[クイーン賞]スタートからクレイジーアクセル全開 生え抜き馬がクイーン賞でつかんだビッグタイトル

レース名にちなみ、世界名バンド「Queen」の名曲をBGMに馬場入場する。毎年恒例になったクイーン賞のひとコマ。牝馬限定戦のハンデ戦とあって、馬券下手な筆者にとっては、無い脳みそをフル稼働しても当たらない難解なレースでもある。

冗談はさておき、今回はクレイジーアクセルのことを書かせていただく。同馬は父ロージズインメイ、母ベアフルート、母の父サクラバクシンオー。父はドバイWCの覇者で、産駒にはダートでの活躍馬が多く、粘り強いというイメージがある。そして、母父はいわずとしれた稀代の快速馬。本馬はまさに父と母父の良いところを受け継いだ、スピードと粘り強さにあふれる牝馬だった。

2017年7月に大井競馬場でデビュー勝ちを収めたが、着差はわずかにハナ。その後、ローレル賞4着に素質の片鱗を見せたが、2歳時は4戦1勝に終わっており、若駒のころはそこまで目立たなかった。だが、3歳に入って逃げ戦法を身につけるとまるで別馬のように覚醒。2018年5月の東京湾カップで初タイトルを手にすると、続く関東オークスでも3着に入った。先行馬が壊滅する、超ハイペースを粘っての好走。非常に価値のある内容といっていい。

余談だが、同レースの2着馬ゴールドパテックは、1走前の東京プリンセス賞で勝ち馬に14馬身離された3着馬。勝者グラヴィオーラ、そして2着プロミストパークは故障ですぐに引退してしまった。ゴールドパテック、そして別路線からきたクレイジーアクセルの活躍を見ると、改めて世代レベルの高さを実感。と、同時にグラヴィオーラとプロミストパークが現役を続けられていれば……と思ってしまう。

少し脱線したが、話をクレイジーアクセルのことに戻そう。同馬はその後、引き続き数々の重賞にチャレンジするが、なかなか結果が出ず。秋のサルビアカップ〜ロジータ記念では、同世代の牝馬にそれぞれ完敗。4歳を迎えた2019年初頭には、TCK女王盃やエンプレス杯にも挑戦したが、それぞれ5着、11着と敗れている。気が勝っているからなのか、逃げ馬の宿命でマークされるからなのか……。いずれにせよ白星が遠かった。

7月。同馬は門別のノースクイーンカップにいた。鞍上には地方を代表する名手、吉原寛人騎手を迎え、3番人気で出走。1馬身半差の実に鮮やかな逃げ切り勝ちで、久々の美酒を挙げた。これがきっかけとなったか、続くビューチフルドリーマーカップも3馬身差で快勝。「牝馬は格より勢い」とはよくいったものである。大井に戻ってレディスプレリュード。さすがに勝利とはならなかったが、単勝104.1倍の人気に反発するあわやの走りを見せた。私自身も「やっぱり。この世代は強い。アクセルは交流でもやれる」と、感じたことをよく覚えている。ちなみに、馬券は◎クレイジーアクセルの複勝。ゴール前で交わされたときにはヒザから崩れ落ちたことも、今となっては良い思い出……かもしれない。

同馬はJBCレディスクラシックには出走せず、その後はクイーン賞に照準。アンデスクイーンやプリンシアコメータなど牝馬路線の強豪が揃ったが、52kgの軽ハンデに加えて、好調な勢いも買われたか4番人気に支持される。ちょいちょい筆者の馬券ネタを挟んで恐縮だが、一応の告白。前走時に「交流でも通用する」と言っておきながら、同型のラインカリーナと競り合うとみた私は、◎を打たなかったことを書き記しておく。

レース直前に激しい降雨があり、馬場が急速に悪化。一気に前残りの馬場へと変ぼうした。レース後に「雨が痛かった」と残した陣営があったように、恵みの雨となった陣営、災いした陣営、明暗は分かれたようだ。もちろんクレイジーアクセルにとってはプラス。運も実力のうちということか。

最内枠、出負けしたら最後。ラインカリーナの存在は気になるところだったが、ゲートが開くとアクセル全開でロケットスタートを決めた。同型馬はとても競りかけられる雰囲気ではなく、単機で運ぶことができた。道中はずっと12秒台。交流重賞とはいえ、牝馬にはさすがにキツいペースだった。4コーナー付近では全馬がアラアラ。もちろんクレイジーアクセル自身も脚があがって、いっぱいいっぱいだったが、そこからが同馬の真骨頂。直線は13.2-14.2と限界ぎりぎりの我慢比べに持ち込み、2馬身半より差を詰めさせることはなかった。ついにつかんだビッグタイトル。地方生え抜き馬が大きな成果を残した。

その後は燃え尽きてしまったか、ついに白星を挙げることはなかったが、クイーン賞の快挙から少ししてNARグランプリ4歳以上最優秀牝馬を獲得している。正直、馬券的には泣かされた一頭。だが、クレイジーアクセルというパワフルな馬名に加えて、地方生え抜きという点が筆者に強く突き刺さった馬でもあった。さて、今度は仔に夢を託そうか。2022年産駒はクレイジーキックというらしい。無事にデビューを迎えて、ビッグタイトルをつかんでくれたら嬉しい限りだ。

写真:s.taka

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