![[重賞回顧]横一線を断ち切った復活の脚~2026年・しらさぎS~](https://uma-furi.com/wp-content/uploads/2026/06/2026062332.jpeg)
春のGIシリーズが終わると、いよいよ夏競馬がやってくる。
阪神競馬場の開催最終週を飾る重賞は、サマーマイルシリーズ初戦のしらさぎS。
昨年、オープン競走の米子ステークスから名称を改め、GIIIへ昇格したマイル重賞だ。
前日に全国的な雨が降った影響もあり、馬場状態は稍重。フルゲート18頭が顔をそろえ、秋のマイルCSを見据えながら、ここで存在感を示したい馬たちが集った。
実績最上位はエルトンバローズ。3歳時にラジオNIKKEI賞と毎日王冠を制した重賞2勝馬であり、GI2着の実績も持つ。昨年1月に骨折が判明し半年の休養に入ったが、今年に入っての2戦は少しずつ順位をあげ復調気配。主戦の西村淳也騎手が府中牝馬Sに向かったので、今回は松若風馬騎手との新コンビで臨んだ。
前年の第1回覇者キープカルムも、もちろん注目の一頭だ。半妹はオークス馬カムニャック。きょうだいそろって末脚を武器とするだけに、展開や馬場の影響を受けやすい面はあるものの、開催が進んだ芝コースで、再び後方から鮮やかな脚を見せられるか。鞍上は昨年と同じく坂井瑠星騎手だ。
3歳世代からは、エコロアルバが古馬に初挑戦。2歳時にはサウジアラビアロイヤルCを最後方一気で制し、朝日杯フューチュリティSでも4着に好走。その後は体調回復を優先し、ぶっつけ本番で挑んだNHKマイルCでは、高速決着の中で大外から追い込んだものの、0.7秒差9着と春のG1には届かなかった。仕切り直しの一戦となる今回は、出走馬中最軽量となる斤量53kg。鞍上は、前走に続いて横山和生騎手が務める。
昨年のダービーから半年の休養を挟み、今年はマイル路線へ舵を切った毎日杯勝ち馬ファンダム。京都金杯を制したブエナオンダ。さらに、オープンクラスで実績を重ねてきた馬たちに加え、3勝クラスを突破して重賞初挑戦を迎える馬も名を連ねた。
日が影った阪神競馬場の向こう正面で、夏のマイル路線を占う一戦のゲートインが始まった。
レース概況
スタートで出負けしたエコロアルバとメイショウシンタケが後方からの競馬となる一方、内のスマートワイス、シンフォーエバーに加え、外からもメタルスピード、スリールミニョン、タガノエルピーダが勢いをつけて位置を取りに行く。
メタルスピードがハナを取り切ると、スリールミニョンが2番手で追走。タガノエルピーダが位置を上げて3番手につけ、スマートワイスは控えて4番手。5番手で折り合うシンフォーエバーの外から、ショウナンアデイブがポジションを上げていく。さらに、ファーベント、カズミクラーシュが先行集団の後ろを追走した。
開催最終週に加え、前日の雨の影響も残る稍重の芝。内ラチ沿いはところどころ芝が捲れ、各人馬が内を空け、傷んだ部分を避けるように進んでいく。中団以降の馬たちも前の動きを見ながら、直線でどこへ持ち出すかを測っているようにも映った。
中団のインにはファインライン、サイルーン。外にはファンダム、そしてエルトンバローズの姿もある。松若騎手は、内を避ける馬たちの動きを見ながら、安全な外を回る策を選んだ格好だ。
無理に前を追いかけることはせず、後方で勝負に備えた組にはキープカルム、ブエナオンダ、ミニトランザットの3頭が並ぶ。その後ろに、出負けしたメイショウシンタケとエコロアルバ。さらに最後方には、切れ味鋭い末脚が武器のスイープアワーズが控えてコーナーへ進んだ。
3コーナーから4コーナーへ向かう道中も、隊列は大きく変わらない。各馬は距離ロスを抑えながらも、直線での進路を見据え、内外に大きく広がっていく。逃げるメタルスピードはロスを最小限に抑えるようにラチ沿いを回り、後方から末脚を繰り出す馬たちは、直線へ向いて外へと進路を求めた。
勝負どころで、馬群は一気に横へ広がった。内ラチ沿いで粘り込みを図るメタルスピードに対し、馬群の外から差し馬たちが襲い掛かる。先行集団の後ろから抜け出したカズミクラーシュと、それに併せるようにエルトンバローズが伸びてくる。その2頭の間を狙うようにファンダムが脚を使い、外からはキープカルム。さらに外ラチ側まで広がって、ミニトランザット、エコロアルバ、スイープアワーズも末脚を伸ばした。
馬場の真ん中から外にかけて、何頭もの馬が横並びのままゴールへ迫る。残り200mを過ぎても、決定的に抜け出す馬はまだいない。稍重の阪神芝1600m、開催最終週の傷んだ馬場を舞台に、内外いっぱいに広がった各馬が最後の力を振り絞る。
その接戦から、最後に半馬身だけ前へ出たのがエルトンバローズだった。松若騎手の叱咤に応え、長く脚を使って後続を凌ぎ切る。2023年毎日王冠以来となる勝利は、サマーマイルシリーズ開幕戦を飾るにふさわしい、実績馬の底力を示す重賞3勝目となった。

2着には前年の覇者キープカルム。3着には、直線で手前を替えてから大外を伸びてきたエコロアルバが入り、内のファンダムが4着。2着から4着まではハナ差、ハナ差の大接戦であった。サマーマイルシリーズ初戦は、後方から末脚を伸ばした馬たちが上位を占める中で、エルトンバローズが中団から先に抜け出し、後続を振り切って復活の狼煙をあげた。
各馬短評
1着 エルトンバローズ 松若風馬騎手
実績最上位の実力馬が、復活を告げる勝利を挙げた。道中は中団の外でリズムを整え、内の傷んだ馬場を避けながら、勝負どころまでじっくり脚を温存。直線では早めに進出し、後方から迫る各馬を最後まで凌ぎ切った。

開催が進んだ稍重馬場に苦戦する馬もいた中、持続力を武器とするエルトンバローズは、外を回りながらも中団でいつでもスパートできる態勢を整えていた。力の要る馬場で前を交わし、後続の追撃を封じ込める、この馬の強みが生きた力強い走りだった。
究極の末脚比べでは分が悪くとも、長く脚を使う形なら、6歳となった今年もまだまだ重賞戦線で戦える姿を見せた。今回は府中牝馬Sに向かった主戦の西村淳騎手の代打で勝利しただけに、次走どちらが乗るかにも注目したい。
2着 キープカルム 坂井瑠星騎手
前年覇者として臨んだ一戦で、今年も確かな決め手を見せた。昨年から斤量が1キロ増えても、能力を発揮できる舞台であれば、重賞でも勝ち負けに持ち込めることを改めて示している。
道中は後方のインコースでロスなく脚を溜め、直線では馬場の外へ進路を取って力強く伸びてきた。坂井瑠星騎手の追い出しに応え、最後は勝ち馬に半馬身届かなかったものの、2着争いではきっちり前に出る。重賞馬としての地力を示す内容だった。

重賞勝ちは昨年のしらさぎSのみだが、阪神、京都、福島、中山と、4つの競馬場で勝ち星を挙げている。コースを問わず、自身の脚を生かせる展開なら上位争いに加われる馬だ。昨年勝てなかった中京記念、そして一度だけ経験のある新潟競馬場で行われる関屋記念など、サマーマイルシリーズの先でも、まだまだこの馬の鋭い伸びを見てみたい。
3着 エコロアルバ 横山和生騎手
スタートで出負けし、序盤は後方からの競馬となった。ただ、これまでのレースでもゲートを出てから二の脚がつくまでに時間を要し、後方から運ぶ形が多かった馬。今回も序盤の位置取りより、道中で脚を溜め、直線でどこまで伸びてこられるかが焦点となった。
古馬相手の重賞初挑戦で、斤量53kgの恩恵もあったとはいえ、最後は大外から脚を伸ばして3着まで浮上。エンジンがかかるまでしっかり追われる必要はあるものの、一度勢いに乗ってからの伸びは目を引いた。1600mに限らず、距離を延ばして持ち味がさらに生きる可能性もありそうだ。

今回のように直線を内外いっぱいに使える舞台は合っており、新馬戦を勝った新潟競馬場なら、関屋記念でも面白い存在になるだろう。あるいは距離を延ばして新潟記念という選択肢も考えてみたくなる。今回がまだデビュー5戦目。今後へ向けても収穫の大きい3着であり、伸びしろの大きさを感じさせる一戦だった。
4着 ファンダム 北村宏司騎手
デビューから3連勝で、リステッドのジュニアC、GⅢの毎日杯を制したファンダム。特に毎日杯で繰り出した上がり32秒5の末脚は、最後方から全馬を交わし去る鮮やかなものだった。ピッチの速い走りで一気に加速していく姿には、父サートゥルナーリアを彷彿とさせる高い瞬発力があった。
その後、直行したダービーでは距離が長く、1200mのオーシャンS、1400mの京王杯スプリングCでは本来の持ち味を発揮し切れなかった。それだけに、1600m戦のここで勝ち馬エルトンバローズを追いかけ、僅差の4着まで来た走りは、この馬がマイルでこそ輝く存在であることを示したのではないだろうか。
レース前の追い切りから、スピードに乗った走りを披露し、復調の兆しは見えていた。今回の内容なら、マイル重賞で再び主役を争う日も遠くない。状態を維持できれば、次こそ差し切りまで狙える位置にいる。
5着 スイープアワーズ 国分優作騎手
父ディープインパクト、母スイープトウショウという良血馬として、デビュー前から注目を集めていたスイープアワーズ。ディープインパクトのラストクロップの一頭であり、友道康夫厩舎から宮地貴稔厩舎へ転厩してからは、2着、2着、1着と3戦続けて好走。準オープンを卒業し、6歳にして初の重賞挑戦を迎えた。
重賞の舞台でも、後方で折り合いに徹し、最後の直線にかける自身のスタイルを貫いた。開催最終週で内を空けてレースが進んだこともあり、直線ではいつも以上に外へ進路を取る形。エコロアルバのさらに外から脚を伸ばしたため、2着から4着までの大接戦にはクビ差届かなかったものの、最後までしっかりと伸びている。

すでにオープンクラスで実績を持つファンダムと斤量差なしで、上がり3位の脚を使えたことは収穫だろう。初の重賞挑戦でも自身の持ち味を発揮できた内容であり、今後さらに上を目指せる期待を抱かせた。例年、本格的な夏競馬は1戦に集中して挑んでいるだけに、次はどこに照準を合わせるのかにも注目したい。
レース総評
今年のしらさぎSは、前日の雨を受けた稍重馬場で行われた。
前週の宝塚記念に続いて雨が降った阪神競馬場は内ラチ沿いの芝が傷み、各馬が道中外目で進路を探る中、馬群は大きく横に広がり、最後は馬場の真ん中から外にかけて何頭もの馬が脚を伸ばす、見応えある接戦となった。
その中で勝ち切ったのは、実績最上位のエルトンバローズだった。
力の要る馬場で長く脚を使い、先に抜け出して究極の瞬発力勝負に持ち込ませず、後続を封じ込める競馬。
松若風馬騎手は内の傷んだ馬場を避けつつ、中団の外でこの馬の持続力を引き出した。
2023年毎日王冠以来の勝利は、6歳となった今年もなお重賞戦線で戦えることを示す復活勝利であった。
一方で、2着キープカルム、3着エコロアルバ、4着ファンダム、5着スイープアワーズも、それぞれに次へつながる内容だった。前年覇者キープカルムは斤量が増えても末脚の確かさを示し、3歳馬エコロアルバは古馬相手の重賞初挑戦で大外から鋭く伸びた。ファンダムはマイルでこそ持ち味が生きることを示し、スイープアワーズも初の重賞挑戦で自身のスタイルを貫いた。
夏のマイル路線は、ここから中京記念、関屋記念、京成杯AHへと続いていく。しらさぎSで復活を果たしたエルトンバローズが、このままシリーズの主役となるのか。
それとも、僅差で続いた馬たちが次の舞台で巻き返すのか。横一線の攻防で幕を開けた2026年のサマーマイルシリーズは、初戦から次走への期待を大きく膨らませるものとなった。

写真:@gomashiophoto、INONECO
![[今週の競馬]函館で伝統のハンデ重賞、福島では秋を見据える3歳重賞が開催!](https://uma-furi.com/wp-content/uploads/2026/06/2026060402-300x200.jpg)
![[連載・片目のサラブレッド福ちゃんのPERFECT DAYS]咆哮(シーズン2-22)](https://uma-furi.com/wp-content/uploads/2026/06/202606221-300x225.jpg)