[大狩部牧場代表・下村優樹ブログ]大狩部だより - 牧場の個性を大切に

みなさん、こんにちは。

ウマフリ読者のみなさま、はじめまして。北海道新冠町にあります大狩部牧場代表の下村優樹と申します。この度、ご縁がありまして、ウマフリさんでブログを開設することになりました。

私は普段、「大狩部牧場・下村社長チャンネル」というYouTubeチャンネルをやっておりまして、すでに私のことをご存じの方もいらっしゃるかと思います。ウマフリさんですと、治郎丸敬之さんの連載「片目のサラブレッド福ちゃんのPERFECT DAYS」にたまに登場する「シモジュウ」(下村獣医師のこと)として目にした方もいらっしゃるんではないかなと思います。元々はですね、獣医師でして、日高軽種馬農協や社台ファームで勤務しておりました。大狩部牧場の代表には2023年春に就任しまして、「生産者の生の声」をお届けしながら、牧場にいる馬たちの様子を日々、発信しております。

YouTubeチャンネルを開設して、少し経ってからになりますが、毎日朝6時に動画を一本配信することを日課としています。なぜそんな早朝にアップしているかというと、大狩部牧場がみなさんの生活のリズムに組み込まれると、応援してくださる方が増えるんじゃないかなと考えたからです。馬の世界もリズムが大切ですけど、それは人間も同じですよね。毎朝、出勤中の電車のなかでスマホ片手に大狩部牧場の馬たちの様子を見るみたいな、そんな生活の一部になってくれたらうれしいなと思って、6時に動画をあげております。朝早くからお仕事されている方もいらっしゃるかもしれませんが、牧場も朝早くから稼働していますよってイメージしてもらえるかなとも思っています。

大狩部牧場のリアルな話題といいながら、ちょっと前の話になりますが、6月3日に京成杯を勝ったクリスタルブラックの母でもあるアッシュケークが出産を終えて、生産馬の繁殖シーズンが終わりました。最近は1、2月に産まれる子どもたちも増えまして、生産界は全体的に早めに産ませるようになってきました。そういう意味ではうちは遅いぐらいなんですね。5月生まれだと「遅生まれ」って言われますから。私は常々、アスリートとして丈夫な身体に育てるということをテーマにやっておりまして、やっぱり暖かくなってから産ませた方がいいと考えております。もちろん、私たちも育てやすいですし、暖かい環境ですと、やっぱり馬たちものんびり過ごせます。冬産まれだと、カチコチに凍った地面を歩くことになりますし、蹄を傷めるといったケガのリスクが出てきてしまいます。おまけにですね、最近は馬産地も雪が少なくなっておりまして、雪があればまだマシですが、放牧地の地面が本当に硬いんですね。もちろん、冬にそういった環境を経験することで、蹄が強くなるっていうメリットもあります。反対に暖かくなると、チビちゃんたちは細菌への感染率も高まるので、そこは職員たちとも共有して注意しています。それでも私は遅生まれを好んで作っていると思います。

これには別の理由もあります。それは大狩部牧場の放牧地の環境にあります。うちは決して、平坦な土地ではありません。勾配がありますし、土壌も結構ボコボコしているんですね。もちろん、整地して平らにするよう心がけていますが、やっぱり地形の影響でボコボコになってきます。チビちゃんたちは足元がボコボコで傾斜のあるところを走り回っているわけです。それが大狩部牧場の個性なんですね。私はかねてからサラブレッドの個性を尊重することをポリシーとしていますが、実はですね、牧場にも個性があります。大手の牧場さんのような平坦で広大な放牧地を走り回って育つ馬と、傾斜地で育つ馬は違うわけです。この牧場で育てるとしたらどんな馬体が理想かなと。自然のアップダウンのなかを元気に走り回るには後躯の強さが欠かせません。そこで腰回りが強くなるような血統、配合を考えるわけです。それは大手さんが求める血統とは違います。そこに馬の個性もあらわれてきます。それが牧場のカラーですし、個性でもあるんで、ここを強みにして大手さんと戦える馬をつくりたいと考えています。

牧場にも特定の相性がいい血統というのがあります。ノーザンファーム産のバゴ産駒が代表例です。クロノジェネシスやステラヴェローチェとなぜかバゴ産駒はノーザンファーム産がよく走ります。これは単なる相性の良さではないんじゃないかなと。繁殖牝馬の血統や環境、育て方、育成面とかなにか根拠があって、データもあるはずなんですね。それが走るバゴ産駒を出す理由だと私は考えました。で、ですね、それは別にノーザンファームの話だけじゃないんです。どの牧場にも相性がいい種牡馬や血統があって、その相性の良さにはそれぞれの牧場の個性が関係しているはずなんです。だから私は傾斜がある環境や繁殖牝馬の血脈、日々、接する職員たちの個性も含めて大狩部牧場に合う血統を追い求めています。大狩部牧場でしか生産できない馬という個性を大切にしています。

毎日、生産馬の様子をYouTubeで発信しているのはそこを知ってもらいたいという気持ちもありますし、もうひとつ大切なことがありますが、ちょっと長くなってきましたので、それはまた次回お話したいと思います。

みなさん、素晴らしい一日をお過ごしください。

それでは、また。

(取材・構成/勝木淳)

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