する力を持っています。

全兄に今年の弥生賞ディープインパクト記念を制したサトノフラッグがいる良血馬のサトノレイナス。芝1600mのデビュー戦は最後の直線で外に寄れるなど、まだまだ気性面で幼さがありましたが、スケールのある走りを見せました。

続くサフラン賞では一度使ったこともあって、テンションが高い状況の中でレースに臨むことになり、案の定、スタートで出遅れたサトノレイナスでしたが、後方から差し切っての快勝。レースのラスト600mのタイムが35.0秒だったのに対し、サトノレイナスはメンバー中最速の34.0秒をマークしました。

国枝厩舎の牝馬と言えば、先日ジャパンカップで有終の美を飾ったアーモンドアイがいます。ポスト・アーモンドアイを狙える可能性を持っている1頭ですので、レースぶりに注目したい馬です。

ヨカヨカ&ルクシオンの熊本県産サラブレッドがG1レース初出走!

サラブレッドのほとんどが北海道で生まれる中、九州で生まれたサラブレッドもいます。これまで九州産のサラブレッドと言えば、1998年の小倉3歳ステークス(現在の小倉2歳ステークス)を勝ったコウエイロマンや2005年のアイビスサマーダッシュを制したテイエムチュラサンなど、ほとんどは鹿児島県産のサラブレッドです。

その中で、フェニックス賞とひまわり賞(九州産馬限定競走)を制したヨカヨカ(牝2 栗東・谷厩舎)と福島2歳ステークスを制したルクシオン(牝2 栗東・河内厩舎)は熊本県産のサラブレッドです。2頭が出走すれば、熊本県産のサラブレッドでは初のG1レース出走となります。

ヨカヨカとルクシオンの阪神ジュベナイルフィリーズ出走に向け、地元・熊本のテレビ局の番組で特集にするなど注目度が増しています。2020年は新型コロナウイルスの流行と熊本で大規模な水害が発生するなど暗いニュースが続きました。そんな暗いムードを吹き飛ばす走りを期待したいものです。

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