9月も末の船橋競馬場1800mコース、Jpn2日本テレビ盃が開催されました。
秋のJBCクラシックやJRAのG1チャンピオンズカップを目指す馬たちが、秋の始動戦として挑みます。

JRAからは長期休養明けながらダート路線の大将格であるクリソベリル、ジャパンダートダービーを制したダノンファラオの強豪2頭に加え、今年に入ってオープンクラス入りを果たしたラストマンとメイショウダジンの4頭が参戦。

地方競馬からは大井移籍後も活躍を続ける古豪ノンコノユメとサルサディオーネの2頭、名古屋競馬からメイショウオオゼキとマイネルキラメキ、そしてご当地船橋競馬のシュプレノン、クラトリガー、クインザヒーローが参戦し、11頭立てでのレースになりました。

レース概況

いつも通り抜群のスタートを切ったサルサディオーネがハナに立ち、クリソベリルが2番手、3番手内にダノンファラオ、4番手外にメイショウダジンが続きます。

5番手のインにノンコノユメ、外の6番手からラストマンが追いかけますが、2コーナーで既に10馬身ほど離されます。後方も縦長になり向こう正面へ。

突かれることなく逃げてゆくサルサディオーネは軽快に飛ばしていき、クリソベリル、メイショウダジン、ダノンファラオは仕掛けどころを伺います。ノンコノユメは真島騎手が早めに促して向こう正面から動きはじめ、ラストマンもこれについていきました。

3コーナーでも余裕綽々で走るサルサディオーネに対して、追いかけるクリソベリルは川田騎手のアクションが入るも休養前の勢いある走りが出ません。メイショウダジン、ダノンファラオの先行組にノンコノユメ、ラストマンも4コーナーで追い上げて直線の攻防へ。

直線に向いて矢野騎手のアクションが入るとサルサディオーネも尾をブン!と振ってスパートに入ります。
クリソベリルは失速し、メイショウダジンとの間をダノンファラオが縫って追い上げますが、サルサディオーネが半馬身残して勝利しました。

2着にダノンファラオ、3着に先行したメイショウダジン、中段から追い上げたラストマンが4着、早めに動いた分かノンコノユメは5着でした。クリソベリルはノンコノユメから1馬身半差の6着に敗れました。

各馬短評

1着 サルサディオーネ

牝馬交流重賞のレース回顧で何度も取り上げているサルサディオーネ、左回りの川崎や船橋コースで逃げを打つと簡単には止まりません。
南関東の重賞であれば牡馬相手でも逃げ切ってしまいますし、今年に入ってからは牝馬交流重賞のエンプレス杯、マリーンカップ、スパーキングレディーカップでも勝ち負けに加わる活躍を見せています。

クリソベリルが本調子ではなかったにせよ、かしわ記念に次ぐ高レベルのメンバー相手でも凌いで逃げ切ってしまった走りはとても7歳の牝馬には見えません。昨年は終始アナザートゥルースに突かれて脚が持ちませんでしたが、今年は競る相手がいなかったのも幸いでした。

ラップタイムを見ると、12.1-11.5-12.5-12.6-12.3-12.5-12.6-13.0-14.4と最後は一杯になっていますが、コーナーに入るまできれいなラップを刻み続ける見事な走りでした。
次走はJBCへ向かうとのことですが、左回りが得意な馬だけに右回りの金沢競馬場をこなせるかがポイントになりそうです。

2着 ダノンファラオ

近走鞍上を務めた川田騎手がクリソベリルに乗るため、今回は横山武史騎手との初コンビで参戦でした。
ジャパンダートダービーを勝っているG1ホースですが、鋭い末脚よりも長く脚を使うタイプで、ムラ駆けの一面もあります。

今回は前を走る馬たちを終始追いかける姿を見せ、鞭が入ったところでもしっかり反応してサルサディオーネを追い詰めましたが、あと半馬身届かずの2着でした。
前走の帝王賞では逃げるカジノフォンテンを追いかけて共倒れとなってしまいましたが、今日の走りはダノンファラオとしては落ち着いて走れていたように見えました。

ダイオライト記念を3番手から伸びて勝っているように、スタミナ比べになればタフな馬なので、カジノフォンテンやサルサディオーネのようなペースメイクしてくれる馬がいるレースの方が実力を発揮できるように見えます。本来はメンバーレベルの上がる大勝負こそ強いタイプでしょう。

3着 メイショウダジン

前走の西日本スポーツ杯を勝って3勝クラスを卒業したメイショウダジン、父はトランセンド、牝系は3代母に重賞馬メローフルーツがいます。

3歳時に出走したレパードステークスでは後方からの末脚が不発に終わり最下位に終わりましたが、1年かけて再び重賞に挑んだ今回は先行策からクリソベリルをマークするレース運びが出来ました。
最後は伸びて来たダノンファラオに交わされたものの、中段から追ってきたラストマンとノンコノユメの末脚は凌いだので、相手なりに頑張れるタイプなのでしょう。

後傾ラップのレースの方が成績が良いので、前が引っ張ってくれるスタミナ比べのレースの方が向きそうです。

4着 ラストマン

父ゴールドアリュール、母母キャサリーンパ―なのでクリソベリルと血統構成が3/4同じいとこの関係にある馬です。中でも母父もミスプロ系で共通なので血統構成に関して言えばかなり近い存在と言えます。

3歳時から重賞で走っていたクリソベリルとは対照的に、前走マーキュリーカップが初の重賞チャレンジでしたが、中段から届かずも力の要る馬場だった盛岡競馬場で2番上がりで5着入選、見どころのある走りを見せていました。

残り400mから菅原明良騎手の鞭に応えて今回は上り最速を繰り出していましたが、逃げたサルサディオーネにはまだ及びませんでした。それでも3着のメイショウダジンにクビ差まで迫ったので、末脚比べのレースで出番が来そうですね。今後の番組ですと、勝利実績のある東京1600mコースで行われる武蔵野ステークスあたりで好走しそうです。

5着 ノンコノユメ

前走帝王賞ではほぼ最後方から追込む往年の走りを見せて2着と古豪健在を見せつけてくれたノンコノユメ。
私が初めて東京競馬場で見た2016年のフェブラリーステークスが5年も前のことですから、長く活躍し続ける姿に敬意を表さずにはいられません。

デビューから最近まで440-450キロ台のダート馬としては小柄な馬体でしたが、今回は自身初の460キロ台での出走、艶のある馬体には衰えはまだまだ見られませんでした。

逃げるサルサディオーネとの差を詰めるために向こう正面から早めに動き出し、直線でも進路を外に取った分最後はラストマンに先着を許しましたが、ロングスパートを仕掛けても上りタイムがダノンファラオと変わらない3F39.3秒ですから、ここを叩いての本番でも末脚に期待できそうです。

6着 クリソベリル

国内ダート最強馬の約9か月ぶりの復帰戦は、6着敗戦の結果になりました。
サウジカップ、前走のチャンピオンズカップ以外の負けが無く、先行してパワフルな走りで悠々抜け出すのが普段のレーススタイルですが、今回は序盤こそいつも通りの先行策で走れたものの、最後は末脚を発揮できずに後続に交わされてしまいました。

レース後のインタビューで川田騎手が久々の分手ごたえが一杯だったことと併せて話していたのは「返し馬から競馬前、競馬中も、競馬後も本人が競馬を楽しんでいる様子があった」ということ。
ケガをすると、また痛むのを恐れて本気を出さなくなる馬もいる中で、クリソベリルの競馬に対するメンタルは以前と変わらぬまま復帰できたことが伺える発言でした。

今後はケガをする以前に近いところまで体力や心肺機能が戻せるかが課題になりそうですが、5着のノンコノユメのように、ダート競馬は息長く活躍できる舞台でもあるので、無理をせずじっくりと強いクリソベリルに戻れる日を待ちましょう。

レース総評

長期休養明けのクリソベリル、大敗後の秋初戦だったダノンファラオがいずれも本調子ではなかったにせよ、強力なメンバーが相手でも逃げ切ってしまったサルサディオーネはまさに『南関の女傑』と言える存在になりましたね。
しかもサルサディオーネは現在7歳、中央の牝馬であれば多くの馬が引退し繫殖入りする馬齢でもその走りが進化していることに驚きを隠せません。

南関トップクラスのノンコノユメも9歳で5着と実力を見せてくれましたし、中央勢も本気で挑まないと勝ち負けできないレベルに地方競馬の馬たちもパワーアップしていますね。
テレ玉杯オーバルスプリントでも2~6着が南関所属馬でしたし、中央からの移籍組を考慮してもレベルの差は年々埋まっているのかもしれません。

本番のJBC競争に向けて、各陣営が仕上げ切ることが出来るのか、また中央の重賞に向かうであろうラストマンやメイショウダジンの今後の走りにも期待が持てる1戦でした。

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