語り継がれる最強マイラー〜タイキシャトルが繋ぐ引退馬の支援〜

2020年のマイルチャンピオンシップは、4歳牝馬グランアレグリアが春秋マイル制覇、またスプリントとの2階級制覇を果たし、見事マイル女王に輝きました。
時代が進んでも、令和最強マイラーの一角と称される強さでしょう。

では、平成最強マイラーと言えばどの馬を思いつきますか?

モーリスやダイワメジャー、他の距離でも活躍していたウオッカやロードカナロアなどいますが、私にとっては、何と言ってもタイキシャトルです。

今回は、そのタイキシャトルの現役時代、そして引退後に支援を受ける現在の姿について、ご紹介していきたいと思います。

最強マイラーとなったタイキシャトル

タイキシャトルは、生涯成績は13戦11勝。
そのうち5勝はGⅠレースで、しかも馬券外に沈んだことはありません。

そんな抜群の安定感を持つ名マイラーのデビューは3歳4月と、同世代から見ると少し遅れた時期でした。
デビュー前は脚部負傷や蹄の化膿、また調教をするとソエの悪化が見受けられ、脚下に不安があったシャトル。
ゲート試験も2回落ちてしまい遅れをとったそうです。

最初から順風満帆ではなかった彼ですが、やがて成長を遂げて世界最強マイラーとなり、私達を魅了するレースをたくさんしてくれました。

タイキシャトルはグランアレグリアと同じくスプリンターズステークスも勝利しているのでスプリントとマイルの2階級制覇を果たしています。
そして海外GⅠ世界最高峰のマイル戦であるジャック・ル・マロワ賞を勝利し、名実ともに当時の世界最強マイラーになりました。
タイキシャトルを担当した藤沢和雄調教師が当時「海外だからって滞在を長期化はさせない」「むしろシャトルはやる気が上がりすぎてしまう」「いつも通りの調教をするんだ、いつも通りすることが結果に繋がるんだ」とおっしゃっている映像を見たのが、今でも印象に残っています。

海外という環境の変化も苦にしない、むしろ意気込みすぎてしまうくらい強い精神力を持つ馬なのです。

海外帰りの馬の多くは、次の国内レースで調子が上がっていないこと多く、あまり戦績も良くないという傾向にあるかと思います。
しかしタイキシャトルは8月16日の海外レースを終え、帰国後は11月22日のマイルチャンピオンシップで悠々と後続馬に5馬身差をつけて1着でゴール版を駆け抜けるのです。
海外帰りでも調子を崩さずに、しかも圧勝してしまうなんて……令和の競走馬でも、あまり見かけないタフさと精神力と言えるのではないでしょうか?

圧勝してしまう強さ、かっこいい鬣、綺麗な毛色にシュッとしたお顔。

そんなシャトルの虜になった方、そして今も尚好きな方は多いと思います。

引退馬協会とタイキシャトル

令和になっても愛され続けるタイキシャトルですが、引退した後どのように過ごしているかご存知でしょうか?

種牡馬となったタイキシャトルは、フェブラリーS覇者のメイショウボーラーをはじめ、3頭のGⅠ級競走勝ち馬を輩出するなど活躍。リーディングは最高6位という立派な成績を残し、2017年に種牡馬を引退します。

競走馬、種牡馬、誘導馬や乗馬を引退した後、競馬場でターフを駆け抜けた馬の全てが、自らの寿命が訪れるまでの余生を穏やかに過ごせるわけではないのが現実です。

タイキシャトルの場合は、NPO法人引退馬協会へ譲渡され、今現在、ヴェルサイユファームさんで功労馬として余生を送っています。

毎年7000頭近く競走馬として登録されるサラブレッド、その中で重賞に出走できる馬はごく僅か。
またその中で勝利する馬もごく僅かです。
功労馬になり余生を全うする馬もまた多くはありません。

シャトルが譲渡された引退馬協会は、馬達が現役引退後の余生を過ごせるように支援する非営利目的の団体です。

主な事業内容は、

  • 馬と人のふれあい事業
  • フォスターペアレント事業
  • 引退馬ネット事業
  • 啓発事業
  • 協賛及び後援事業

です。

引退馬協会HP:https://rha.or.jp/index.html

馬をテーマにした様々なイベントを開催し、馬とふれあう機会を生み出すふれあい事業。
一頭の馬をたくさんの人で支える制度のフォスターペアレント事業。
馬を引き取って繁養する人をサポートする対外支援としての引退馬ネット事業。
さまざまな事業・取り組みがされています。

活動内容によって、支援の対象は引退した国内の競走馬だけでなく騎馬隊退役馬や外国産種牡馬まで広がることも。引退馬協会の中でもいくつか支援先があるので、支援したい活動に対して寄付ができます。

私はタイキシャトルをきっかけに引退馬協会に入会し、フォスターペアレント事業を通して支援を行なっています。フォスターペアレントとは、引退馬協会が支援する馬の中から自分で選んだ馬に対して毎月0.5口(3000円)から寄付できる制度です。

私がフォスターペアレントになったきっかけは、馬に対して何か少しでも支援したい気持ちと、タイキシャトルが好きだからという気持ち。お金持ちでもなければ、直接的に引退馬についての活動をしているわけでないですが、何かしたいという気持ちを体現できる形が見つかったのです。
大きなことが言えなくても、そういった気持ちがあるだけで支援することは可能なのです。

引退馬協会のホームページからは、会員でなくてもフォスターホースの近況報告が確認できますから、自宅にいながらも彼らを近くに感じることができます。

フォスターペアレントになると年に1回、自身のフォスターホースの写真を頂けます。牧場になかなか行けない方にとって、年々穏やかに歳を重ねる姿を見れることは嬉しいことです。
各方面の方々もお忙しいのに、有難いことだと感じています。

最近は牧場の方達がSNSを通して写真や動画を上げてくださることも増え、以前よりも現役後の情報が入るようになりました。支援等したことない人でも知る機会が増え、興味を持ってもらえる機会も増えています。

自分で行動したいと思った時に情報が手に入る環境というのは、とてもポジティブなことだと思います。

タイキシャトルを訪ねて感じる、功労馬牧場の温もり

以前、私はタイキシャトルを訪ねてヴェルサイユファームさんに行ってきました。
タイキシャトル現役時代、私自身はまだ子供だったため直接見たことがなかったので、どうしても会いたかったのです。

写真の中や動画の中だけじゃない、リアルなタイキシャトルに会って、他の競走馬を見た時とは違う、なにかとてもホッとした気持ちになりました。彼が穏やかに放牧地で過ごしている姿を目にしたからでしょう。同時に、とても感動しました。

羊と一緒に仲良く放牧

ヴェルサイユファームさんには、引退馬協会の活動の一つ「引退馬ネット事業」の支援先団体の馬もいて、牧場の方からその馬のお話も聞くことができました。

お忙しい中親切にお話ししてくださり、馬達への愛情や功労馬牧場の在り方に真摯に向き合っていらっしゃるのが、とても伝わりました。
他の牧場でもそうでしたが、このような方々に見守られ過ごすシャトル達は、幸せな、穏やかな余生を送っているんだなぁと感じます。
引退馬協会を知らずに訪ねていたら、見方や感じ方も違っていたかもしれません。

支援するという選択肢を、認知してほしい

フォスターホースは毎月0.5口(3000円)から継続的に支援するものですが、引退馬協会の活動に対して単発で寄付できるものもあります。

毎月じゃなくてもできますし、情報社会と呼ばれる現代では調べるとしっかり内容を知ることができます。寄付する側も安心して行えると思います。

牧場に訪問した際もかわいいグッズが売っていたので購入したのですが「かわいいから買う」とか「かっこいいから買う」とか「記念に買う」といったことでも、回り回って引退馬の支援につながります。

そしてもちろん買わなくても、“知っている”ということ、認知すること自体が大切なのだと思います。
自分がしたいと思った時、できる時、その時々で可能な形を選択する事がベストだと思います。

私は競馬が好きです。
競馬に対してネガティブな印象を持っている人もきっといますが、引退馬支援が活発化することでポジティブな側面が広まって欲しいなと考えながら、今後も競馬を楽しんでいきたいです。

引退馬の近況報告など、興味がある方は引退馬協会のホームページで確認いただけますので、気になる方は覗いてみてください。

写真:あす

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