スプリント路線は3月高松宮記念以降、国内に大きなレースがなく、自然と1400~1600mという距離延長への挑戦に進む馬が多い。そういったレース間隔の影響からか、6月という施行時期に関わらず函館スプリントSには強豪馬の出走が多い。
高松宮記念以来の出走というと、02年ショウナンカンプ(高松宮記念1着)、08年キンシャサノキセキ(高松宮記念2着)、10年ビービーガルダン(高松宮記念2着)、12年ロードカナロア(高松宮記念3着)、13年ドリームバレンチノ(高松宮記念2着)、17年セイウンコウセイ(高松宮記念1着)、18年ナックビーナス(高松宮記念3着)。そのうち函館スプリントSを勝ったのは08年キンシャサノキセキのみだから、夏競馬はやはり難しい。
今年は高松宮記念4位入線から繰り上がり3着となったダイアトニックが出走。
武豊騎手騎乗も手伝い1番人気に支持された。2番人気はドバイ挑戦も中止となったライトオンキュー、以下、函館巧者で連闘のジョーマンデリン、マイラーズC除外で阪急杯以来となるフィアーノロマーノと続いた。

レース概況

スタートに全精神を集中させねばならないスプリント戦、見事にそれを決めたのがダイアトニック。

武豊騎手は好発を利して右手綱を巧みに操作、もっとも理想的なインコースのポケットを目指す。
さらに好発を切ったのが大外枠のダイメイフジ。不利な枠順でも逃げ戦法に迷いなし、多少強引ながらハナを目指す。
ダイアトニックはダイメイフジが来ると、抵抗する素振りを見せつつも進路を譲り、インコースのポケットを確保。外からグランドボヌールが3番手、外からメイショウショウブが続き、ライトオンキュー、その内にジョーマンデリンが固まる。フィアーノロマーノが中団、その直後のインにエイティーンガール、シヴァージが後方集団の外を追走する。

函館1200mは前半から3角にかけてのぼり坂を走る見た目以上にタフなレイアウト。
ダイメイフジが作るペース前半600m33秒4は絶好の馬場を考えれば早くはない。
この時点でインのポケットにいたダイアトニックには理想的な流れとなった。

最後の直線、コーナリングでダイメイフジの外に持ち出されたダイアトニックは一気にスパート、ダイメイフジを捕らえ、後続を封じてみせた。
早くはない流れを作ったダイメイフジが2着に粘り、3着はインコースでダイアトニックの背後を進み、その進路を追ってきたジョーマンデリンが入った。
勝ち時計1分7秒5(良)。

各馬短評

1着ダイアトニック(1番人気)

昨秋はスミヨン騎手が大外一気という新たな形でスワンSを勝ったものの、春はどうにもリズムが悪かった。
進路を取る際に不利を与えてしまった阪急杯、反対に高松宮記念では最後の直線、その勝負所で不利を受け、大ブレーキ。
昨秋示した能力をどうにも全開できないレースが続いた。その乱れたリズムを完璧に修正してみせたのが武豊騎手である。

好発からインコースのポケット、最後は少し外に出して逃げ馬を交わすというセンスの塊のようなスマートな競馬でエスコートした。
リズム感あふれる競馬で復活できたダイアトニック、いよいよ秋は大きな仕事をする予感さえある。

2着ダイメイフジ(10番人気)

今年はダート路線に矛先を変え、春の中京名鉄杯(ダ1400m)では突発的な逃げで後続に影をも踏ませぬ圧勝劇。
その後は逃げても結果が出ず、芝に戻ったここで一変した。とにかく揉まれたくない馬で、大外枠から強引にでもハナまで行ったことで気の悪さを出さず、最後まで走った。
つかみどころがない馬で、いつ走るのかわからないところがあるものの、揉まれない競馬であればまだまだ走れそうだ。

3着ジョーマンデリン(3番人気)

4勝中3勝が函館という、コース巧者。
前走は開幕週の3勝クラスUHB杯。滞在を利しての連闘策、格上がり緒戦も結果を出した。
コース巧者らしく道中はダイアトニックと同じくインの好位にとりつき、ダイアトニックの進路をなぞるように伸びてきた。残念ながら今年の函館の芝1200m、オープンというレースはないが、まだ4歳馬であり、来年も忘れないようにしたい。

総評

高松宮記念3着以内でこのレースを勝ったのは、08年キンシャサノキセキ以来だった。
だが高松宮記念からここに出走する馬の成績は悪くなく、高松宮記念4着以下からは勝ち馬がよく出る。ダイアトニックは3着も入線は4位。これは高松宮記念4着以下ともとれた。

1番人気の勝利は11年カレンチャン以来9年ぶり。
前述のように強豪馬がなかなか勝てないレースながら、ダイアトニックは結果を出した。
ちなみに11年カレンチャンはその後キーンランドCを勝ち、スプリンターズS優勝まで駆け上がった。
ダイアトニックも同じように元来備えていたリズム感を取り戻した勢いそのままにという可能性は高い。

勝ち時計1分7秒5は18年セイウンコウセイと同レベル。そのセイウンコウセイは、高松宮記念馬である。

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