[インタビュー]「人の予想に丸乗りしたことを恥じて、自ら発信を…」。人気競馬YouTuberさなびっちさんに聞く、競馬との出会い

佐賀競馬の公式動画や、日刊スポーツの連載『爆益さなびーむ☆』などでお馴染みの、競馬YouTuber南沙奈さん(愛称さなびっちさん)。YouTubeで公開している予想動画は多くのファンの心を掴んで離さない。今回は、そんなさなびっちさんと競馬の出会いについて伺ってきた。どのようなきっかけから、人気競馬YouTuberへと駆け上がっていったのだろうか──。

人の予想に"丸乗り"してしまった2017年ダービー

「元々、私はブラックな会社で挫折した人間なんです。タレントをやりながら映像作成なんかもやっていたんですが、休みもなかったしご飯も食べる時間もなかった…つまり、人権がなかったんです(笑)」

宝塚が好きだったというさなびっちさんだが、あまりの忙しさから前もって予約をいれることができずに行けなくなってっしまったという。さなびっちさんは、当時を「趣味がなくて、熱中できるものがなかった時代」と振り返る。

「そのかわり、友達と毎週通っているラーメン屋があって。そこは競馬に詳しい常連さんが多かったんです。みんなが楽しそうに話しているのを眺めながら"競馬って、いろんな人がひとつのことを話せるんだなぁ…"と思っていましたね」

そんなさなびっちさんが、初めて馬券を購入したのが2017年のダービー。
優勝したのはレイデオロ、2着にはスワーヴリチャード、5着にはアルアインが食い込んだ年で、着外にもウインブライト、ペルシアンナイト、ダンビュライト、カデナ、クリンチャーなど魅力あふれるメンバーが揃っていたレースだったが、さなびっちさんの本名は別の馬だった。

「ラーメン屋の人たちから"サトノアーサーは絶対に買った方がいい"って言われてて…。結果は10着で、馬券も大ハズレ。元々、親に"人を見たらまず疑え"と言われながら育ってきたのに、その時は完全に人の予想に丸乗りしてしまっていたんですよね。レースが終わってから、その事実が悔しくなったし、恥じる気持ちが湧いてきて。"自分の力でめちゃくちゃ当てたい!"と、毎週予想を始めたんです」

さなびっちさんの初的中は、1ヶ月後の宝塚記念。
その年の宝塚記念には、単勝1.4倍という圧倒的な支持を受けたキタサンブラックが参戦していた。

当時のキタサンブラックといえば、年度代表馬となった前年の勢いを引き継ぎ大阪杯・天皇賞春を連勝。前年にはマリアライト・ドゥラメンテの後塵を拝した宝塚記念も必勝体制と思われていた。

「キタサンブラックの天皇賞春は競馬を始める前だったので、どれだけ強いか実感がわいていなかったんですよね。だから"もしかして、長い距離走ったから疲れてるんじゃないか?"と思って(笑) 私がそういう予想をしていると友人からは『雑音』と言われたんです(笑)」

キラサンブラックがまさかの9着に敗れ、3番人気サトノクラウンの勝利をズバリ的中させた
さなびっちさん。自らの予想が雑音と言われたことについて「むかつく!」「自分の予想を披露する場を見つけたい!」という思いを募らせていったという。

「私は紙媒体が好きで、競馬情報も雑誌や新聞から得ていました。でもある日、雑誌に掲載されていたYouTuber特集を見て"なるほど!"と。2018年にはタレントをやりつつYouTubeを始めたんですが、10分の動画のために色々調べたりしたんですよね。そうして競馬の面白さにハマっていきました!」

「当時の雰囲気が伝わる映像や書籍はとても大切な存在です!」

以前は競馬を題材として取り扱ったスロットをよく打っていたというさなびっちさん。
印象に残っている馬は、ホットシークレットだという。当時を知る友人は「いたなぁ…」と懐かしそうにしていたという。

「そのスロットをやっていると、昔の映像がよく流れてくるんですよね。最近の競馬しかしらない自分にとって、当時の雰囲気が伝わる映像や書籍はとても大切な存在です。ウマフリで出していた『テイエムオペラオー伝説 世紀末覇王とライバルたち』も読みましたけど、なるほどと思うところがたくさんありましたね!」

「メイショウドトウは、和田騎手の関連で知っていたんですが、その当時の馬たちの話を合わせながら読むと、すごい馬だったんだな…と思いました。スロットではテイエムオペラオーといつも競り合っていたんですよね(笑) 思わず"あのレースって、そういうレースだったのか…"とスロットを打っていた時期が懐かしくなりました」

メイショウドトウといえば、2001年の宝塚記念勝ち馬。
さらに金鯱賞やオールカマー、日経賞なども制した名馬である。
そしてファンにとっては『テイエムオペラオーのライバル』としても知られる馬だろう。
2000年には宝塚記念・天皇賞秋・ジャパンC・有馬記念とテイエムオペラオーが勝利したGⅠレースで連続して2着。さらに翌年も天皇賞春でテイエムオペラオーと半馬身差の2着と、シルバーコレクターとしても愛された馬だった。

「シルバーコレクターが好きなんです。自分と重ね合わせちゃうんですかね? 見ていると"私も頑張らないと!"って気持ちになりますし、応援したくなります。エタリオウにも勝ってもらいたかったな…。カレンブーケドールも好きで、複勝を買えばいいのについつい単勝を…(苦笑) 応援と馬券は別で考えているんですけどね!」

大反響のあった2022年秋の連勝劇

「1番気持ち良かった的中は、2022年のダービーですね! 最初から、勝つのはドウデュースだと思っていたんです。それまでもダービーを見据えた乗り方をしているように見えましたし、ライバルは2400mだと少し長いような馬が多く感じました。私の中で"2400m走れそう!"と思ったのが、ドウデュースに加えてイクイノックス・アスクビクターモア・ダノンベルーガの4頭。結果はその4頭で1〜4着を独占してくれました。三連単を4点5000円ずつ買っていたのですが、払い戻しは80万ちかくなりました!」

2022年の秋には秋華賞・菊花賞・天皇賞秋と『転がし』をして、最初の65000円を96万円へと変貌させた。さなびっちさん自身は「100万円に届かなかったのが残念」と振り返るが、その転がしっぷりにはSNSなどで大きな反響があったという。

動画のコメントは、映像作品のフィードバックとして有効活用するスタイルのさなびっちさん。YouTubeでの活動を続けていくうちに、馬主さんを紹介してもらったり、競馬ファンから声をかけられるようになったりと、人脈が広がっていったという。

「今ではお中元やお歳暮をくださるファンの方もいらっしゃいます。いまも毎週重賞の予想を出しています。本命は3着以内にくることが多いので、ぜひご覧になってください!」

写真:かず、Horse Memorys、南沙奈


テイエムオペラオーの世代にスポットライトをあてた新書『テイエムオペラオー伝説 世紀末覇王とライバルたち』が2022年10月26日に発売。

製品名テイエムオペラオー伝説 世紀末覇王とライバルたち
著者名著・編:小川隆行+ウマフリ
発売日2022年10月26日
価格定価:1,199円(本体1,090円)
ISBN978-4-06-529721-6
通巻番号236
判型新書
ページ数240ページ
シリーズ星海社新書
内容紹介

君はあの完璧なハナ差圧勝を見たか!

90年代後半に始まるサンデーサイレンス旋風。「サンデー産駒にあらずんば馬にあらず」と言っても過言ではない時代にサンデー産駒の強豪馬たちと堂々と戦いあった一頭の馬がいた。クラシック勝利は追加登録料を払って出走した皐月賞(1999年)のみだったが、古馬となった2000年に年間不敗8戦8勝、うちG15勝という空前絶後の記録を達成する。勝ち鞍には、いまだ史上2頭しか存在しない秋古馬三冠(天皇賞、ジャパンC、有馬記念)という快挙を含む。競馬ファンのあいだで「ハナ差圧勝」と賞賛された完璧な勝利を積み重ね、歴史が認める超一流の名馬となった。そのただ1頭の馬の名をテイエムオペラオーという。

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