フラワーカップは、3歳牝馬限定の中距離重賞。桜花賞のトライアルレースではないものの、2000年代は、ここを勝利した後に、クラシックやGⅠを勝利する馬が続出した。

近年は、上位入着馬が古馬になって活躍している点も特徴である。2018年の3着馬ノームコアは古馬になってGⅠを2勝。2019年の1・3着馬、コントラチェックとランブリングアレーは、ともに今月に入って重賞を制している。

今年の出走頭数はフルゲートの16頭で、単勝10倍を切る馬が7頭もいる大混戦。その中で、1番人気に推されたのはユーバーレーベンだった。唯一のGⅠ出走経験馬で、その阪神ジュベナイルフィリーズでは3着に大健闘。また、3走前の札幌2歳ステークスでも2着と好走していて、実績面では頭一つリードしていた。

2番人気となったのはエンスージアズム。こちらは、3頭しかいない2勝馬の内の1頭。今回は、昨年末に1勝クラスを勝利して以来3ヶ月ぶりのレースとなった。父ディープインパクトに母の父ストームキャットという、黄金配合を持つ点も注目を集めた。

3番人気に続いたのは、こちらもディープインパクト産駒のイズンシーラブリー。未勝利戦勝ちから果敢に挑んだ前走のGⅢクイーンカップは、勝ち馬から0秒2差の5着に健闘。重賞での入着実績は今回のメンバーでは上位であった。

以下、1勝クラスのデイジー賞勝利から中1週で出走のルース、GⅢのフェアリーステークス2着からここに挑んできたホウオウイクセル、昨夏の新馬戦で衝撃的な勝ち方をしたリフレイム、前走のフェアリーステークスでは10着に敗れたものの、2番人気に推されていたクールキャットの順で、人気は続いた。

レース概況

ゲートが開くと、ルースとユーバーレーベンが、ややあおるようなスタートとなってしまう。

外枠から、手綱を押して果敢に逃げたのはアビッグチア。タウゼントシェーンが2番手に続き、ホウオウイクセルとイズンシーラブリーが3番手を追走した。

しかし、先行争いに決着がつくとそこから流れは一気に遅くなり、前半の600mは37秒4というスローペースに。

他の上位人気馬では、エンスージアズムがちょうど中団8番手、ユーバーレーベンが11番手となり、クールキャットとリフレイムが後ろから4番手、出遅れたルースは最後方からのレースとなった。

1000m通過も1分1秒8と、依然ペースは上がらずスローのまま。

そこから、3コーナーに差し掛かるあたりでややペースが上がり、後続にいた人気馬達が上昇を開始。特に、ユーバーレーベンとリフレイムは、4コーナーで一気に先行グループの直後まで取り付き、最後の直線勝負を迎えた。

直線に向き、逃げるアビッグチアを交わして先頭に立ったのは、内々でじっと脚を溜めていたホウオウイクセル。そこに、イズンシーラブリーとエンスージアズムが襲いかかり、さらに外からユーバーレーベンが追い込んできた。

しかし、坂を駆け上がってもホウオウイクセルの末脚は衰えず、リードは1馬身半。逆に、焦点は2番手争いとなり、イズンシーラブリーがやや遅れ、エンスージアズムとユーバーレーベンがゴール前で並んだものの、先頭には届かず。

結局、1馬身4分の1差をつけてホウオウイクセルが1着でゴールイン。2着にエンスージアズムが入り、ユーバーレーベンはハナ差およばず3着となった。

良馬場の勝ちタイムは1分49秒2。鞍上の丸田騎手は、2018年の七夕賞以来、3年ぶりの重賞制覇。また、管理する高柳瑞樹調教師は、開業12年目で悲願の初重賞制覇となった。

各馬短評

1着 ホウオウイクセル

好スタートから楽に前につけ、道中は全く無駄な動きをせず、3番手の内で脚を溜めることに専念。直線で早めに抜け出すと、危なげなく押し切った。

父の母エアグルーヴと、母の母メジロドーベルは、ともにオークス他、GⅠを複数制した歴史的名牝で、1998年のエリザベス女王杯でも対決している(結果は、メジロドーベルが勝利)。

この馬にも、クラシック制覇の期待がかかるが、適性としては、桜花賞よりもやはりオークスではないだろうか。

2着 エンスージアズム

前走1勝クラスを勝利したが、なんと5頭立てのレースだった。その前走は、スローペースからの瞬発力勝負。今回は、出走頭数も3倍超に増えたため、いかにも人気で危ないパターンに思えたが、しぶとく末脚を伸ばして2着を確保。

ただ、本来得意とするのは、前走の阪神外回りのような直線が長いコースのはずで、今回、小回りでも結果を出したことは、実力の高さの証明なのかもしれない。

3着 ユーバーレーベン

最後のハナ差を考えると、スタートでの出遅れがあまりにも痛かった。阪神ジュベナイルフィリーズでの3着があるものの、こちらも、桜花賞よりはオークスでさらに良さが出そう。

賞金加算ができなかったため、次走はフローラステークスで権利を取って、オークスというローテーションになるだろうか。出走できれば、両レースとも注目したい。

レース総評

今年の牝馬クラシック戦線は、近年まれに見る大混戦。

もちろん、桜花賞で実力差がはっきりする可能性もあるが、その序列が、果たして800m延長となるオークスでもそのまま変わらないだろうか。

今回2着となったエンスージアズムは、距離だけでいえば、桜花賞やNHKマイルカップだけでなく、オークスでも対応は可能とは思うが、1,3着馬に関しては、マイル戦で結果を残しているものの、どちらかといえば2000m以上のレースでさらに良さが出そうなタイプである。

気の早い話となってしまうが、オークスではこの2頭に加えて、桜花賞当日に行われる忘れな草賞を勝利した馬と、フローラステークス組、さらに若駒ステークスを勝ったウインアグライアなどを、穴候補に挙げておきたい。

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