![[重賞回顧]夏の函館、世代の1番星を目指して~2026年・函館2歳S~](https://uma-furi.com/wp-content/uploads/2026/07/202607221-scaled.jpeg)
夏の北海道開催、函館競馬場での最後の重賞は、今年デビューした2歳馬たちの最初のJRA重賞、函館2歳Sだ。
小倉競馬場では九州産馬限定のオープン戦、ひまわり賞が行われ、佐賀競馬から参戦したタカヨシが僅差の2着に好走した。一方、こちらのレースには門別競馬でデビューした馬たちも挑戦する。昨年はJRA移籍初戦のエイシンディードが逃げ切っており、早期にデビューを果たした2歳馬たちが、所属の垣根を越えて競い合う舞台となっている。
今年は重馬場での開催。1Rの未勝利戦では1分12秒0の時計を計時し、力の要る勝負になることを予感させた。
注目を集めているのは、Twirling Candy産駒のシグレ。新馬戦では6頭立てながら、持ったままで2着以下を6馬身突き放した。良馬場での新馬戦だっただけに、重馬場への対応がカギとなるが、父は芝、ダート、オールウェザーの重賞勝ち馬で、母父としては今年の安田記念を勝ったシックスペンスを輩出している。鞍上は新馬戦から継続して武豊騎手が務める。
重馬場で注目したいのは、モーニン産駒のノリヤンモーニンだ。前回このレースが重馬場となった2023年、勝ち馬ゼルトザームはモーニンの父、ヘニーヒューズの産駒だった。ダート新馬戦から芝重賞へ挑み、このレースを制している。
かつての覇者ゼルトザームも、今回の挑戦者ノリヤンモーニンも、鞍上は浜中俊騎手。馬場を味方につけ、芝とダート、両方で勝利を挙げることができるだろうか。なお、モーニン産駒はこれまで芝レースでの勝利がなく、ここを勝てば産駒としての芝初勝利という記録も待っている。
騎手にも注目したい函館開催。地元函館出身の丹内祐次騎手は、この日の7R終了時点で今年の函館リーディングを決めた。今回はダイシンドラゴンとの初コンビで参戦。このレースに出走する中では数少ない、2戦のキャリアを持つ馬であり、地元で手にしたリーディングの勢いそのままに、重賞制覇を目指す一戦となる。
門別からJRAに移籍したウンスイも迎えて全13頭。午前中は雨が降り、重馬場となった芝コースは、レースが進むごとに少しずつ掘れていく。1200mを走り切る速さと、重馬場を乗り越える力。その双方を備えた世代最初の重賞ウィナーは、果たしてどの馬だろうか。
レース概況
ばらついたスタートの中から、好発進を決めたのはノリヤンモーニン。外からシグレも並びかけて前を目指す。セタキト、フェリチタ、ウンスイ、イモージェン、シグレの5頭が、1馬身ほど前にいるノリヤンモーニンを追いかけるポジション。大外枠からロンドンガーズも徐々に位置を上げていった。
馬群を引っ張るノリヤンモーニンに対し、シグレがコーナー前で並びかけようとする。しかし、浜中騎手の合図に応えたノリヤンモーニンが再び先頭を主張。3番手にイモージェン、4番手にロンドンガーズが続く。後半勝負を選んだ馬たちも、コーナーで前との差を詰めながら直線へ向かった。
直線に向いてもノリヤンモーニンは粘る。外から追いかけるシグレの脚色が鈍ったところで、2頭の間からイモージェンが抜け出しを図る。さらに、シグレの外からフェリチタが勢いよく伸びてきた。
内のイモージェン、外のフェリチタ。2頭の攻防は、外から差したフェリチタがクビ差で制し、世代最初のJRA重賞ウィナーに輝いた。前でペースを作った2頭を最後に交わしたダイシンドラゴンが3着。ノリヤンモーニンが4着、シグレは5着でレースを終えた。決着タイムは1分10秒4。

前でレースを進めたイモージェン、ノリヤンモーニン、シグレが2着、4着、5着に入り、重馬場の函館芝1200mでもスピード能力を示した一方で、序盤から無理に前を追いかけず、末脚を溜めたフェリチタが差し切り勝ち。その進路をなぞるように追いかけたダイシンドラゴンも3着に入り、それぞれの戦略がぶつかり合ったレースだった。
各馬短評
1着 フェリチタ 横山和生騎手
世代最初のJRA重賞ウィナーとなったのは、横山和生騎手騎乗のフェリチタだった。
新馬戦は佐々木大輔騎手とのコンビで逃げ切り勝ち。今回は横山和生騎手が序盤で控える判断を見せ、前で運んだ3頭を差し切る形となった。最序盤こそノリヤンモーニンを追う2番手集団にいたが、前半400mのうちに4-5番手の位置に下げ、脚を溜める競馬を選んでいる。
重馬場の函館芝1200mで、前半から無理に動きすぎなかったことは大きかった。さらに、芝の傷みが比較的少ないコーナーの外めを回したことで、直線まで脚を残すことができた。

直線では、粘るノリヤンモーニン、前を追うシグレ、間から抜け出すイモージェンの外へ進路を取る。馬場の悪い中でもしっかり脚を使い、最後はイモージェンとの接戦をクビ差で制した。スピードだけでなく、馬場をこなす力と、追われてからの勝負根性を見せた勝利だった。
2歳夏の重賞は、完成度の高さが問われる舞台でもある。その中で、鞍上の指示に応えて運び、最後に差し切る競馬ができたことは大きい。
賞金を加算できたことで、次の焦点は距離延長への対応となる。マイルまでこなせるなら、冬の阪神ジュベナイルフィリーズ、そして春の桜花賞も視界に入ってくる。
2着 イモージェン 佐々木大輔騎手
新種牡馬サリオスの産駒としてJRA初勝利をあげたイモージェンは、逃げるノリヤンモーニン、追いかけるシグレの後ろ、3番手でレースを受けながら最後までしぶとく脚を使った。
直線では、その2頭の間から抜け出しを図る。重馬場の中で前半から流れに乗り、最後まで勝ち負けに加わった内容は、佐々木騎手が前の2頭を目標に置きながら、勝負どころを測っていたからこその走りだろう。
勝ち馬フェリチタにはクビ差だけ及ばなかったが、内から抜け出した後も簡単には譲らなかった。重馬場で前目から押し切りを狙って2着。勝利には届かなかったものの、スタートで促されてからゴールまでしっかり走り切り、スピードの持続力を見せてくれた。
母母は名牝シーザリオ。半兄ヴィンセンシオは弥生賞2着から皐月賞に挑んだ。イモージェン自身は牝馬であり、直線で競い合ったフェリチタと同じく、阪神ジュベナイルフィリーズ、桜花賞へ向かう道も意識される存在になるだろう。
ブリンカーを着用しているが、促されながら追走できる余裕もあり、距離延長にも対応できる可能性は十分にありそうだ。2歳夏の函館で見せた粘り強さは、この先の成長を楽しみにさせるものだった。
3着 ダイシンドラゴン 丹内祐次騎手
地元函館出身の丹内祐次騎手は、この日の7R終了時点で今年の函館リーディングを決めていた。
勢いそのままに臨んだこのレースで、ダイシンドラゴンを3着へ導いている。
道中は出たなりに中団で脚を溜める形。2枠2番からのスタートで、序盤から無理に前を追いかけることはせず、道中で少しずつ位置を上げていった。コーナーからは、フェリチタが伸びた進路をなぞるように脚を使い、前でペースを作ったノリヤンモーニン、シグレを最後に交わしている。
2戦のキャリアを持つ馬らしく、重賞の流れでも大きく崩れず、終いまでしっかり走れたことは収穫だろう。勝ち馬には届かなかったが、フェリチタと同じ上がりタイムでレースを終えている。
今回は道中の位置取り、わずか一列分の差が着順に表れた3着だった。前の馬を差せる展開になれば、2勝目も遠くない。地元の函館開催を締めくくる重賞で、丹内騎手とともに存在感を示す走りだった。
4着 ノリヤンモーニン 浜中俊騎手
好発進を決め、ダート1000mの新馬戦と同様にレースを引っ張ったのがノリヤンモーニンだった。
重馬場の芝1200mでも先頭に立ち、シグレが並びかけようとする場面でも、浜中騎手の合図に応えてもう一度前へ出る。重馬場を苦にしないパワフルな走りは、今日のレースにマッチしていたと言えるだろう。
最後は差し切りを狙っていた馬たちに交わされたが、脚色が苦しくなりながらも粘り、シグレに先着する4着を確保した。
前で運んだ馬にとって楽な馬場ではなく、終始直後にいたシグレやイモージェンに追われる展開でもあった。それでも、初めての芝重賞で、スピードと前向きさ、最後まで走り切る粘りをしっかり示している。
モーニン産駒として芝でどこまで走れるかも注目された一頭だった。今回は産駒初の芝レース勝利までは届かなかったものの、世代重賞で4着に残したパワフルな走りは、今後のダート戦でも生きてくるだろう。
5着 シグレ 武豊騎手
新馬戦を持ったままで6馬身差勝ちし、人気を集めて臨んだ一戦だった。
その新馬戦で印象に残っていたのは、ストライドの大きな走りである。良馬場では大きな推進力になったその走りも、重馬場の函館では少し走りにくそうにも見えた。
外からスムーズに前へ取りつき、ノリヤンモーニンを見ながら進める形。さらに外からロンドンガーズにも迫られ、息を入れる暇が少ない中で、重賞の舞台でも厳しい競馬を経験することになった。
それでも、コーナー前では周囲の動きに合わせて先頭へ並びかけようとする場面があり、直線では一瞬、ノリヤンモーニンとの一騎打ちになるかにも見えた。ただ、最後は馬場の影響もあったか、伸び切れず5着。上位勢には及ばなかったものの、前で勝負をしに行った内容は悲観するものではない。
今回は初めての重馬場での競馬だった。新馬戦で見せた素質が色あせるわけではなく、この経験が今後に生きるはずだ。良馬場や条件が替わった舞台で、改めてこの馬のスピードを見てみたい。
レース総評
今年の函館2歳Sは、重馬場での開催となった。
注目していた2頭、シグレとノリヤンモーニンは、それぞれに見せ場を作った。ノリヤンモーニンは重馬場を苦にしないパワフルな走りでレースを引っ張り、シグレは大きなストライドの走りが馬場に合わない中でも、能力で押し切ろうと前へ出ていった。
その2頭を直後で見ながら運んだのが、イモージェンとフェリチタだった。イモージェンは前の馬たちの間を割って抜け出しを図り、フェリチタはその外から差し切る。前で受けた馬たちが強さを見せた一方で、最後に勝敗を分けたのは、重馬場で脚を残す位置取りと、直線での進路取りだった。
勝ったフェリチタは、新馬戦の逃げ切りとは異なる競馬で重賞を制した。序盤で前を深追いせず、好位の後ろに控え、最後は外から伸びてクビ差の勝利。2歳夏の時点で、逃げても控えても競馬ができることを示した点は大きい。2着のイモージェンも、前目で流れに乗りながら最後まで譲らず、サリオス産駒として初年度から重賞で存在感を示した。
このレースで牝馬がワンツーを決めたのは、2021年以来となる。フェリチタ、イモージェンともに、ここから距離を延ばしていけるかが今後の焦点になるだろう。阪神ジュベナイルフィリーズ、さらにその先の桜花賞へ向かう道を考えるなら、1200mで見せたスピードに加え、マイルへの対応力も問われていく。
3着のダイシンドラゴンは、地元出身の丹内祐次騎手とともに、差しに構えて上位へ食い込んだ。4着ノリヤンモーニンは芝重賞でもスピードと粘りを示し、5着シグレも重馬場で厳しい競馬を経験したことが次につながるはずだ。着順は分かれたが、上位5頭それぞれが、この先へ向けた材料を残したレースだった。
来週からは、札幌、新潟、中京の3場開催が始まる。札幌競馬場で走る馬たちは、このまま函館に滞在して挑むことも多い。このまま北の地に残るのか、それとも新潟2歳Sや中京2歳Sなど、この夏の2歳重賞へ向かうのか。世代最初のJRA重賞を終えたばかりの若駒たちには、早くも次の選択肢が広がっている。
重馬場で速さと力を試された13頭。その中から、フェリチタが世代最初の重賞ウィナーとして名乗りを上げた。この夏を越え、彼女たちがどの舞台で再び姿を見せるのか。
2歳戦線の始まりを告げる一戦は、次の物語を待ちたくなる余韻を残して幕を閉じた。

写真:ぼん(@Jordan_Jorvon)
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