![[大狩部牧場代表・下村優樹ブログ]大狩部だより - カラヴァッジオとパンサラッサ](https://uma-furi.com/wp-content/uploads/2026/08/アッシュケーク26パールシークレット.jpg)
みなさん、こんにちは。
まずはこの度、発生しました熊本での地震で被害に遭われました皆様に対して、心からお見舞い申し上げます。九州も私たち北海道と同じ馬産地です。建物への被害も大変なことですが、断水や停電といった厳しい状況下で馬を育てているホースマンのみなさんのご苦労に思いを馳せまして、胸を痛めております。一日でも早く皆様が日常を取り戻せることを祈っております。
北海道は先週まで本当に夏とは思えないほど涼しい日が続いておりました。それでも晴れて気温が上がると、アブや刺しバエといった虫が増えてきます。馬たちにとってはストレスになってしまうので、私たちもその辺をケアしなければなりません。

前回、ちょっと長すぎたために話が途中になってしまいました。すみません。私がYouTubeで毎日発信している理由でしたね。大狩部牧場を身近に感じていただきたいという理由ももちろんですが、実は生まれてすぐのチビちゃんたちの姿をオーナー様はじめ関係者に見てほしい、残したいという生産者としての本音もあります。生まれたばかりのチビちゃんたちの資質って、最初の3ヶ月ぐらいは隠さずに見せてくれます。成長するとともに本人たちは隠しているつもりはなくても、だんだん見えなくなっちゃうんですね。生まれて3ヶ月ぐらいですとママと一緒にいて、ママの動きについていこうとするときに持っているものをすべて出して動きます。そうじゃないとママについていかれないんですよ。そこにですね、一頭一頭の資質が見えます。ですが、成長して筋肉がついてくると、すべてを出す必要はなくなるので、資質を出さなくなるんです。なので、私はまずは生後3日目までの丸裸の資質を見てとれるだけ観察し、そこから更に3ヶ月目までの当歳の天性の動きを見ることをオーナー様にもオススメさせていただております。
この時期の天性の動きは体の成長などによってバランスが崩れたりして窮屈になってしまい、見えなくなることもありますが、サラブレッドは最終的に当歳の頃に見せた資質、原点に戻ります。それを知ってほしいなという思いもあってYouTubeでチビちゃんたちの様子を配信しています。たとえば、チビちゃんたちと走ったり遊んだりしていて、私が「あー」とか「危ないっ」とかって言いながら、撮影していますが、ああいう動きがとても重要なんですね。ですが、なかなかオーナー様にはそういった放牧地での動きを見てもらえないので、動画として残して見ていただきたいと考えております。たとえば背中のしなりとか、ジャンプしたときの下半身の強さやバネなどはセリ場ではなかなか伝わりません。当歳のときの資質や経験って本当に大切ですから。なんとかですね、注目してもらいたいなと思って危険を承知で日々、放牧地に入って撮影しております。みなさんは危ないのでくれぐれも真似しないでくださいね(笑)。
前回、牧場にも個性があるというお話をさせていただきましたが、だったら大狩部牧場の放牧地に合う血統ってどんなものがあるのか。この点もお話いたします。もちろん、放牧地だけでなく、弊社の繁殖牝馬の血統や馬体といった要素もあります。そこも踏まえて私が注目している種牡馬はカラヴァッジオとパンサラッサです。もちろん、真珠君(パールシークレット)は言うまでもありません!
私は自他ともに認めるお尻フェチですが、それだけではなくて、弊社の放牧地で走り回るためにも後躯を重視しています。弊社には腰とボリュームあるトモを成長させていく環境が整っています。もうひとつはアスリートとして大切な心肺機能なんですね。
カラヴァッジオは短距離で活躍しましたが、血統構成からして間違いなく大きな心臓をもっています。短い距離であっても、ほかの馬たちが苦しむなかでも、カラヴァッジオはバテずに走れました。筋肉の質もあると思いますが、大きな心臓の遺伝子を持っているので、たとえ牝馬が生まれても、その牝馬がママになって大きな心臓を伝えていくことができます。基本的に馬の調教は坂路を使って行われます。坂路は後躯の強さがないとのぼれないんですよ。ボリュームあるトモとそれを使える腰の強さがなければ、調教できませんし、その上のレベルまで大成できません。その意味でもカラヴァッジオは魅力ですね。

パンサラッサはノーモーションで動く子が多いです。人間も馬も動く時は、なんかふわっと予備動作を入れて動き出すのが普通です。たとえばですね、人間も頭を前から押さえられて固定されると立てないです。ですが、固定せずに頭を前に少し動かすと自然と立てます。この頭や首を前に少し移動させて反動をつける予備動作がパンサラッサの子どもにはないんです。馬もですね、やはり動くときはふわっと首とか頭が動くんですよ。個体によって違いますが、必ずどこかにモーションがあるんで、私も目の前の馬の動きを察知できます。ところがですね、パンサラッサの子はいきなり動きます。黙って立っているところからいきなりビュンって飛んでくるんですよ。だから動きが読めなくてちょっと危ない(笑)。こっちを向いていて、あ、来てくれってサインだろうなと思って私、近づくと、いきなりお尻から来ることがあって焦ります(笑)。

動きを真横にも前にも止められます。これは腰が強くなければできないんですよ。腰をギュッギュッって使えるからです。なかなかできる子はいません。共通しているのはパンサラッサの血です。1歳のアンリミテッドピサの子や当歳の3頭もみんな腰が強くて、お尻もプリっとしています。ちょっと父のロードカナロアとは違うタイプですね。カナロアは筋肉質ですけど、パンサラッサは幅がある感じで、シャープにしたイメージです。実馬をみると、種牡馬らしくないんです。余計な脂肪や筋肉がついていない感じがします。シャトル種牡馬なんで、あまり休んでいないっていうのもありそうですが。とにかくパンサラッサの遺伝力の強さを感じますし、不思議な馬です。
ちなみにですね。うちにいるパンサラッサ産駒はみんな牝馬ですが、体は牡馬みたいです。マリントウショウのチビちゃんは生まれてすぐ、まだ歩くのもおぼつかない時にオーナー様に買っていただいたんですが、チビちゃんが尻っぱねみたいな動きをしたのをみて、バネがすごいから買いたいって言ってくださったんです。で、買うって決めてから聞かれました。ちなみにお父さんは誰なのって。そうやって情報じゃなくて資質を見てくれたっていうのもうれしかったですね。
今年、ダービーを勝ったロブチェンの父ワールドプレミアについて私もいこうかどうしようか相当迷いました。なにせ今年の種付け料は50万円ですから。ダービーサイヤーで50万。来年は間違いなく上がります。ビジネス的には今年はチャンスかなと。でも、私は交配しにいきませんでした。本当はワールドプレミアの子を育ててみたいです。育ててみなきゃわからないとは思います。ですが、ロブチェンはやっぱりノーザンファームが育んだもので、我々が同じような環境で育てられるかっていうとちがいます。
私が思うにロブチェンは母系のアメリカ血脈の影響を感じます。母系が引き出した面が大きいんですね。血統的な相性もありそうです。弊社で最後に出産したアッシュケークに交配したらおもしろいんじゃないかなと思いました。アッシュケークは同じディープインパクト系のキズナとの間に京成杯を勝ったクリスタルブラックを出しています。ただ、キズナと同じかといったら、私的には違います。もちろん、可能性はあります。なにせ血統登録数25頭のなかから牡馬の二冠馬が出たんですから。それもデータもなにもない初年度産駒から。将来、とんでもない種牡馬になることはまちがいないです。まして交配料は今年50万円。この手で育ててみたいですし、その可能性にかけてもいいんですが、弊社の傾斜がある土壌に合うかって考えたときに、やっぱりわからないんで、ちょっと私としては勝負できないかなと。だったら、カラヴァッジオやパンサラッサ、真珠くんの方が自分の感覚としては近いのかなと考えました。

と色々とお話してきましたが、またまた長くなってしまいました。今日はこの辺で終わりにしたいと思います。北海道は間もなくサマーセールがはじまり、競りシーズン真っ只中です。次回はそんなお話をしようと思っております。
みなさん、素晴らしい一日をお過ごしください。 それでは、また。
写真(掲載順):アッシュケーク、ヒメワカバ2025 牡(父カラヴァッジオ)※サマーセール4日目【上場番号854】、ブラックシュガー2026 牝(父パンサラッサ)、アッシュケークの2026 牡(父パールシークレット)
(取材・構成/勝木淳)
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