似てる"誰か"を愛せるから。シルバーステートとサングレーザー。

同じ父、勝負服、鞍上。そして同じ毛色、同じくらいの体重。
ここまで一致すると、よほどの有識者でない限りゼッケンを見るまでその馬の名前を特定することは困難なのではないだろうか。
サングレーザーが紺のゼッケンをまとい、福永騎手を乗せているのを見たとき──私は、志半ばでターフを去った"あの馬"を思い出させた。


ディープインパクト産駒、黒地赤襷赤一本袖のG1レーシング、福永祐一騎手騎乗。
青鹿毛、480kgくらい、黒メンコ。2013年生まれのシルバーステートである。

デビュー前から「ダービーを狙える」と福永騎手が発言し、大きな期待が集まっていた。
新馬戦こそ、のちのGI馬アドマイヤリードの急追にアタマ差敗れたが、未勝利戦では5馬身差の大楽勝。
続く紫菊賞でも、軽く追われただけで伸びを見せる余裕の勝利を見せる。
「とうとう福永騎手がダービージョッキーとなるのではないか」という声も、早くから聞こえたほどだった。

しかし、シルバーステートの敵は自分自身にあった。

左前脚の屈腱炎を発症し、1年以上の休養を強いられた。
1年7か月後の復帰戦も1番人気の支持ながら、3馬身離して勝利。続く垂水ステークスも強く追わずに勝利。5戦4勝で条件戦を突破し、オープン昇格した。

しかし、いざ重賞タイトル・毎日王冠というときに、右前脚の屈腱炎を発症。2か月後、引退が決定した。
十分なパフォーマンスを見ることなく、白金・紺はおろか、赤・緑のゼッケンを着用することなくターフを去っていった。

後輩の青鹿毛

ディープインパクト産駒、黒地赤襷赤一本袖のG1レーシング、福永祐一騎手騎乗。
青鹿毛、480kgくらい、黒メンコ。2014年生まれのサングレーザーである。

1歳年上のシルバーステートが2回目の屈腱炎を発症し、しばらくその走りを見ることができなくなったとき、
サングレーザーは500万円以下から3連勝でオープンクラスまで出世を遂げていた。

さらに、スワンステークスにクリスチャン・デムーロ騎手とのコンビで、ヒルノデイバローをアタマ差差し切り勝利。シルバーステートの届かなかった、豪華な優勝レイ、重賞タイトルを獲得した。

シルバーステートが正式に引退した11月下旬、紺のゼッケンを纏って、福永騎手とともにマイルチャンピオンシップに出走し、3歳馬ながら3着に健闘していた。

マイラーズカップをレコード勝ち

古馬となったサングレーザー。
春の大目標はマイルGI、安田記念であった。

そのため、前哨戦のマイラーズカップに出走。
GIタイトルにあと一歩のエアスピネル、賞金加算途上のモズアスコット、降級から再び這い上がり連勝中のロジクライに上位人気を譲り、4番人気という評価だった。

ばらけたスタートで、サングレーザーは後方からとなった。
モズアスコットや、ロジクライが前方に、エアスピネルは中団に控える。

ロジクライが直線早めに先頭に立ち逃げ切りを図る中、モズアスコットがそれを制して、単独先頭に。

サングレーザーは後方内から、直線で大外に出し、エアスピネルの直後から追撃を開始。
エアスピネルに勝る末脚を見せて2番手に浮上すると、福永騎手の追いに応えてもう一伸びをみせた。
逃げ粘っていたモズアスコットを捕らえて、先頭でゴール板を通過。

大外一気で走破した1600メートルは、1分31秒4。

コースレコードとなった。

しかし本番の安田記念では、前走下したモズアスコットの後塵を拝す5着に敗退する。

GIに最も近づいた秋の天皇賞

3歳から4歳春にかけてマイル路線を歩んだサングレーザー。

札幌記念では、シルバーステートと同世代のダービー馬マカヒキを下してGII2勝目。

2000メートルでもGI相当の実力があることを裏付けていた。

そして、GI馬7頭という豪華メンバーで行われた平成最後の天皇賞。

鞍上にはジョアン・モレイラ騎手が騎乗していた。
福永騎手は、ダービー・神戸新聞杯と連勝したワグネリアンを選ぶも、疲れを理由に回避。福永騎手はヴィブロスに騎乗することとなった。

キセキが逃げ、馬群はスローペースに、瞬発力を要する戦いにとなった。
大外から追い込み、上がり3ハロン1位の末脚を見せたものの、先に抜け出したレイデオロを捉えることができず、1馬身4分の1差の2着。

その後、福永騎手はサングレーザーの背中に戻ることはなかった。

それから、2年後。
勝負服こそ違えど、ディープインパクト産駒、青鹿毛、460kg、福永騎手。
コントレイルは、そうした先輩たちの無念を晴らすように勝ちまくる。
そして、無敗の牡馬三冠を達成するのであった。


サングレーザーはGII3勝で、GIは未勝利。いわゆる「GII大将」と言えるような成績で、競走馬を引退した。

しかしその実力は、折り紙つき。

種牡馬となったサングレーザーは、GIタイトルの夢を産駒に受け継いでゆく。
2021年4月現在、サングレーザーは優駿スタリオンステーションで、先に種牡馬となったシルバーステートとともに繋養されている。

写真:Horse Memorys、かぼす、緒方きしん

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