[インタビュー]流鏑馬から芽生えた馬への愛! 桜花のキセキ・星野 菜々さん

馬事文化応援アイドル「桜花のキセキ」。
競馬場でのイベントや競馬メディアなどで見かけた事のある人も少なくないだろう。
乗馬レッスンや流鏑馬、引退馬支援など、その活動は多岐にわたる。乗馬のライセンスを持つメンバー、競馬メディアで調教推奨馬を紹介しているメンバーなど多彩な顔ぶれで、多くの競馬ファンから支持される存在へと上り詰めた。

今回は「桜花のキセキ」初期メンバーであり、流鏑馬の大会でも活躍中の星野菜々さんにお話を伺ってきた。

ブラック企業からアイドルに転身!
そのストイックな人生に驚愕。

快活な笑顔が印象的な星野菜々さん。
2018年、アイドルデビュー。2019年には流鏑馬の新人戦で3位に食い込む活躍を見せた。
『馬事文化応援アイドル』としてこの上ないほど順調な滑り出しをしているように見える。
しかし星野さんは「順風満帆ですね」という言葉に対し、首を横に振った。

「いや、全然そんなことはないですよ! むしろ、デビュー当初は劣等感の塊でした。周りのみんなは競馬に詳しかったりとか、乗馬経験があったりとかで……。私の場合、元々は声優をやっていて、さらに事務所をやめてからは一度普通の社会人も経験しているんです。他のメンバーと比べて競馬と深い関わりのない人生だったので、どうしたものかな、と」

社会人時代にはブラック企業を経験。
転職をしてみようと思って調べているうちに、『桜花のキセキ』のオーディション開催を知った。
「転職サイトを見ていたらかなり脱線してしまいまして、気がついたら応募していました」と、彼女は笑う。

オーディションでは動物好きをアピールして合格したものの、周りのメンバーとの知識・経験と自分を比べ、負い目を感じる日々。自分の長けている部分を作りたいと悩むこともあったのだという。
その理由は、彼女ならではの「ストイックさ」によるものだろう。

「自分に対して厳しいところがあるせいで、余計に負い目を感じていたと思います。自分で自分を追い込みがちというか……『ちょっと具合が悪いくらいの方が、むしろ良いパフォーマンスができる!』って心のどこかで思っているタイプなんです。学生時代には卓球をやっていたんですが、胃腸炎のまま出場した大会で準優勝したりとか……(笑)」

インタビュー中にも「苦しいくらいが好き」「メンバーで1番体調を崩してしまっている(苦笑)」といったセリフが幾度となく飛び出るように、常にストイックな姿勢を続けてきた星野さん。無理を重ねたことで、リハーサル中に熱中症で倒れたこともある。
そんな彼女が出会ったのが、流鏑馬だった。

企画書作成も自力で!
クラファンで勝ち取った流鏑馬との繋がり。

「元々、自分の特色を見つけてなら乗馬がいいなと思っていて。横浜のホースメッセで乗馬用品を購入したりしながら、少しずつ準備をしていました。自分を追い込むために、あえて高い乗馬グローブを買ったり(笑) そのホースメッセで、十和田乗馬倶楽部の上村鮎子さんに出会ったんです。それが、私が流鏑馬をやるきっかけとなりました」

流鏑馬は女性でも楽しめる競技──そう聞いた星野さんは、その日の夜に流鏑馬をやるための資料を作成。翌日には自作の企画書を携えて社長との交渉へ向かっていた。

星野さんの立案した企画は『馬事文化応援アイドル「桜花のキセキ」のメンバー星野菜々が、ゼロから流鏑馬に挑むプロジェクト』。
青森県の十和田乗馬倶楽部にて1ヶ月の合宿を行い、流鏑馬の新人戦へと挑戦する企画だ。

「十和田は距離もあるから帰ってこれないので『行ったからにはやるだろ!』という思いで提案しました。集まった資金は流鏑馬の習得の為のレッスン費用・現地での生活費・流鏑馬衣装制作費として大切に使わせていただきました」

乗馬は未経験・弓道も未経験という状況の中、いきなりの流鏑馬合宿──そんな企画に対して、彼女の熱量もあってか、なんとかギリギリ予算が集まった。そして、未踏の地に、単身で乗り込む。

……改めて書き並べてみるとかなり厳しい条件に感じるが、そこでは持ち前のストイックさが存分に発揮された。負けず嫌いなところも後押しして、日々、乗馬の技術を培ったのだという。

乗馬、流鏑馬を通じて得た「馬への愛」。

星野さんは、最初から馬と上手にコミュニケーションがとれたわけではない。
彼女がが桜花のキセキに入って、はじめて馬を間近で見たのはPV撮影の時。初めて真正面で見る馬の迫力に「大きい」「怖い」という感情が湧き、うまく近寄れなかった。事前の説明で「後ろに立たないように」といった注意事項があったのも、そうした不安を駆り立てたのだろう。
そんな彼女も、乗馬の訓練を積んでいくうちに馬への印象がガラリと変わったという。

「十和田乗馬倶楽部で乗る馬たちは本当にお利口で、とっても可愛いです。私がよく乗せてもらっていた飛(とび)くんという子は、月毛特有の白くて綺麗なたてがみを持っているのに、時々ボロまみれになってることもあって……そういうお茶目な一面にも癒されます(笑) あと、飛くんは流鏑馬のプロですから、上に乗った人の力量に合わせてスピードを合わせてくれたりするんですよ! そんな気遣いに、もう、メロメロです」

──そして迎えた、新人戦。
「応援してくれている皆さんの前で無様な格好はできない」と、プレッシャーに押し潰されそうになった瞬間もあった。
一つの的でもいいから当てたい、みんなの前で落馬はしたくない、ガッカリさせたくない……そういう思いでいっぱいになって、新人戦の前日には涙を流した。

しかし、結果的に新人戦は9人中3位という予定以上の好成績。

「新人戦中も、終わった後も泣きそうになりましたが、スタート位置に戻るときに凛々しく手綱を持って戻らなきゃいけないので、我慢しました。ファンの方々が応援しに来てくれていたのが印象的です!」

予想はムキになりがち!?
大井でATMに走る、競馬アイドル。

そんな星野さんは、競馬にも感情移入をして応援することが多い。

「一口クラブに出資してからは、愛着がすごくなっていて。YGGさんのニーズヘッグという馬なのですが、レースの日はまるで自分の娘の運動会でも見に行っているような気分です(笑) ただ、仕事の日と重なったり、コロナ禍だったりで、なかなか現地観戦できていないのが悔しいですね……」

ちなみに現地観戦した時には「その子を軸に買おうと思っていたのに、当日はドキドキでそんな余裕もなかったです(笑)」のだとか。走り終わるまで緊張しすぎて、思わず吐き気どめを飲んだのだとか。

「予想は、オッズに左右されてしまうのであまり見ないようにしています! 夏競馬が一番得意で、小倉2歳Sで250万円馬券を的中させたこともあるんです。夏、春、秋、冬の順で得意ですね!」

好きな地方競馬場は、大井競馬場。
初めて現金で万馬券を払い戻したりと、馬券の相性が良いのだそうだ。
ただ、夢中になる性格は馬券でも健在(?)で、当たらないとムキになってしまうのだとか。

「大井は帝王賞と東京大賞典の日が一番気分的にも盛り上がりますね! その日は1日中やってます。電波が途中から悪くなって途中から現金になったり、混んでいるなかATMに走ったりするのも楽しいです(笑)」

語り尽くせぬ「飛(とび)くん愛」!
数々の自作アイテムも。

上述した通り、星野さんの「飛くん愛」はかなりのもの。
星野さんは飛くんのために無口を買って、自分で刺繍をつけたという。
さらには飛くんをモチーフにしたピアスをオーダーメイドで注文したりiPhoneケースを自作したりと、ぞっこんなご様子。

昨夏には、飛くんを意識して髪を染めた。

もちろんイメージしたのは、飛くんの毛色だ。

「2020年にリース契約を結んだんですが、その理由も『飛くんを独占したかったから』です(笑) いろんな馬に乗るよりも練習になるらしいですし。大会という大会にずっと出続けようと思っていたんですが、その矢先にコロナ禍で……残念でした」

そんな彼女のスマートフォンには、飛くんの写真が何百枚も保存されている。

予想に、アイドル活動に、流鏑馬に──。
多方面に活躍する星野さんの今後から、目が離せない。

写真:三木俊幸、星野菜々(桜花のキセキ)

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