[重賞回顧]"福島所縁"の願いよ届け!~2026年・七夕賞~

7月7日は七夕。笹の葉に短冊をつるし、天の川に願いを込める夜を過ごす日だ。そして今年はその5日後に、競馬ファンが出走馬に願いを込める日、サマー2000シリーズのGⅢ七夕賞がやってくる。

土曜の夜中から午前中にかけて雨模様、蒸し暑さが増した福島芝2000mに、今年もそれぞれの願いを背負った16頭が集まった。

ハンデ戦ではあるが、今年の斤量差は最軽量54キロのオニャンコポンから、トップハンデ58キロのサヴォーナとカラマティアノスまでの4キロ差。先週の北九州記念ほど極端な差はなく、実績馬がトップハンデでも力を示すのか、福島適性や勢いのある馬がそれを上回るのか、はたまた近走は勝てなかった馬の復活が叶うのか。個々の見どころが多いのも、このレースの魅力ではないだろうか。

実績で目を引くのはカラマティアノスだ。今年の中山金杯を制し、中山記念でも2着。前走のエプソムCでも6着と、大きく崩れてはいない。今回は津村明秀騎手の騎乗停止により、岩田康誠騎手へ乗り替わりとなる。その岩田康騎手は、ここを勝てばJRA全10場重賞制覇。史上9人目の快挙へ、記録が懸かる一戦で、充実期のカラマティアノスを勝利へ導けるだろうか。

一方、福島適性で譲れないのがサヴォーナである。福島では3戦3勝。前走は春の福島で福島民報杯を勝利し、今回はトップハンデ58キロを背負う。距離は2400m前後を得意としながら、コース相性は抜群だ。

福島競馬場で馬券圏内を外していないアスクナイスショーは、今年のラジオNIKKEI賞を勝った田辺裕信騎手とのコンビで重賞初制覇を狙う。3歳時にラジオNIKKEI賞2着の実績があるセンツブラッドも近走の着順だけでは測れない一頭だ。

七夕賞は、毎年のように夏の福島らしい難しさを見せるハンデ重賞である。実績か、適性か、勢いか。それとも、騎手の記録に導かれる一手か。短冊に託された願いが少し遅れて揺れる福島で、今年もゲートインが近づいている。

レース概況

スタートはばらつき、クリスマスパレードとリカンカブールが出遅れる。内からショウナンマグマがまずはハナに立ち、外からアスクナイスショー。これを追いかけるようにセンツブラッド、バトルボーンが続く。ショウナンマグマの後方にはコントラポストの姿もあり、大外から先行集団に追いついてきたサヴォーナまでが前の一団となって、1コーナーへ入っていった。

中団にはヤマニンブークリエ、オーロラエックス、マイネルモーント。カラマティアノスはその後ろに続き、クリスマスパレード、1馬身切れてボーンディスウェイ、オールナットも後方から。さらにその間にオニャンコポンが構え、最後方からは出遅れたリカンカブールと、位置を下げたメリオーレムが追いかける。

ショウナンマグマは後続を引き離し、大逃げの形を取った。離れた2番手のアスクナイスショーは、5、6馬身先を行く逃げ馬を見ながら、先団馬群をリードする。その後ろにバトルボーン、センツブラッド、コントラポストが続き、サヴォーナは先行馬群の1列後方、外めを追走した。

サヴォーナの2馬身後ろには、ヤマニンブークリエ、マイネルモーントと2頭の芦毛馬の姿が見える。外にカラマティアノス。その後ろ、後方グループの1列目にクリスマスパレード、ボーンディスウェイ、オーロラエックス。2列目の外からオールナットら後方待機組が少しずつ位置を上げ、リカンカブールとオニャンコポンは後方待機。メリオーレムは馬群から離されていく。

逃げたショウナンマグマは、1000mを57秒8のハイペースで通過して3コーナーへ入る。雨の降った後の稍重馬場でこのペースを刻んだことで、残り400mでは後続に飲まれてしまった。

代わって先頭に立ったのはアスクナイスショー。先行集団の先頭から、レースそのものの先頭へ。押し切りを狙うそのすぐ後ろからは、センツブラッドが原優介騎手の追いに応えて迫ってくる。

コーナーの外にはマイネルモーント、サヴォーナ、ボーンディスウェイらが見え、内ではショウナンマグマが下がったことで、コントラポストが追い抜くために少し外へ持ち出す。

迎えた直線。内ラチ沿いまで馬体を寄せて押し切りを狙うアスクナイスショーに、センツブラッドが挑む。ただ、先に仕掛けた分、センツブラッドは後続よりも厳しくなり、外のマイネルモーントとの2番手争いへ。そこへ、最内からオニャンコポンが抜け出してくる。ショウナンマグマとコントラポストが空けた内のスペースを、縫うように伸びてきた。

残り200m。先頭は依然としてアスクナイスショー。2番手争いではマイネルモーントが前に出て、芦毛の馬体に黄色のブリンカーを光らせながら勝ち馬を追いかける。しかし、序盤からペースを見ながら運んだアスクナイスショーの脚色は最後まで鈍らなかった。

アスクナイスショーが押し切り、2馬身半差をつけて勝利。マイネルモーントが2着。最内を抜けたオニャンコポンは、上がり3ハロン最速の末脚で3着に入り、昨年の七夕賞以来、1年ぶりとなる馬券圏内への好走を見せた。

センツブラッドが4着、5着ボーンディスウェイと、中団や後方で脚を溜めた馬たちが上位に入る中、アスクナイスショーは田辺裕信騎手の手綱で離れた2番手から押し切り、重賞初制覇を達成した。これが3度目の重賞挑戦でつかんだタイトル。勝利の夢を叶えたのは、ここまで4勝のうち3勝をともに挙げてきた田辺騎手だった。ラジオNIKKEI賞に続き、地元福島での強さを見せてくれた。

各馬短評

1着 アスクナイスショー 田辺裕信騎手

重賞3度目の挑戦で、アスクナイスショーが待望のタイトルを手にした。
ショウナンマグマが大きく逃げる中、田辺裕信騎手は離れた2番手で流れを見ながら運ぶ。逃げ馬を無理に追いかけるのではなく、先行集団の先頭として自分のリズムを守ったことが、最後の押し切りにつながった。

田辺騎手は2週前のラジオNIKKEI賞をサノノグレーターで勝利したばかり。今度は古馬重賞の福島芝2000mで、早めに動いて押し切る強気な競馬を見せてくれた。
福島を知る騎手が、馬の持ち味を信じて勝ち切った一戦である。

これまで4勝のうち3勝を田辺騎手とのコンビで挙げてきたアスクナイスショー。福島で走った全3レースで馬券圏内を外していなかった堅実さに、重賞でも押し切れる力強さが加わった。夏の福島で、サマー2000シリーズの主役候補に名乗りを上げる勝利だった。

2着 マイネルモーント 石川裕紀人騎手

マイネルモーントは、これまでも強い相手と差のない競馬を続けてきた。今回人気を集めたカラマティアノス、そして中山記念で先着を許したレーベンスティール、福島民報杯以来、再び相まみえたサヴォーナらを相手にしても、大きく力負けしていたわけではない。

今回は前が速くなり、差し脚を生かせる展開。石川裕紀人騎手は外からしっかりと脚を伸ばし、この馬の実力を改めて示した。勝ち馬には届かなかったものの、2着は昨年冬のリステッド競走、白富士S以来。当時も鞍上は石川騎手であり、手の合うコンビと言っていいだろう。

重賞タイトルにはあと一歩届かなかったが、内容は十分に評価できる。前が厳しくなる展開で、自分の脚を使って上位へ来られる馬。今後も中距離重賞で出番が回ってきそうだ。

3着 オニャンコポン 吉田豊騎手

昨年の七夕賞3着馬が、今年も同じ舞台で鮮やかに存在感を示した。前4走はすべて2桁着順。
昨年のこのレース以来、掲示板にも入れていなかったが、福島芝コースの最終盤で、エイシンフラッシュ産駒らしい一瞬の切れ味を繰り出すタイミングが訪れた。

その機を逃さず、最内へ進路を取った吉田豊騎手の判断も光った。ショウナンマグマとコントラポストが空けた内のスペースを縫うように抜け出し、メンバー最速の上がりで3着。引退も検討していたオーナーに、現役続行を決断させる走りとなった。

実は七夕賞が本線ではなく、同日の函館競馬場で行われた巴賞への出走を目指していたが、抽選でかなわず、北海道から南下して福島へ参戦したという経緯もある。その中での激走だからこそ、参戦した価値はより大きなものになった。諦めずに挑んだオニャンコポンが結果を示したのだから。
前が速くなり、差し脚が届く展開なら、一撃を狙えることを示した収穫の一戦だった。

次に狙うなら、3歳時以来走っていない福島記念だろうか。いずれにしても、オニャンコポンの切れ味はまだ終わっていない。そう思わせてくれる3着だった。

4着 センツブラッド 原優介騎手

センツブラッドは、勝ちに行ったうえでの4着だった。直線入口でアスクナイスショーを捉えにいくため、原優介騎手は早めに仕掛けて前を追った。結果として最後はマイネルモーントとオニャンコポンに交わされたが、待って届かなかったのではなく、勝負に出たうえでの敗戦である。

アスクナイスショーを捕まえ切れなかったことは、勝ち馬の強さを褒めるほかない。
それでも、3コーナーから4コーナー、直線入口にかけて前へ迫っていく姿には、この馬が重賞で戦える力を持っていることが表れていた。

昨年はラジオNIKKEI賞と鳴尾記念、2つの重賞で2着に好走している。重賞勝利まであと一歩のところにいる馬であり、今回も内容は悪くない。勝ちに行く競馬をした経験は、次の重賞挑戦につながるはずだ。

レース総評

七夕賞という名前の通り、今年もそれぞれの願いが福島芝2000mに集まった一戦だった。

福島を得意とするアスクナイスショーと田辺裕信騎手のコンビは、当地での重賞制覇を願った。
マイネルモーントは、ハイペースから差し脚が届く展開を待っていた。オニャンコポンは、16頭中15番人気を覆す復活を願い、センツブラッドもまた、重賞での惜敗から抜け出す一歩を求めていた。
ファンは、それぞれの人馬にどんな願いを重ねて見守っただろうか。

勝ったアスクナイスショーは、田辺騎手の手綱に導かれ、離れた2番手から早めに先頭へ立ち、そのまま押し切った。その姿に、同じ廣崎利洋オーナーのアスクビクターモアを思い出した人もいたのではないだろうか。名義の違いにより勝負服こそ異なるが、早めに動いて後続を封じ込める強い競馬には、どこか重なるものがあった。


そして、管理する中舘英二調教師にとっても、七夕賞は特別な重賞だったはずだ。騎手時代の1993年、ツインターボの手綱を取り、後続を大きく引き離す逃げでこのレースを制した。今年は、そのツインターボを思わせるようにショウナンマグマが大逃げを打つ展開。その後ろ、離れた2番手でレースを見つめていたのが、中舘厩舎のアスクナイスショーだった。

かつては自ら大逃げを打って七夕賞を勝った中舘英二が、今度は調教師として、大逃げ馬を追いかける立場から勝利をつかむ。ツインターボとは形こそ違えど、前で運んで後続を封じ込める競馬で、騎手、調教師としての七夕賞制覇を果たした。人馬、そして調教師にとっても意味のある七夕賞の勝利になったはずだ。

七夕の短冊に書いた願いは、すぐに叶うとは限らない。
それでも、今日見えた願いが、いつか未来のどこかで形になることを信じて、各人馬の挑戦は続いていく。

写真:@pfmpspm、ぼん(@Jordan_Jorvon)

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