[重賞回顧]天まで届け勝利の凱歌。史上まれに見る混戦を制したのはジャスティンミラノ!~2024年・皐月賞~

はじめに、4月6日阪神7レースの落馬事故で逝去された藤岡康太騎手のご冥福を心からお祈りいたします。

史上まれに見る混戦となった2024年の皐月賞。その要因の一つとしてあげられるのが、2歳GⅠを制した牝馬が2頭誕生したということだろう。「牝馬が強い」時代といわれて久しいものの、グレード制が導入された1984年以降では、初めての快挙である。

また、出走各馬の臨戦過程が多岐にわたるのも混戦となった要因。皐月賞で今季初戦を迎える「直行組」はもちろん、前走1、2月の重賞に出走した「準・直行組」や、定石通りトライアルレースを経由してきた馬など、臨戦過程は様々。しかも、前走4着以下に敗れた馬は2頭と少なく、データが残っている1986年以降では、2020年に並ぶ少なさだった。

スタート直前にダノンデサイルが除外となり、出走17頭中、単勝10倍を切ったのは5頭。その中でレガレイラが1番人気に推された。

7月函館の新馬戦を完勝したレガレイラは、続くアイビーSこそ3着に敗れるもホープフルSを快勝。同レースがGⅡ→GⅠに昇格して以降、牝馬の勝利は初の快挙だった。

それ以来、3ヶ月半ぶりとなる今回も舞台は同じ。北村宏司騎手と新たにコンビを組み、牝馬として76年ぶりの皐月賞制覇が懸かっていた。

これに続いたのが、2戦2勝のキズナ産駒ジャスティンミラノ。東京芝2000mの2歳新馬戦で、史上最速タイとなる上がり4ハロン45秒9をマークして初陣を飾ったジャスティンミラノは、前走の共同通信杯でGⅠ馬ジャンタルマンタルを撃破。重賞初制覇を成し遂げた。

共同通信杯組は皐月賞と相性が良く、過去10年で5勝。「黄金ローテ」ともいえる臨戦過程で、史上最少タイとなるキャリア3戦目での皐月賞制覇が懸かっていた。

3番人気となったのがジャンタルマンタル。デビュー戦とデイリー杯2歳Sを連勝し、重賞タイトルを獲得したジャンタルマンタルは、GⅠの朝日杯フューチュリティSでも早目先頭から押し切って快勝。3戦全勝でビッグタイトルを獲得した。

前走の共同通信杯は2着に敗れ連勝は止まったものの、超スローの展開で、勝ったジャスティンミラノとは位置取りの差があったのも事実。この世代、唯一GⅠを制している牡馬として意地を見せるか。そして、2つ目のビッグタイトル獲得なるか注目を集めていた。

以下、前走の毎日杯を6馬身差で圧勝したメイショウタバル。ホープフルSで2着と好走し、外国産馬初の皐月賞制覇を目論むシンエンペラーの順で人気は続いた。

レース概況

ゲートが開くと、ビザンチンドリームが大きく出遅れ。
それ以外の16頭は五分のスタートを切った。

その中で、真ん中からジャンタルマンタルがいく構えを見せたものの、内枠のメイショウタバルとシリウスコルトも先手を主張。最終的に、枠の差でメイショウタバルがハナを切り、1~2コーナー中間で早くも4馬身のリードを取った。

2番手以下は、シリウスコルト、ジャンタルマンタルと続いて4番手にアレグロブリランテがつけ、ジャスティンミラノ、ミスタージーティー、サンライズジパングが半馬身間隔で追走。弥生賞で好走したシンエンペラーとコスモキュランダが仲良く中団に位置し、レガレイラは後ろから3頭目に控えていた。

向正面に入ってから、2番手との差をさらに広げたメイショウタバル。1000mを57秒5で通過したことがアナウンスされると場内がドッと沸き、先頭から最後方に位置するビザンチンドリームとエコロヴァルツまでは、30馬身近い差となっていた。

その後、3コーナーに入るとメイショウタバルのリードは徐々に小さくなり、残り600m地点で4馬身。さらに、4コーナーでシリウスコルトとジャンタルマンタルがその差を1馬身まで縮め、場内からひときわ大きな歓声が上がる中、レースは直線勝負を迎えた。

直線に入るとすぐジャンタルマンタルが先頭に立ち、坂下でリードは2馬身。追ってきたのはジャスティンミラノとコスモキュランダで、一旦はジャンタルマンタルがリードを広げたようにも見えたが、残り100mを切ってから一気に差が詰まると、ゴール前でついに2頭が逆転。その中でも、終始、体半分リードしていたジャスティンミラノが1着でゴール板を駆け抜け、僅かクビ差及ばなかったコスモキュランダが2着。1/2馬身差3着にジャンタルマンタルが続いた。

良馬場の勝ちタイムは1分57秒1のコースレコード。藤岡康太騎手が1週前と2週前追い切りに騎乗していたジャスティンミラノが混戦を断ち、デビューから無傷の3連勝でGⅠ初制覇を成し遂げた。

各馬短評

1着 ジャスティンミラノ

道中は5番手の絶好位につけるも、コーナーに戸惑ったのか、勝負所でやや手応えが怪しくなった。それでも、4コーナーで左鞭が2発入ると再び加速。コスモキュランダとの叩き合いを制し、見事1冠目を獲得した。

これまでの2戦はいずれも流れが遅く、ワンターン(2000mはほぼワンターン)のコース形態。対して、皐月賞は淀みない流れになることが多く、コーナーを4つ回るため戸惑わないか心配されたものの、問題にしなかった。

操縦性が良く、折り合いに難がない点は大きなアドバンテージ。2400mも問題なくこなすはずだが、過去1分58秒2より速いタイムで皐月賞を勝利した馬はダービーで連対がなく、ディーマジェスティの3着が最高。このジンクスを打ち破れるか。そして、皐月賞を回避した同じキズナ産駒シックスペンスとの対決に勝利することができるか。非常に楽しみになった。

2着 コスモキュランダ

道中でまくった前走の弥生賞ディープインパクト記念とは対照的に、中団追走から直線末脚を伸ばすという正攻法の競馬。それでいて勝ち馬と同じタイムで走破し、あと一歩のところまで迫った。

今回更新されるまで皐月賞のレースレコードを保持していたアルアインの産駒。自身も、前走はレースレコードで勝利するなど時計面での裏付けがあり、これらを踏まえれば納得のいく好走といえるが、初めてコンビを組んだとは思えないほどジョアン・モレイラ騎手の素晴らしい騎乗が光った。4開催日連続の重賞勝利、2週連続GⅠ制覇は惜しくもかなわなかったが、この2週間、特に重賞でのパフォーマンスは尋常ならざるものがある。

管理する加藤士津八調教師は、距離は長くなったほうが良いとコメントしているが、それについては後ほど。

3着 ジャンタルマンタル

1、2番人気は譲ったものの、3番手追走から直線入口で先頭。GⅠ馬らしい横綱相撲で自ら勝ちにいった。惜しくも最後の最後で交わされてしまったが、展開などを考えれば最も強い競馬をしたのはこの馬だったかもしれない。

父パレスマリスは1600mと2400mのGⅠを勝っているものの、この馬自身はおそらく2000mが上限。NHKマイルCに出走した際は、有力馬の一頭となる。

レース総評

前半1000m通過57秒5で、同後半が59秒6=1分57秒1。皐月賞でコースレコードが更新されたのは、2013年のロゴタイプ以来11年ぶりだった。

勝ったジャスティンミラノはキズナ産駒で、母父はオセアニアのチャンピオン種牡馬エクシードアンドエクセル。キズナ×エクシードアンドエクセルの組み合わせは、桜花賞3着のライトバックなど3頭しかデビューしていないが、いずれも複数勝利をあげている。

一方、2着コスモキュランダは父がアルアインで、母サザンスピードは豪国産。1、2着馬ともに父がディープインパクト系種牡馬で、オセアニアに縁のある繁殖との組み合わせだった。

サザンスピード自身は現役時、豪国のコーフィールドCを勝った名牝。引退後はノーザンファームで繋養されていたものの、2020年の繁殖セールに上場され、ビッグレッドファームが税込2,310万円で落札した(そのとき受胎していたアルアインの仔がコスモキュランダ)が、注目したいのはサザンスピードの母父ザビールである。

ザビールもまた、オセアニアの大種牡馬。エクシードアンドエクセルの父デインヒルとは、種牡馬時代ライバルの関係だった。ただ、産駒のタイプは異なり、ザビールは長距離向きでデインヒルは短距離向き。加藤士津八調教師がコメントしたコスモキュランダの長距離適性は、ザビールの血が影響していると思われる。

また、ザビールとビッグレッドファームの関係を語る上で、名牝マイネプリテンダーの存在は外ぜない。

2021年に亡くなった「総帥」こと、ビッグレッドファームの岡田繁幸前代表が、ザビールの直仔マイネプリテンダーを輸入したのは、今から30年近くも前のこと。同馬は、脚部不安により競走成績こそ4戦1勝に終わったものの、繁殖に上がってから送り出した5頭中4頭が重賞を勝利。そのうち、マイネルネオスはJ・GⅠの中山グランドジャンプを勝利している。

さらに、初仔マイネヌーヴェルは2023年のJ・GⅠ中山大障害を勝ったマイネルグロンを送り出し、マイネヌーヴェルの初仔マイネテレジアから、オークス馬ユーバーレーベンと新潟記念勝ち馬マイネルファンロンが誕生。2024年現在、この一族から実に7頭もの重賞ウイナーが誕生し、そのうち3頭がGⅠを勝利している。

前述したように、サザンスピードをもともと輸入したのはノーザンファームで、同馬とマイネプリテンダーの一族に血縁的関係はない。ただ、ザビールの血を持っていることは共通しており、サザンスピードもビッグレッドファームで名牝系を確立する可能性は十分にある。

1着ジャスティンミラノに話を戻すと、前述したように父はキズナで、これが産駒初のクラシック制覇。さらに、牡馬の産駒として初のGⅠ制覇だった。

この2021年生まれ世代は、初年度産駒が活躍したのを見て種付けされており、産駒数が大幅に増加。

中でも、ノーザンファームの生産馬が激増しており、ジャスティンミラノをはじめとする重賞勝ち馬3頭は、いずれも同場生産馬である。

また、キズナ産駒の牡馬といえば瞬発力勝負で劣るイメージがあったものの、少なくとも、ジャスティンミラノにそのイメージは当てはまらない。

とりわけ、日々調教をつけていた藤岡康太騎手の貢献度は間違いなく大きく(同馬に限らず、友道康夫厩舎の管理馬全般)、そこにもまた彼が生きた証しはしっかりと残っている。

写真:shin 1、水面

あなたにおすすめの記事