
キング姐さんが2025年の夏競馬に参戦する。7月19日の函館開催から登場し、翌日には9番人気のエイシンディードで函館2歳ステークスを制覇した。今年の夏競馬を盛り上げるであろう、楽しみなR・キング騎手の来日。今回の騎乗期間は8月18日までの1か月で、札幌記念、中京記念が行われる8月3週までの騎乗予定となっている。

R・キング騎手は2023年のワールドオールスタージョッキーズで初来日した。第1戦で初勝利を挙げると、トータル2位の成績を収めて注目される。そして昨年1月に短期免許を取得し、初めて冬シーズンに参戦した。1月6日から3月3日までの2か月で、騎乗数139戦16勝、連対率0.201、複勝率0・324の好成績をマークする。騎乗期間中のアメリカジョッキーCでは、チェックネイトに騎乗して初重賞制覇を成し遂げ、外国人女性騎手として初めてのJRA平地重賞初制覇を達成した。
短期免許取得2シーズン目となる今年、騎乗開始初日のスポニチ賞京都金杯(中京競馬場で開催)で、6番人気のサクラトゥジュールを勝利に導く。初の中京競馬場での騎乗、58キロのトップハンデを克服したR・キング騎手は、新年早々から一躍注目を浴びる存在となり、「キング姐さん」の愛称が浸透した。
R・キング騎手の人気を不動のものにしたのは、今年のフェブラリーステークスだろう。2番人気の5歳牡馬、コスタノヴァに騎乗したR・キング騎手は、完璧な騎乗で日本のGⅠを初制覇した。ゆっくり目のスタートから徐々にポジションを上げ、直線で外から抜け出すコスタノヴァ。1番人気ミッキーファイトの大外からの追い込みと、最内から伸びてくるサンライズジパングを抑え込み、先頭でゴール板を駆け抜けた。
外国人騎手が中央競馬のGⅠを制覇したのは過去に20人。R・キング騎手は21人目のGⅠ制覇した外国人騎手となり、同時に女性ジョッキー初のJRA平地GⅠ制覇となった。

検量室に戻ってきて、コスタノヴァから下馬した時、それまで緊張した表情のR・キング騎手から満面の笑みがこぼれた。パドックでは決して見せることのない、大仕事を終えた勝負師の笑顔が印象的だった。

「キング姐さん」推しは、私も含めて結構多いはずだ。冬枯れの競馬場で、寒そうな顔を全く見せず、姿勢を正して騎乗する姿を見ていると、こちらも寒いとは言えなくなる。何よりもR・キング騎手の魅力は、ある程度人気を背負った馬を馬券圏内に持ってきてくれるケースが多いこと。身も心も寒くなっていく冬の午後のパドックで、周回するR・キング騎手に「頼むで~」と懇願するキング姐さんの信望者たち。「5番人気以内にR・キング騎乗の馬がいると必ず押さえておく」という鉄則を胸にキング絡み馬券を買うのは、決して私だけではないだろう。もはや「キング姐さん頼み」は、冬の中山・府中での風物詩として、徐々に定着してきているように思う。

今週は猛暑競馬の本場とも言うべき夏の新潟競馬場で騎乗するR・キング騎手。
「冬の女」のイメージが強いR・キング騎手が、夏競馬でどんな騎乗を見せてくれるのだろうか。日本の湿気たっぷりの暑さの中、涼しい顔で後方から差してくるR・キング騎手のカッコ良さが目に浮かぶ。いつもの夏とはひと味違う「夏のキング姐さん」の活躍が、猛暑の夏競馬を更に熱くするはずである。
今年の夏競馬の馬券検討は、迷った時の“キング絡み馬券”があるので、案外簡単(?)かもしれない。
Photo by I.Natsume