[大狩部牧場代表・下村優樹ブログ]庭先取引の信頼~大狩部だより(第4回)~

みなさん、こんにちは。

まずは先日、同じ新冠町の牧場で火災が発生し、複数のサラブレッドが命を失うという悲しい出来事がありました。いち生産者として大変、胸が痛みます。被害に遭われた牧場様に心からお見舞い申し上げます。

さて、北海道は札幌記念が終わって、合計6日に及ぶサマーセールも終了しまして、朝晩は早くも秋の気配が漂ってまいりました。弊社はまだセプテンバーセールに上場する馬たちも控えており、ぜんぜんひと息つく空気になっておりません!それでも空気感は確実に秋ですね。北海道の夏はあっという間です。セミの鳴き声もしなくって、下村少年的にはかなり寂しい気分です(笑)。

前回はサマーセール当日の更新ということもあって、セールに対する私の考えについてお話させていただきました。弊社の場合、生産馬の売買はほかに庭先取引(相対取引のこと)とターファイトクラブ様へのご提供の2種類があります。今回はその点についてみなさんにお伝えできればと思っております。

じぃじとにらめっこするシンギュラチャーム2026(父パールシークレット)

弊社はですね、先代から庭先取引が主流でして、それは今も変わっておりません。先代の頃から取引させていただいているオーナー様、私が前職で知り合ったオーナー様、それからYouTubeで知ってくださって、連絡をいただいた方もいらっしゃいます。みなさん、本当に馬が好きな方が多いです。ですから生産馬を大切にしてくださいますし、弊社の育成方針にご理解をいただいています。そういった信頼関係がないとですね、私もなかなか連絡をとったりするのは難しいです。庭先取引の利点はまさにそこで、大狩部牧場を評価してくださる方としっかり話し合いをした上で、取引できます。

といっても、庭先取引って読者のみなさんからすると、競りみたいに公開されるわけではないですし、ちょっとわかりにくい面もあります。たとえば、だいたいいつぐらいから取引されるのか、というところですが、うちの場合は出産した瞬間から取引可能です。以前、お話しましたが、今年生まれたマリントウショウのチビちゃんは生後数日でご購入いただきました。極端な話、お腹のなかに入っている状態から、雌雄関係なく生まれたら買いたいと言っていただいても売ります。私としては生まれたときに、あ、この子はターファイト様に提供しようとか、そういうことをかなり早い段階から考えます。ですが、セレクトセールの当歳を目指す場合は、誕生する前からですね。もう配合の段階からセレクトセールに上場することを考えています。セレクトは血統が重要なので、1年前から狙っていかないとなかなか上場できません。

母と放牧地を駆けるシンギュラチャーム2026(父パールシークレット)

生産馬の取引方法をなんとなく考えるのは生後3日以内ですね。セレクトセール以外のセールはその時点では考えていません。ですから選択肢はふたつ。庭先かターファイト様か。ターファイト様に提供する場合、オーナー様が一人ではない点を意識しております。何十人、何百人という方に見ていただいて、評価されなければいけません。みなさんが、この子はいいよね、魅力的だよねって思っていただける馬体と個性がないと難しいかなと思っています。そういう輝きみたいなものを生まれた直後に見せてくれた馬はターファイト様に提供しようと考えます。ちなみに今年の当歳でターファイト様に提供する当歳馬は決まっております。パールシークレットだらけです(笑)。

今年の当歳も庭先取引が進んでおりまして、パールシークレットの子はイリデッセンスとブルーイングリーンの2頭が売れました。イリデッセンスのチビちゃんを買われたオーナー様は弊社とははじめての取引でした。YouTubeをご覧になっていて、パールシークレットの子が欲しいとおっしゃっていただきました。今回、真珠君(パールシークレット)の牡馬をターファイト様に提供するのは理由があります。というのもやっぱり種牡馬をつくらなければいけないんです。多くのオーナー様がついている馬でそれを叶えられたらいいかなと。クラブだと牝馬に出資して、その牝馬の子どもにまた出資して楽しむという形が一般的ですが、出資した馬が種牡馬になって、その子どもに出資するっていう楽しみをもっていただきたいというの願いもあるんです。大手さんならそういうケースもありますよね。私はターファイト様で叶えたいと思っていて、そういうサイクルをつくれたらいいなと考えております。ターファイト様はファントムシーフが今年、種牡馬入りしましたので、そこに続いていければいいですね。

アッシュケーク2026(父パールシークレット)

庭先取引に関してはだいたい当歳のうちに売れることが多いです。オーナー様も生後数カ月のうちに決める方が多いですね。オーナー様たちも当歳がいちばん資質を隠さなくて見えやすいことをわかっていますね。オーナー様に見せる際は基本的に厩舎から出して、目の前で歩かせて、馬体を見ていただきます。といっても、チビちゃんたちはまだ人間と一緒に上手に歩けません。思いがけない動きをして、横にぶっ飛んだりとかします。そういうほかの馬がしないような動きもご覧になって、「これは普通の身体能力じゃない」「1歳になったらこういう動きは見せないよね」とおっしゃられます。そういう場ではチビちゃんたちも緊張して、ガチガチだったりするんですが、オーナー様のなかには放牧地で過ごすチビちゃんもご覧になって、さっきより柔らかい動きをするとか、バネ感があるとか、性格的な面までよくご覧になられる方が多いです。

アシェット2026(父パールシークレット)

そして、我々現場の率直な意見を聞いてくれます。もちろん、我々も隠したりしません。ここが長所で、ここは修正しなければいけないポイントだと思うので、1年間でここをこういう風にやっていこうと思いますと具体的な育成方法もお話します。そうやって話し合いをした上で、安心して買っていただけるようにしています。価格に関してもそうやって丁寧に説明させていただいた上で提示します。庭先取引ですと、こちらの高評価に対して、オーナー様も納得した上で合意できます。競りのように評価が下がることはありませんし、何百万まけろってこともありません(笑)。オーナー様は当歳の時点で買われるわけですから、この先、なにか不測の事態だって起こりかねません。リスクも背負われるわけですから、我々としても信頼関係がなければ成り立ちません。やっぱり馬の世界は人間同士のつながり、関係性が大切です。お互い信頼関係を築いた上で気持ちよく仕事したいじゃないですか。せっかく馬を通じて知り合って、馬がいなければ知り合えなかった方々ですから、そのご縁っていうのがこの世界にはたくさんあります。そこを大切にするという意味でも庭先取引は安心できますね。

私はよく30年、40年と牧場を続けたいと思っていますと口にしますが、そのためにはオーナー様たちにずっと評価していただかないといけないので、今年はこういう風に自分たちはしっかり育てて、この場に持ってきましたというのを続けていくのがベストじゃないかと思っております。ですから毎年、挑戦です。

フォーロンジェ2026(父パールシークレット)

ここ2回は少し堅いお話になりましたので、次回はママの個性という点に注目したお話をしようと思います。題して「ハナさん(ハナブショウ)と私」です(笑)。

みなさん、素晴らしい一日をお過ごしください。

それでは、また。

(取材・構成/勝木 淳)

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