シンボリルドルフ〜「アンチ」をも惚れさせた唯一無二の皇帝〜

ウマフリ読者の皆様、こんにちは。
「チーム・テイオー」「トウカイテイオー産駒の会」会員のエドリンです。

現在はシンボリルドルフを愛し、その血を繋ぐトウカイテイオー産駒たちを応援する私ですが、純粋なルドルフファンの方から見たら、私はファンとは認めて貰えないかもしれません。

何故なら、彼の現役時代、私は「アンチ・ルドルフ」だったからです。

シレっとした顔で当たり前のように勝つ──それがへそ曲がり根性の私にとっては気に入らなくて、ルドルフの出るレースはたとえG1でも馬券を買いませんでした。
嫌いなりに「ルドルフを負かす馬はいないだろう」と、心のどこかで思っていたのでしょう。

しかし引退式の日、ルドルフは大勢のファンが見つめている中で、全く"らしくない"グダグダ走りをしてみせたのです。そこには七冠馬という兜も、最強馬という鎧も脱ぎ捨てて、自分の気の向くままに走りを楽しむ素のルドルフがいるように思えました。
そしてそれを見た時、私の中のルドルフ観は180度転換したのです。

──私が見ていたルドルフは分厚いコートで包まれた外側だけのルドルフだった。平然と装う内側に隠された彼の心には、一体どんな思いがあったのだろうか。

その時初めて「馬にも感情があるんだ」と思い至り、頭をハンマーで殴られた程の衝撃を受けたのでした。

それまで、犬や猫は表情や動作で気持ちを表すとわかっていたのに、何故か競走馬に対してはそんな見方をした事がありませんでした。

そしてその日から、ルドルフは私にとって特別な馬になったのです。
ただ強すぎるだけの理由で、意味なく嫌っていた偏狭な自分の心を許して貰う為に、私はルドルフに約束をしました(もちろん、自分の中だけでですが……)。

その約束とは、「彼の仔供たちを無条件で応援する」というもの。
そしてトウカイテイオーと出会い、馬という生き物の魅力にドンドン惹かれていく事になったのです。

photo by エドリン
photo by エドリン
種牡馬時代のシンボリルドルフ
photo by らすかる

ルドルフ・テイオー父仔は皮膚の薄さや、独特のオーラは似ていますが、顔つきは多少違います。
まず目が違うように感じます。
ルドルフは切れ長のキツネ目、テイオーはクリッとしたタヌキ目です。
同じルドルフ産駒でも、京都大賞典を制したツルマルツヨシの方がルドルフの目に似ている気がします。

テイオーはどちらかというと、母ナチュラルに似ている外見ではないでしょうか。

それでも「ルドルフの血筋だなぁ」と思うのは、レース時の返し馬です。
これは、ルドルフというよりも、その祖父スピードシンボリから引き継がれたものかもしれません。

3頭とも、返し馬である程度走ると、突然ピタッと止まります。
そして立ち止まったままジーッと一点を見つめるのです。
まるで精神統一をしているかのように。

スピードシンボリのこの仕草を、故・野平調教師さんはかつて著書で「(突然ピタッと止まった時は)スーちゃん(スピードシンボリ)の気のすむまでジーッとしていました」と語っていました。


以前、雑誌のインタビュー記事で岡部元騎手が「ルドルフは先頭にたつと、もう十分とばかりに力を抜く」とおっしゃってました。秋天で、かの有名な実況である「あっと驚くギャロップダイナ」の差しが決まったのも、このせいだったそうです。

一方で、テイオーは返し馬が終わってからは決して気を抜くことなく、ゴールするまで100%の力を維持しますし、何度も骨折をしました。ルドルフはアメリカ遠征で怪我をしたものの、それ以外は大きな怪我をした事がありませんから、これも父と仔で違う点でしょう。

ただ、その「力を抜く」ことのあるルドルフが、私が思うに生涯一度だけ、必死の形相でゴールに向かって行ったことがあります。

それは、三冠を制した後のジャパンカップです。
カツラギエースに逃げ切りを許しそうになった時、ルドルフはベッドタイムと一緒にもの凄い追い込みをかけました。

結果、カツラギに逃げ切られるのですが、その時のルドルフの表情は凄まじいものでした。

座っていた席がちょうどゴール前で、双眼鏡で見ていたためはっきりと目に焼き付いています。
後にも先にも、あんな一杯いっぱいのルドルフは見た事がありません。

ルドルフはその後、自分の使命をしっかり果たして、神の元に帰りました。
でも、あの雄姿は人々の心にいつまでも残っています。

私にとってのルドルフは、世間が言うような史上最強馬でも怪物でもありません。

どんな馬とも比較することのできない、唯一無二の存在「皇帝シンボリルドルフ」なのです。 

チーム・テイオー トウカイテイオー産駒の会HP:
https://team-teio.jimdofree.com/
https://twitter.com/tokaiteiosannku
https://www.facebook.com/team.goldshot

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