[重賞回顧]末脚比べ、夏の新潟を差し切ったのは~2026年・新潟2歳S~

2歳6月からデビューした新馬たちが、まず目標にするレースの一つに、夏の2歳Sがある。

2025年から小倉2歳Sが中京2歳Sに開催時期、コースとも変更され、函館、新潟、中京、そして札幌の4場で開催、左右差、距離も異なる4レースが組まれている。
デビューした時期や距離適性を探りながら、若駒たちが重賞勝利とその先の飛躍を目指すレースである。

中でも新潟2歳Sは、後のGI馬を数多く送り出してきた。過去には桜花賞馬ハープスター、皐月賞馬イスラボニータ、マイルCS勝ち馬セリフォス、秋華賞とエリザベス女王杯を制したスタニングローズ、阪神ジュベナイルフィリーズとヴィクトリアマイルの勝者アスコリピチェーノがこのレースをきっかけに飛躍している。
さらに、昨年スプリンターズSを制したウインカーネリアンも、2歳時にこの舞台へ挑んでいた。

直近ではリアライズシリウスが皐月賞2着に好走し、秋のGI勝利を目指している。
新潟の長い直線で若駒たちの可能性が試される、出世レースの一つと言って良いだろう。

今年の出走メンバーは10頭。そのうち半数の5頭が未勝利馬という構成になった。
そのため、まず人気を集めたのは新馬戦を勝って参戦する5頭である。

1番人気はレッチュベルク。新馬戦では荻野極騎手とのコンビで、直線33秒7の末脚を繰り出して快勝した。当初は継続騎乗の予定だったが、荻野騎手のケガにより、今回は田辺裕信騎手が手綱を取る。追い切りで事前にコンタクトを取り、新コンビでの重賞制覇を目指す。

続く人気はトウシンマジック。短期免許で来日中のJ.コレット騎手とのコンビで、新潟競馬場の新馬戦を勝っている。ピッチの速い走りから一瞬の加速力を見せ、上がりは32秒8。すでにこのコースを経験している点も心強い。

シャンデヴァーグは馬格こそ小さいが、新馬戦では逃げるジーティーキャリーとラスト1ハロンで併せ馬の形になり、追い比べを制した。その勝負根性は、母プールヴィルを彷彿とさせるものがある。

トップチェッカーも血統面で楽しみな存在だ。母ミッキーオリーブの全姉クロノロジストからは、ノームコア、クロノジェネシス姉妹が出ている。大舞台で輝いた牝系の血を受け継ぐ若駒が、新潟の長い直線でどのような脚を見せるのか。

そして、今年の新馬戦を席巻している新種牡馬エフフォーリアの産駒からはインカルナータが参戦する。
新馬戦では逃げて、ラスト3ハロンを33秒2でまとめるスピードを見せた。この舞台でも、自ら流れを作って押し切ることができるだろうか。

すでに勝ち星を挙げた5頭が2勝目をマークして次へ進むのか。それとも、未勝利馬の逆転が起きるのか。10頭の若駒たちがゲートへ向かい、新潟競馬場の長い直線が待つ外回りコースへ駆け出していった。

レース概況

10頭揃ったスタート。初出走のマインドフルネスはややダッシュがつかなかったものの、大きな出遅れはなく、各馬がポジション取りに動き始める。

まずハナを切ろうとしたのはエレスレイプニルだった。5番枠から内を気にしながら前へ向かうが、大外枠からインカルナータ、その内でマイホームパパも前へ進出する。3頭が前に行ったところで、田辺騎手はレッチュベルクを抑え、4番手のインに収めた。その後方にトウシンマジックが続く。

1列後ろには、最内枠のシャンデヴァーグと3番枠のトップチェッカーが並んで追走。その後ろから、スイートアリッサム、アイデアルカット、そしてマインドフルネスが隊列についていく。

インカルナータは前半600mを35秒5で通過する。新潟芝1600mの2歳重賞としては極端に速い流れではなく、各馬が直線での脚比べを意識しながら進んでいるようにも見えた。

しかし、残り800mから4コーナーへ向かうところで、先頭のインカルナータが外へ逸走してしまう。これによって2番手を追走していたマイホームパパが先頭に替わり、その外からトウシンマジックがコレット騎手とともに前を追いかけ始めた。

田辺騎手はここで一緒に動かず、レッチュベルクを内ラチ側で我慢させる。直線に向き、マイホームパパが下がっていくと、レッチュベルクとトウシンマジックの2頭による追い比べが始まった。

先に前へ出ようとしたのはトウシンマジック。しかし、このタイミングで田辺騎手がいよいよムチを入れ、レッチュベルクがスパートを開始する。道中で温存していた脚を直線でしっかり引き出し、トウシンマジックをかわして先頭へ。そこから少しずつ着差を広げていった。

最後はのびのびと駆け抜けたレッチュベルクが、1分34秒7で勝利。トウシンマジックは2着に粘ったものの、勝ち馬との差は1馬身1/4まで広がった。さらに3馬身後方では、トップチェッカーと外から追い込んだスイートアリッサムが3着争いを演じ、軍配はトップチェッカーに上がった。

5着にはシャンデヴァーグ。僅差の6着には、初出走ながらマインドフルネスが健闘した。
逸走したインカルナータも最後は隊列に戻ってきたが、直線で伸びる脚は残っておらず、9着でレースを終えた。

各馬短評

1着 レッチュベルク 田辺裕信騎手

鞍上の田辺裕信騎手は、ケガから復帰した今年の夏競馬で重賞4勝の大活躍。ラジオNIKKEI賞、七夕賞、アイビスサマーダッシュ、そして新潟2歳Sを勝った。しかも新潟での2勝は、松山弘平騎手、荻野極騎手の“代打”としての参戦だっただけに、馬の強みを活かす田辺騎手の巧さが勝利を導いたと言えるだろう。

もちろん、レッチュベルク自身も追い切りから後肢の力強い蹴り込みが目を引く動きを見せていた。ただ、競り合ったトウシンマジックとの末脚比べを制することができたのは、田辺騎手が行きたがるレッチュベルクに“仕掛けどころ”を教えながらレースを進めたからにほかならない。

序盤は前の3頭を壁にして折り合い、逃げ馬の逸走にも慌てずインで我慢する。そして直線では、最後に末脚比べを仕掛けの差で制した。レッチュベルクの能力をしっかり引き出した、見事な騎乗だった。

序盤の折り合いは、2戦目の2歳馬ならこれから少しずつ覚えていくべき課題である。重賞を勝ち、メンバーレベルが上がる次走以降の方が、かえってスムーズにレースを運べるかもしれない。秋以降も、力強い末脚を見るのが楽しみな馬が現れた。

2着 トウシンマジック J.コレット騎手

短期免許で来日しているコレット騎手が、新馬戦でともに勝利をつかんだトウシンマジック。雨の中の新潟競馬場で、半姉リバティアイランドの評判馬ダノンダックスを相手に、内ラチ沿いから鮮やかに抜け出すレースを披露していた。

今回も、その末脚を活かすレースプランを選択した。残り600m付近から少しずつ仕掛け、追い比べでは新馬戦でも見せたピッチの効いた末脚を繰り出す。しかし、その仕掛けを待っていた田辺裕信騎手のレッチュベルクに、最後は差し切られてしまった。

それでも、前走の上がり32秒8に続き、今回は33秒0。仕掛けどころからしっかり脚を伸ばすレースを2戦続けて見せ、3着以下には3馬身以上の差をつけた。レッチュベルクとの差は仕掛けどころと展開のアヤもあり、純粋な力負けと決めつけるには早すぎるだろう。

マイル戦は合っていそうで、冬の朝日杯フューチュリティSでも、その瞬発力を活かした走りを見てみたい。前走でこの馬の末脚を知っていたコレット騎手だからこそ、信じて強気に仕掛けた結果でもある。今後もこのスタイルを磨いてほしい1頭だ。

3着 トップチェッカー 北村友一騎手

北村友一騎手が、阪神の新馬戦に続いて継続騎乗。
土曜、札幌で騎乗してからの新潟参戦は、この馬への期待もあってのことだろう。

レースでは出たなりで無理に前を追いかけず、折り合い重視で中団を追走した。直線ではトウシンマジックのさらに外へ持ち出し、安全なコースを通って先頭を目指す。しかし、前の2頭による末脚比べには追いつけず、結果は3着までだった。

それでも、後ろから追い込んできたスイートアリッサムを半馬身凌いでの3着。
最後まで北村友騎手の左ムチに応えて伸びており、力は見せている。

現時点では、新潟外回りの長い直線で瞬発力を問われる競馬よりも、阪神の新馬戦で見せたように、コーナーワークを活かして脚を使う形の方が合っていそうな印象だ。
秋の京都か阪神で、前が止まる持続力戦になりそうなメンバー構成なら、今度こその期待も持てる。

9着 インカルナータ 坂井瑠星騎手

新馬戦ではスタートダッシュを決め、マイペースで逃げる形。直線で手前を替えるとピッチを一気に上げ、後続を突き放して逃げ切った。この日は東京競馬場でもエフフォーリア産駒のベルウッドディープが勝利しており、インカルナータはエフフォーリア産駒として新馬戦3頭目の勝ち上がりとなった。

決め手は左手前にあるのだろう。阪神競馬場では、直線に入ってからの加速で一気に後続を突き放す強い競馬を見せていた。

一方、今回は新潟競馬場。左回りへの対応が問われる舞台だった。阪神競馬場は右回りで、コーナーまで右手前、直線で左手前に替えることで加速につなげていた。しかし今回は、コーナーを左手前で回ってきたところ、コーナーを出る前に右手前へ替わってしまう。その直後、外へ逸走して外ラチ沿いまで行ってしまった。

坂井瑠星騎手がそこからレースに戻したものの、その間に前ではレッチュベルクとトウシンマジックの末脚比べが始まっていた。再び隊列に戻ってから後方から追い上げるには、さすがに苦しい形だった。

レース前から掛かるようなそぶりを見せており、その気性を考えれば、前に出てから一呼吸入れて逃げるスタイルが合っていそうだ。ただ、今回は初めての左回りで、手前替えの課題が浮き彫りになった敗戦という印象を受けた。

2026年9月14日以降の平地調教再審査となったため、1か月ほどレースからは離れることになる。それでも、その時間は夏の宿題をこなす期間と前向きに捉えたい。

距離は1800mの新馬戦からの転戦だっただけに、折り合いを覚えていけるのであれば、2000m戦を試してもいいかもしれない。右回りのコーナー4つのコースなどで、息を入れながら仕掛けどころを覚えていけば、新馬戦で見せた最後の脚を、今度はまっすぐ繰り出せるはずだ。まずは再審査合格の報を待ちたい。

レース総評

今年の新潟2歳Sは、2歳戦らしい若さと、素質馬同士の瞬発力比べが同居した一戦だった。

レースの流れを大きく変えたのは、ペースメイクしていたインカルナータが4コーナー手前で外へ逸走した場面である。そこで後続各馬の判断が問われた。前へ動いて勝負を決めに行ったのがトウシンマジックとコレット騎手。そして、そのトウシンマジックを相手と見るや、仕掛けどころをぎりぎりまで待ち、レッチュベルクに勝負どころを教えながら勝利へ導いたのが田辺裕信騎手だった。

2頭の騎乗には、それぞれの意図がはっきり出ていた。コレット騎手は、新馬戦で知っていたトウシンマジックの瞬発力を信じて、早めに前を捕まえにいった。一方の田辺騎手は、行きたがるレッチュベルクをなだめながら、最後まで脚を温存する。若い2歳馬にとって、いつ動くか、どこまで我慢するかは大きな課題である。その中で田辺騎手は、レースを勝ちながら馬に競馬を教えるような手綱さばきを見せた。

最後はこの2頭による瞬発力勝負となり、後続との差は3馬身以上に広がった。2頭より後ろにいた馬たちにとっては、それ以上の末脚を求められる苦しい展開だったと言える。それでも、北村友一騎手の左ムチに応えて3着を守ったトップチェッカーは、1勝馬としての力を見せた走りだった。

一方で、未勝利馬たちにも収穫はあった。後方から脚を使って3着争いに食い込んだスイートアリッサム、初出走ながら最後に6着まで追い上げたマインドフルネスの2頭は、前の2頭には離されながらも、トップチェッカーとの3着争い、シャンデヴァーグとの5着争いでそれぞれ僅差の競馬をしている。
重賞で経験したペース、馬群、直線での脚比べが、未勝利戦へ戻った時にどう活きるのか。
次走以降の走りに注目したい。

もちろん、インカルナータにも悲観ばかりの一戦ではない。今回は初めての左回りで手前替えの課題が出たが、新馬戦で見せたスピードと加速力は垣間見せた。まずは平地調教再審査をクリアし、秋のレースでもう一度まっすぐ伸びる脚を見せてほしいところだ。

新潟2歳Sは、毎年のように後のGI馬や重賞馬を送り出してきた出世レースである。今年の勝ち馬レッチュベルク、2着トウシンマジックがこの先どこまで伸びていくのか。
そして、ここで敗れた馬たちが経験を糧にどのような成長を見せるのか。そして、今年ものちに、出世レースとして振り返られる日が来るか。
夏の新潟で走った10頭のこれからを、楽しみに見守りたい。

写真:ぼん(@Jordan_Jorvon)

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