みやこステークスは1ヶ月後に行われるチャンピオンズカップの前哨戦。
過去9回中7回のレースで、のべ9頭がここをステップに本番で馬券圏内に食い込んでいる。
2020年は、京都競馬場が改修工事に入っているため、阪神競馬場での開催となった。

10頭立ての少頭数になったものの、GⅠ級のレースやGⅡの勝ち馬、そして重賞勝ちはなくともダート戦でほぼ底を見せていない馬など、まさに少数精鋭と呼べるメンバーが揃った。

単勝オッズは三つ巴となり、僅差の1番人気に推されたのはクリンチャーだった。6歳となった今期は、2月の仁川ステークスでダート戦に初挑戦。そこで2着に健闘すると、以後は一貫してダート戦に出走し、勝ち星こそないものの6戦して2着4回、3・4着が1回ずつと堅実な成績を残していた。
いよいよ今回、ダート戦初勝利と同時に2年9ヶ月ぶりの重賞制覇を目論んでいた。

続く2番人気に推されたのはベストタッチダウン。
ダート戦は7戦4勝、4着以下が1回のみとほぼ底を見せていない馬で、前走の太秦ステークスを逃げ切ってオープン戦初勝利。その前走を含め逃げたときは4戦全勝で、今回も積極的なレースが期待された。

そして、3番人気に支持されたのがエアアルマスだった。
こちらは昨年6月にダートに転向して以降は5戦4勝と、この馬もダート戦でほぼ底を見せておらず、1月のGⅡ東海ステークスで初重賞制覇を達成。しかし、レース後に骨折が判明して休養に入り今回が復帰戦となった。

以下、ヒストリーメイカー、スワーヴアラミスの順で人気は続いた。

レース概況

ワイドファラオとベストタッチダウンの逃げ争いに注目が集まったが、先手を取ったのはベストタッチダウンの方だった。エアアルマスが大外枠から2番手につけ、ワイドファラオは3番手に控えた。一方、意外だったのはクリンチャーで、スタート後すぐに川田騎手が押してポジションを取りにいき、4番手につけて向正面に入った。

序盤は10頭がひとかたまりとなって推移し、上位人気馬は中団より前でレースを運ぶ。
1000mの通過は60秒5と平均ペースで流れて3コーナーに入り、残り600m標識の地点でエアアルマスが先頭に並ぶと、早くもベストタッチダウンの手応えが怪しくなり後退してしまった。かわってクリンチャーが2番手に進出し、中団にポジションをとっていたヒストリーメイカーとマグナレガーロがその2頭を追う展開となった。

直線に入ると、クリンチャーがエアアルマスを交わして早くも先頭に立ち、一気に3馬身ほどリードをとった。ゴールまで残り200mを切った地点で、粘るエアアルマスをヒストリーメイカーが交わして2番手に上がり先頭を追うが、その差は終始詰まらずクリンチャーが1着でゴールイン。ヒストリーメイカーからさらに4馬身開いた3着争いは、道中最後方でレースを運んでいたエイコーンがゴール寸前でエアアルマスを交わして3着に入った。

各馬短評

1着 クリンチャー

超のつく道悪の菊花賞2着、重馬場の京都記念1着、天皇賞春3着とスタミナ勝負にはめっぽう強い馬として知られる。しかし、ダートでは4着以下はないものの、逆に突き抜けられない、もどかしい結果も招いていた。
川田騎手が、レース後のインタビューで「持久力に長けたこの馬の特長を生かそうと考えていた」と語ったように、ゲートが開いてすぐにその意図が伝わるようなレース運びを展開して完勝。
ダート戦初勝利が、実に2年9ヶ月ぶりの重賞制覇となり、陣営にとって最高の結果となった。

父ディープスカイはダービー馬だが、産駒はダート中距離を得意とする馬が多く、他の産駒では、モルトベーネが今回と同コースの重賞アンタレスステークスを2017年に制し、キョウエイギアも、やはり力のいる大井競馬場で2016年のジャパンダートダービーを圧勝した。力のいる馬場、時計のかかる馬場では、引き続き上位争いをしていくのではないだろうか。

2着 ヒストリーメイカー

デビューして2戦未勝利で金沢競馬に移籍するも、そこで15戦10勝の成績を残し、昨年1月に中央1勝クラスへ再転入した、苦労人ならぬ苦労馬。そこから1年足らずでオープンまで出世するとコツコツと力をつけ、ついに重賞に手の届くところまで来た。

中央再転入後は東海ステークスの6着が最低着順で、他は全て掲示板に乗る堅実派。
エンパイアメーカー産駒らしく、湿った馬場の阪神中距離で2勝しているが、基本的には今回のような力勝負の方が得意ではないだろうか。

3着 エイコーン

1年3ヶ月の休養を経て3月に復帰。前走、重賞で3着と好走していたにもかかわらず人気がなかったが、その低評価を覆し今回も3着に入った。
小倉と新潟で敗れた後、坂のある中京と阪神で連続3着しているように、この馬も力のいる馬場や坂のあるコースでの持久力勝負が好走条件になってくるのではないだろうか。

レース総評

1番人気のクリンチャーが優勝した一方で、2番人気のベストタッチダウンは大差のしんがり負けとなってしまった。ここまで負ける馬ではないだけに心配されるが、この2頭は前走の太秦ステークスでも対戦していて、その時はベストタッチダウンが1着、クリンチャーが4着だった。今回着順が入れ替わった要因に、馬場の違いが大いにあったのではないだろうか。

雨の不良馬場で行われた太秦ステークスの勝ちタイムは、1分48秒1という高速決着。
片や、今週は芝で2歳レコードが出るほど状態が良く、ダートは乾燥が進んで力のいる馬場となっていた。ベストタッチダウンがダートで挙げた4勝中3勝が重・不良馬場ということも、今回馬場が向かなかった要因だろう。また結果論ではあるが、1着馬の母の父と3着馬の父の父は、共にダート中距離の力勝負に強いブライアンズタイムだった。

チャンピオンズカップの前哨戦として行われているみやこステークスだが、前述したように、上位に来た馬はこれまでもダートの底力勝負では堅実に走っている。

そしていずれもが、長期休養や路線変更、環境の変化など雌伏の時を経ながらもコツコツと力をつけて本格化の時を迎えており、今後も応援したくなる存在だ。本番で強豪・クリソベリルを負かすことは容易ではないが、時計のかかる馬場になった場合は引き続き注目していきたい。

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