サマーマイルシリーズのレースの一つに指定されている関屋記念は、新たに米子ステークスがシリーズに加わったことにより、今年からシリーズ第3戦目で施行されることとなった。

このレースの特徴の一つとして、例年多頭数で争われるということがあげられる。だからこそ、大混戦・波乱の決着というイメージがあるが、実は過去10年で馬券圏内に入った二桁人気馬は3着が1頭だけ。意外にも驚くような大波乱は起こっておらず、どちらかと言えば堅く収まってきた。

ただ、今年は夏競馬が例年とは変則的な日程で組まれていることもあってか、シリーズ第2戦の中京記念が大波乱の決着になったこともあり、関屋記念が堅く収まるのか波乱となるのか注目された。

単勝オッズで10倍を切ったのは5頭だったが、1番人気馬のオッズは4倍を上回り、やはり混戦模様といえた。

その1番人気に推されたのはアンドラステだった。前走のエプソムカップが重賞初挑戦の舞台となったが、前が残りやすい極悪馬場を上がり最速で4着と見所たっぷりの惜敗。しかも、そこまでの6戦を4勝、2着3着が1回ずつと、戦歴にほぼ傷がない点も1番人気の要因となった。

対して、オッズ5.5倍の2番人気に推されたのはプリモシーンとグルーヴィットの2頭。

プリモシーンは、前走のGⅠヴィクトリアマイルこそ2番人気に推されながら8着に終わっていたが、2018年のこのレースの覇者で今回2度目の優勝が期待された。

一方のグルーヴィットは、昨年の中京記念を制した後、4戦連続で掲示板を外していたが、前走の京王杯スプリングカップで久々に3着と好走して復調気配を見せていた。

以下、サトノアーサー、クリノガウディーという人気順で続いた。

レース概況

ゲートが開き、サトノアーサーが少し出遅れたものの、ほぼ横一線のきれいなスタートとなった。予想通りに大外枠からトロワゼトワルが逃げ、その後をミラアイトーンとクリノガウディーが追走して3コーナーを回る。

他の人気馬では、グルーヴィットが5番手、アンドラステはほぼ真ん中の8番手、プリモシーンは中団やや後ろを追走。道中、サトノアーサーはスタートの出遅れを挽回しようと動くことはなく、後ろから2頭目のインぴったりを追走していた。

他馬に絡まれることなく、前半4ハロンを46秒3の平均ペースで軽快に逃げていたトロワゼトワルが、残り800mの標識から少しずつ後続との差を広げはじめ、直線に入った時には2番手におよそ2馬身の差をつける。

残り400mを切って、2番手集団にいたミラアイトーン、アンドラステ、メイショウグロッケが差を詰め始める一方で、先行していたクリノガウディーは早々に後退。さらにはグルーヴィットもなかなか先頭を捕らえきれず、プリモシーンも後方から伸びてきそうな気配がない。

残り100mを切っても、依然としてトロワゼトワルのリードは2馬身ほどありセーフティーリードかと思われたが、馬場の中央からサトノアーサーが1頭だけ違う勢いで追込みをかける。そして残り30mほどでトロワゼトワルを捕らえると、ゴールでは逆に1馬身4分の1差をつけて、2年ぶりの勝利を重賞制覇で飾った。

トロワゼトワルが2着にそのまま粘り込み、1番人気のアンドラステは、今回も安定した取り口を見せたものの3着と惜敗した。

各馬短評

1着 サトノアーサー

スタートでほんの少し出遅れたものの、後方2番手のインぴったりをロスなく追走。直線では一瞬前が詰まりそうになったが、戸崎騎手の巧みな手綱さばきに導かれ、メンバー唯一の上がり3ハロン33秒台の末脚を繰り出して差しきった。

今回2年ぶりの勝利となったが、その時も戸崎騎手とのコンビ。その戸崎騎手は、2019年の落馬事故から5月に復帰して以降、初の重賞勝利となった。

2着 トロワゼトワル

前走は明らかな外差し馬場となった上に、2番手の馬に絡まれ大敗を喫していた。1600mのJRAレコードを保持している馬で、高速決着に強いというイメージがあったが、今回のように他馬に絡まれずに気分良く逃げられれば、多少馬場が悪くても好走できるということを十分に証明した。

展開を予想するのはなかなか難しく、その通りにならないのが常だが、開幕週で明らかに先行馬有利な馬場などでは、今後も好走する機会はあるのではないだろうか。

3着 アンドラステ

内枠に入った馬として唯一好走した結果を見れば、やはり実力があるのは疑いようのないところと言える。ここまで6つの競馬場を走りいずれも好走しているが、本質的には中京や阪神外回りのように直線が長く坂のある競馬場に最も適性があるように思う。

総評

勝ちタイムの1分33秒1は、新潟競馬場が左回りに改修されて以後、関屋記念の優勝タイムとしては最も遅いタイム。

しかし今年の新潟芝は例年より時計がかかっていたため、レースレベルが決して低かったわけではないように思う。

勝ったサトノアーサーは、前走のような不良馬場までいくとさすがに厳しいが、ノーザンファーム生産のディープインパクト産駒には珍しく、パンパンの良馬場よりは少し時計のかかる馬場で度々好走していたため、今回は馬場適性がちょうどマッチしたようだった。

また、関屋記念は外枠有利のレースで、2004年以降7枠か8枠の馬が少なくとも1頭は連対しているが、今年も8枠同士での決着となった。この傾向は、来年以降も覚えておきたい。

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