[地方レース回顧]若葉、雨にも負けず~2021年・関東オークス~

南関東牝馬三冠競争の最終戦、関東オークス。
川崎競馬場2100mで行われるレースです。

浦和桜花賞、東京プリンセス賞は地方所属馬同士で争いますが、関東オークスはJRAの牝馬も参戦する交流重賞なので、このレースを勝って三冠馬になるのは大変なことです。実際に、これまで南関東牝馬三冠を制したのは 2006年のチャームアスリープただ1頭のみで、昨年挑戦したアクアリーブルも関東オークスで敗れてしまいました。

今年の南関牝馬クラシックでは、二冠を達成し、三冠を狙うケラススヴィアが「今年こそ牝馬三冠達成を果たすのか?」と、注目されていました。名前の由来は「桜の道」。その名の通り春の浦和桜花賞を勝ち、前走の東京プリンセス賞では後続を7馬身突き放しました。ここまで7戦6勝2着1回と、地方所属馬の中ではナンバーワンの成績での参戦。桜の花は若葉に変わり、生き生きとした状態で三冠に挑戦します。

JRAからは兵庫チャンピオンシップ3着で牡馬相手に3着と健闘したランスオブアース、鳳雛Sを勝利して中央勢では唯一の3勝馬として挑むウェルドーン、新馬戦と1勝クラスを芝で勝ち上がった後ダートに戦場を移したリフレイム、4月に1勝クラスを勝って重賞初挑戦のベルヴォーグの4頭が参戦しました。

地方勢は南関東の他に高知競馬からサンシェリダン、金沢競馬からネイバーアイランドが挑戦し、12頭立てのレースとなりました。

レース概況

ケラススヴィアがいつも通りに飛び出しますが、ウワサノシブコが鈴をつけに行きます。
3番手にレディブラウン、4番手にディアリッキーと、南関牝馬戦線で戦った馬たちがケラススヴィアを積極的に追いかけます。

外から引っかかりながらウェルドーンが先行集団にとりつき、その後ろにリフレイム、ベルヴォーグが控えます。ランスオブアースとグロリオーソは鞍上に抑えられて後方待機、その後ろにサンシェリダン、ネイバーアイランドが大きく離れて殿から前を追いかける展開となりました。

ケラススヴィアが軽快に逃げて向こう正面に向かい、隊列は大きく崩れることなく向こう正面に入ります。
2番手でマークしていたウワサノシブコが早々についていけなくなり、ウェルドーンが代わって2番手に上がります。レディブラウンやディアリッキーら南関勢が徐々についていけず脱落し、後方からランスオブアースが手ごたえを残して追い出し始めます。ベルヴォーグは、早めに鞭も入っていました。

しかし、3コーナーでは既に大方の馬たちを振り切ったケラススヴィアと、最後に残ったウェルドーンの一騎打ちの様相となります。直線半ばまでケラススヴィアが懸命に粘りますが、最後は脚が止まってしまい、ウェルドーンが直線で差し切り勝ちをおさめました。

ランスオブアースも後方から長く脚を使ってきましたがコーナーまでの差を埋められず3着まででした。
4着も後方待機を選択したグロリオーソ、最速の末脚でばてた馬たちを交わしてネイバーアイランドが大健闘の5着入線でした。

各馬短評

1着 ウェルドーン

父ヘニーヒューズは中央ダート路線の活躍馬を数多く輩出しています。
地方でも今年の東京ダービーを勝ったアランバローズがいますが、ウェルドーンとアランバローズはヘニーヒューズ産駒であることだけでなく、母系にサンデーサイレンスとダイナサッシュ、ディクタスを持つ共通点があります。

武豊騎手が勝利インタビューの際に「1周目のゴール板でレースを辞めようとした」と話しているように、気性の難しさはあるようですが、むしろ気合が乗り過ぎなかったことで距離に対応できたのではないでしょうか。
中央で牡馬相手のオープン戦も勝ち上がっている力はある馬なので、今後の牝馬交流重賞路線の主役候補になることでしょう。

2着 ケラススヴィア

南関の女王ケラススヴィアは残り100m付近までウェルドーン以外の馬たちを完封して見せました。
父サウスヴィグラスは地方競馬に活躍馬を数多く送り出した名種牡馬ですが、自身と同じスピードタイプのスプリンターが多く、中距離以上は活躍馬がぐっと減ります。

血統の適性から離れる距離2100mの関東オークスで自らレースメイクをしての2着は負けて強しの内容で、この馬の強さは存分に発揮されたはずです。

夏休みを挟んで、同じ距離のロジータ記念に挑むようなので、しっかり英気を養って再度強い逃げの走りを見せてほしいですね。

3着 ランスオブアース

ゲートで出負けしてしまい、後方からレースを運ぶことになりました。
リカバリーのために促したところ、1周目の3コーナー入りの前に少し掛かってしまいました。外にリフレイム、内にグロリオーソをおいてなだめていましたが、落ち着くまでに半周かかってしまい、その分で最後は浅くなってしまった印象です。

しかし、前にいた馬たちが勝ち負けを競った2頭のペースについて行けなかったことを考えれば、ロスがありながらも最後まで伸びて3着に来た実力は評価するべきでしょう。
自分のレースが出来れば距離は問題なさそうなので、中央のダート中距離戦で巻き返したいところです。

4着 グロリオーソ

東京プリンセス賞で8着に敗れた後、水沢競馬場1600m戦の留守杯日高賞で0.2秒差3着まで巻き返しての参戦でした。ここまでの好走距離は1600mまででしたので、関東オークスは距離が不安視されて8番人気でした。

矢野騎手はスタート後、促さずに後方からの競馬を選択しており、結果最内をロスなく回ることができました。
最後の直線でばてた馬たちを交わして着をあげることができましたが、ランスオブアースと同様に序盤で行きたがっていたところを見ると、好走実績のあるマイルまでの距離のほうがより結果が伴うのではないでしょうか。

5着 ネイバーアイランド

関東オークスに参戦するまでの主な勝鞍は門別での未勝利戦のみ。前走石川ダービーでは勝馬から4.5秒離された8着敗戦で、序盤戦はレースについていけない様子でした。

普通は後方のまま終わってしまうのですが、ケラススヴィアを追いかけて南関東勢が先行策を取った結果、ケラススヴィアに返り討ちにされてしまったため、最後方で残していた末脚を発揮し5着入線まで押し上げることが出来ました。欲を言えば、序盤の位置取りを埋めれば4着も狙えたかもしれません。

ダートの追い込み脚質ゆえに展開にかなり左右されてしまいますが、勝ち負けに加われなくとも入着賞金を稼げたのは大きな収穫でしょう。ケラススヴィアが参戦するレースに挑めば、再びチャンスが巡ってくるかもしれませんね。

レース総評

ケラススヴィアが三冠牝馬を狙ってのレースでしたが、阻止するべく浦和桜花賞や東京プリンセス賞で争った各馬が早めに勝負に行ったことで、締まったレースになりました。

その結果2着に敗れはしましたが、3着のランスオブアースを4馬身、4着グロリオーソ以下を大差で突き放してのものなので、より一層ケラススヴィアの強さを見ることが出来ました。

南関東所属の馬でも中央の馬に真っ向から立ち向かえる実力馬が今年も現れたことで、秋以降の交流重賞戦線も一層盛り上げることでしょう。帝王賞やジャパンダートダービーでも、強い地方馬の活躍を見たいですね。

写真:三木俊幸

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