
2026年中山金杯で、ひとつの“血脈”がピリオドを打った。
同レースに出走したリフレーミング(牡8)が、優勝のカラマティアノスから遅れること0秒3の7着でゴール板を通過する。リフレーミングは中山金杯から3日後、ターフを去ることが発表され、今後は種牡馬として次のステージに進むこととなった。

ここまでは、もしかしたら普通の光景かしれない。明け8歳で36戦を消化した牡馬が、現役引退を発表。GⅠ馬ではないが、種牡馬として供用される…。
寒い時期にほっこりするようなニュースである。
しかし、リフレーミングが「キングヘイロー産駒の中央競馬における最後の現役馬だった」ということを知れば、一抹の寂しさが漂ってくる。
あの鹿毛のお坊ちゃんがこの世を去ってから、5年以上が経過した。彼がこの世を去っても、子どもたちは長く、しぶとく、そして驚くほどドラマチックに走り続けた。
キングヘイローという馬。父はダンシングブレーヴ、母はグッバイヘイロー。血統表はまるで宝石箱のように輝き、デビュー前からの期待は膨大に膨らんでいた。だが、彼が歩んだ道は決して順風満帆ではなかった。若き福永祐一騎手を背にデビューから3連勝し、クラッシック候補の筆頭といわれた。4歳(現3歳)になって、スペシャルウィーク、セイウンスカイと共に三強を形成。弥生賞、皐月賞は上位を3頭で独占…しかし、キングヘイローだけが勝てなかった。そして、日本ダービーでの惨敗。距離の壁、展開の壁、気性の壁、そしてファンの焦れったいほどの期待。
それでも彼は折れず、諦めず、6歳(現5歳)春に高松宮記念で頂点を掴んだ。

苦労して、苦労して、苦労して…“報われることの尊さ”を競馬ファンに教えてくれた瞬間だった。
そして、その精神は、確かに産駒たちへと受け継がれた。
しぶとさ、個性、そして “愛されキャラ”。キングヘイロー産駒たちは、どこか不思議な魅力を持っていた。派手なスピードよりも、粘り強さと個性を持つ産駒たちが多く登場した。
勝ち切れない時期があっても、気づけばまた掲示板に顔を出す。ファンたちはそんな彼らに、どこかキングヘイロー自身の影を見ていたのかもしれない。
キングヘイロー産駒は、2年目の産駒からオークス、秋華賞を制したカワカミプリンセスが登場。3つ目のGⅠを狙った、エリザベス女王杯では1着降着になったものの、2006年のJRA賞、最優秀3歳牝馬、最優秀父内国産馬のタイトルを獲得した。

また、2009年にはローレルゲレイロが、高松宮記念、スプリンターズステークスの春秋スプリントGⅠを制覇する。春の高松宮記念では親子制覇を、スプリンターズステークスでは、ビービーガルダンと1cm差の写真判定を制し、話題の多いGⅠ春秋連覇を成し遂げている。

ダート界でもキングヘイロー産駒は活躍した。
キタサンミカヅキは、中央ではオープン特別勝利で留まったが、南関東に移籍すると、交流重賞東京盃(JpnⅡ)を連覇、アフター5スター賞3連覇など、南関東重賞7勝を記録した。
JBCレディスクラシック(JpnⅠ)を制覇したメーデイアも、キングヘイロー産駒らしい個性的な牝馬だった。5歳になると眠っていた素質が開花、引退までの1年間で交流重賞6勝をマークする。また、メーデイアの二番仔ディクテオンは、昨年の東京大賞典を制覇し、キングヘイローの孫の代でも活躍馬を出してアピールしている。
キングヘイロー産駒は、重賞戦線で輝いた馬だけでなく、条件戦で長く愛された馬も多くいた。どの馬にも共通していたのは、父から譲り受けた“簡単には終わらない”というしぶとさだろう。そして最後の産駒リフレーミングもまた、父の面影を宿していた。
キングヘイローの血は、もう“産駒”としてターフに現れることはない。それは、ひとつの時代の終わりかもしれない。しかし、キングヘイローの血はまだ温かく息づいている。
子から、孫たちへ──。キングヘイローの血は、決して途切れることなく、次は孫やひ孫たちが、キングヘイローの物語の続きを作っていくはずだ。
血統表の右へ一段進んだ場所に「キングヘイロー」の文字を見つけるたび、ファンたちはきっと思い出す。あの不器用で、愛おしくて、最後に大輪の花を咲かせた名馬のことを…。
競馬とは、血と記憶が未来へと受け継がれていくスポーツである。
キングヘイローの孫たちが見せてくれる未来を、これからも見守っていきたい。
Photo by I.Natsume
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