「馬体の教科書」発売記念! 日本ダービー馬のつくり方―最高に走る馬の馬体構造論 序文掲載

僕が馬体を見始めたきっかけはスペシャルウィークでした。はいはい、ウマ娘ね、と思われるかもしれませんが(笑)、そうではなく、現役時代のスペシャルウィークの美しい馬体に魅せられたのです。理想の馬体といえばスペシャルウィーク、と公言してきました。

スペシャルウィークは手肢が長く、胴部には伸びあり、全体的にスラっとして、とにかく馬体のシルエットが美しい。正面から見ると、やや華奢に映るぐらい、馬体の幅の薄い馬でした。サンデーサイレンス産駒らしい馬体であったとも言えます。460~470kg台の馬体重で走り、当時の一流馬としてもやや軽い方。横から見るとそれほど小柄には見えませんが、馬体の幅が薄い分、全体の容積としてはやや小さかったということです。

日本ダービーは現地で観戦しました。最後の直線で一気に先頭に躍り出て、他馬を突き放した鋭い末脚は、今でも忘れられません。片手に握りしめた単勝馬券がクシャクシャになるほど僕も興奮しましたから、日本ダービー初制覇となった武豊騎手が最後の直線で鞭を落としてしまった気持ちも良く分かります。

あれから約20年の歳月を経て、日本の競馬は少しずつ大きな変化を遂げました。

最も大きく変わったことのひとつは馬場ではないでしょうか。馬場が整備され、年々走りやすくなり、速いタイムで決着するレースが増えました。1990年代は、上がり3ハロンを33秒台で走ると、驚異的な瞬発力だと驚かれましたが(スペシャルウィークですら一度も33秒台で走ったことはありません)、今となっては未勝利戦でも当たり前のように33秒台で上ってくる馬がいます。

2010年代に入ってからは、芝が傷みにくく、凸凹が少ないフラットな馬場をほぼ1年中走ることができるようになりました。排水性(水はけ)も良くなり、よほどの雨が降らない限り、昔のような道悪(不良)馬場で走ることもなくなりました。個人的には、最近は馬場が改良されすぎて、走りやすくなりすぎていると感じることもありますが、馬にとっては悪いことではないのかもしれません。

フラット(凸凹がない)でグリップの効く(地盤の良い)、より走りやすい馬場への変化に伴い、サラブレッドの理想の馬体も変わりました。凸凹で滑りやすく脚元が不安定な馬場に弱いという、大型馬にとってのデメリットが少なくなったおかげで、大きい馬が活躍できる舞台が整いました。トップスピードを出しつつパワー負けしない、より大きな馬体が求められるようになったのです。

時代の移り変わりと共に、理想の馬体も変わる
現代の日本競馬における理想の馬体は、キタサンブラックだと僕は考えます。四半世紀前はスペシャルウィークでしたが、今はキタサンブラックに変わりました。なぜキタサンブラックの馬体が理想的かというと、「薄くて大きい」からです。幅の薄い馬体はスペシャルウィークと同じですが、キタサンブラックは520~540kg台で走ったように、体高も高く、体長も長く、横から見たときの馬体の面積(フレーム)の大きさがスペシャルウィークよりもひと回り以上大きい馬体です。

キタサンブラックの馬体の薄さと面積(フレーム)の大きさが、現代の日本競馬のフラットでグリップの効く、走りやすい馬場にフィットするのです。もしキタサンブラックがスペシャルウィークと同じ時代に生まれていたら、現代ほど活躍できたか甚だ疑問です。逆も然りで、スペシャルウィークが20年遅く生まれていたら、現代の日本競馬においてはパワー負けしていたかもしれません。理想の馬体は時代と共に変化するものであり、特に馬場に大きく影響されるのです。

20年以上も経てば、人間の身体だって変わります。青年だった僕はオヤジになり、もともと薄かった髪の毛はさらに薄くなりました。若い頃はどれだけ食べても60kgを超えられず、体が大きくならずに悩んでいたのに、今は75kgを切るのも難しくなりました。薄くて大きい方向へと変化しているのです(僕の場合、薄いのは髪の毛ですが…)。

そうした時代の移り変わりを踏まえ、現代日本競馬における最高に走る馬の「馬体構造」について語っていきます。

★続きは「馬体の教科書」でお読みください!

6月3日(水)に新刊「馬体の教科書」が発売されました! この1冊さえあれば、馬体のことがほとんど分かって、なおかつ最高に走る馬を自分で選べるようになる、そんな都合の良い、いや、理想的な本になっています。書き下ろしの馬体構造論から、キタサンブラック、ゴールドシップ産駒の見かたまで、楽しく読みながら馬体について学んでいただけるはずです。

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