[重賞回顧]7頭横一線のゴール前を制したのは、名門が大切にする名牝系の出身馬~2021年・小倉2歳ステークス~

夏のローカルで行われる2歳重賞を締めくくり、小倉競馬の1年の掉尾を飾る小倉2歳ステークス。
2016年の勝ち馬レーヌミノルは、後に桜花賞を制するなど活躍し、2020年の勝ち馬メイケイエールも、ここからさらに重賞を2勝した。

出走馬は、昨年と同じ10頭立てと落ち着いたものの、6頭が単勝10倍を切る混戦模様。
その中で、1番人気に推されたのはショウナンマッハだった。

2ヶ月前、今回と同じ小倉芝1200mの新馬戦でデビューし、2着に3馬身差をつける完勝。父ショウナンカンプ、母の父ダイワメジャーとも、小倉芝1200mでは産駒がよく走っており、前走の勝ちっぷりの良さからも注目を集めた。

2番人気に推されたのは、ダイワメジャー産駒のインプロバイザー。6月中京の新馬戦こそ2着に敗れたものの、このコースで行なわれた未勝利戦をきっちり勝ち上がって初勝利を挙げた。母は、北九州記念など重賞を2勝したリトルゲルダで、血統面でも大きな注目を集めていた。

3番人気に続いたのは、こちらも小倉芝1200mの新馬戦を制し、ここに臨んできたスリーパーダ。父は、メイケイエールと同じミッキーアイルで、半姉にオークス馬のシンハライトがいるという良血。ノーザンファーム生産で、福永騎手が継続騎乗という点も、人気を集める要因となった。

4番人気は、同じミッキーアイル産駒のナムラクレア。このレースの出走馬としては珍しく、デビュー戦は新潟の1600mだった。そこで3着に敗れたものの、格上挑戦で出走したフェニックス賞で初勝利。同じコースのオープンを勝利していることもあり、注目を集める存在となっていた。

以下、デュガ、ソリッドグロウの順で人気は続き、レースはスタートの時を迎えた。

レース概況

ゲートが開くと、ソリッドグロウがやや内に切れ込みながらのスタート。その影響を受けたシュンメキラリが、最後方からの競馬を余儀なくされた。

ショウナンマッハとデュガが先手を争うも、デュガがさっと引いてあっさりと決着。3番手に、ブレスレスリー、インプロバイザー、ソリッドグロウの3頭が横一線となり、その後ろも、ナムラクレア、エトワールジェンヌ、スリーパーダが横並び。1馬身半差の9番手にアネゴハダ、さらに2馬身離れた最後方をシュンメキラリが追走した。

600m通過は33秒6の平均ペースで、先頭から最後方まではおよそ7馬身。後ろの2頭以外はほぼ一団で、逃げるショウナンマッハの手応えは楽なまま、レースは最後の直線へと入った。

直線に入ると、コーナリングで先頭に立とうとするソリッドグロウに、デュガとブレスレスリーも並びかけ、4頭が横一戦。さらに内からインプロバイザーとスリーパーダ、そして大外からはナムラクレアも差し脚を伸ばし、残り200mでなんと7頭が横一線となった。

そこから抜け出したのはミッキーアイル産駒の2頭。大外のナムラクレアと最内のスリーパーダだった。しかし、脚色が良いのはナムラクレアで、あっという間にスリーパーダを突き放すと、そこからあっという間にリードを広げ、最後は2馬身差をつけて1着でゴールイン。2着にスリーパーダ。後方から追い込んだアネゴハダが、3着に入った。

良馬場の勝ちタイムは、1分7秒9でレースレコードタイ。管理する長谷川調教師は、2019年のJBCレディスクラシックを制しているが、JRAの        重賞は初勝利。一方、和田騎手から乗り替わった地元出身の浜中騎手は、小倉2歳ステークス歴代単独トップの5勝目を挙げた。

各馬短評

1着 ナムラクレア

7頭横一線の大混戦になりかけるも、大外から1頭違う脚で抜け出し完勝。前走、オープンで初勝利を挙げたが、その実力が確かなところを改めて証明した。脚質からも1600mまでは対応できそうだが、果たしてどうなるだろうか。今後が注目される。

2着 スリーパーダ

勝ち馬が好スタートを切ったのとは対照的に、やや立ち遅れたのが痛かった。また、レース後の福永騎手のコメントから「内に馬を誘導した際に、力んでしまった」ようで、それも最後の結果に響いてしまった。

この血統は、とにかく脚元が無事にいくかどうか。また、牝馬の場合、どうしても小さく出てしまうのが、悩ましいところ。

シンハライトは、420kgで2016年のオークスを制したが、現4歳のライティアは、2戦目で馬体重を408kgまで馬体を減らし、そこから連敗。昨秋、428kgまで馬体が成長すると連勝した。スリーパーダも、この日が404kg。さらなる成長が待たれるところではないだろうか。

3着 アネゴハダ

やや展開に乗じたところもあるが、キズナ産駒の牝馬がまたも激走。結局、ディープインパクトを父の父に持つ馬3頭が、そのまま1~3着を独占した。

この馬の母の父はウォーエンブレム。新馬戦はダートの1200mを完勝しており、芝、ダートと二刀流の活躍も期待できるかもしれない。

レース総評

前半600mが33秒6、後半34秒3で、前後半の差は小さいものの、スプリント戦らしく前傾ラップ。しかし、最後の400mは11秒6→11秒5と加速していた。過去10年で、最後加速ラップとなった年は、2020年のメイケイエールと2015年のシュウジのみ。2頭は後にGⅡも制しており、ナムラクレアもさらなる活躍が期待される。

このナムラクレアに関して、血統面における注目点が2つある。

1つ目は、母の父がストームキャットという点。
父の父ディープインパクトと、母の父ストームキャットは相性が良く、黄金配合やニックスと呼ばれているのは周知のとおり。
キズナ、アユサン、エイシンヒカリ、サトノアラジン、リアルスティール、ラヴズオンリーユー、ダノンキングリーなど、この組み合わせで誕生したGI馬、重賞勝ち馬は多数。ミッキーアイル産駒はこれがまだ2世代目だが、今のところ、母の父がミスタープロスペクター系の種牡馬や、ノーザンダンサー系の種牡馬と相性が良い。ストームキャット直仔の繁殖牝馬は少なくなってきているが、ディープインパクト亡き今、そのディープインパクトを父に持つ種牡馬とも相性が良いのか、大いに注目が集まる。

そして、2つ目は母系。
母サンクイーンⅡの母系(母親)を代々遡ると、大種牡馬ノーザンダンサーや、クロノジェネシスの父で凱旋門賞馬のバゴ、さらに、こちらも大種牡馬のマキャベリアンと、同じ牝系の出身ということがわかる。
ナムラクレアを生産した名門・谷川牧場は、この牝系を大切に残しており、2017年のフラワーカップを制し、牝馬ながら皐月賞で1番人気に推されたファンディーナも同じ牝系の出身。

ナムラクレア自身が、この先どういったローテーションを歩むのか注目されるが、まだ奥はありそうで、さらに一つ二つ上のステージでも活躍してくれそうだ。

写真:スオミアッキ

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