[今週の注目]夏競馬の折り返し地点で輝け!CBC賞に挑む3歳牝馬サンアントワーヌ

6月末の福島・小倉で幕を開けた夏競馬も、そろそろ折り返し地点を迎える。先週から始まった中京と新潟の開催では今年も暑熱対策が実施され、「名探偵コナン」や「ちびまる子ちゃん」が始まる時間帯になってもレースが続く。夕方のテレビ画面に競馬中継が映っていると、どこか得をしたような気分になるのは、私だけではないはずだ。

今週の日曜日、メインレースは新潟のレパードS、中京のCBC賞。CBC賞は1200mで行われるサマースプリントシリーズ第3戦であり、シリーズの行方を左右する重要なポイントレースだ。今年で62回目を迎える伝統のスプリント重賞である。

その歴史を振り返ると、レースの姿は時代とともに変化してきた。中京競馬場に芝コースがなかった1960年代はダート1800mで施行され、芝コースが整備されると1400mの重賞として定着した。現在の1200mになったのは1981年から。ニホンピロウイナーやハッピープログレスといった快速GⅠ馬の名が並び、平成に入るとマサラッキ、アグネスワールド、トロットスターなど、後にスプリントGⅠを制する馬たちが優勝馬として名を刻んでいる。

CBC賞はもともと、12月に行われていたGⅠスプリンターズSの前哨戦として冬の中京開催に組まれていた重賞だった。90年代前半には6月に施行された時期もあったが、2000年の番組改編でスプリンターズSが9月の中山開催へ移行すると、CBC賞も2006年から夏の中京開催に定着し、現在の形となった。

このレースには「七不思議」と呼ばれる特徴がある。3歳馬がなかなか勝てないのだ。冬の開催時代にはサニングデールやシーイズトウショウなど3歳馬の優勝も見られたが、夏開催となった2006年以降では、2022年に今村聖奈騎手が初重賞制覇を飾ったテイエムスパーダが唯一の3歳優勝馬となっている。ハンデ戦とはいえ、5月まで3歳限定戦を走っていた馬が、混合戦のオープンクラスで古馬と互角に戦うには、相応の能力が求められるということだろうか。

今年、その壁に挑む3歳牝馬がいる。桜花賞7着後、じっくりと調整を進めてきたサンアントワーヌだ。今週は、この若き3歳牝馬が古馬を相手にどんなレースを見せてくれるのか、注目したい。

■サンアントワーヌの歩み - デビューから桜花賞まで

サンアントワーヌは父ドレフォン、母サンティール。新潟開幕週の新馬戦を勝ち上がった半妹セプタードアイル、2勝クラスで奮闘する半兄ピックデムッシュなど、きょうだいも堅実に走る血統だ。

デビューは6月の東京・1400m新馬戦。D.レーン騎手を背に、直線で危なげなく抜け出し4馬身差の完勝。軽いフットワークと反応の良さが際立ち、将来性を感じさせる初陣だった。

2か月の休養を挟み、夏の終わりには新潟2歳Sへ挑戦。道中7番手から直線で脚を伸ばしたが、独壇場となったリアライズシリウスには及ばず4着。それでも上がり3F33秒0の鋭い末脚は見せ場十分で、牝馬ながらしっかりとした伸びを見せたことで、来春の大舞台への期待が膨らんだ。

3戦目は10月の東京・2歳1勝クラス(1400m)。戸崎騎手を背に大外から悠々と抜け出し2勝目を挙げる。前年はエンブロイダリーが勝利した縁起の良いレースであり、サンアントワーヌもその後を追うのではないか──そんな期待を抱かせる内容だった。

暮れの阪神JFには向かわず休養に入り、3歳初戦は中山のフェアリーSを選択。しかしスタートでヨレたことが響き5着。賞金加算に失敗したことで、桜花賞出走を賭けてフィリーズレビューへ向かうことになる。

フィリーズレビューは、サンアントワーヌが得意とする1400m。ショウナンカリスに続く2番人気に支持され、パドックでも抜群の気配を見せた。五分のスタートから大外を追い上げ、直線では先頭集団に取りつく。内から抜け出したギリーズボールを追うが届かず、それでも二番手争いを制して2着。桜花賞出走権を確保し、収得賞金の積み上げにも成功した。

迎えた桜花賞。直線で一瞬、抜け出すかと思わせたが、最後は息切れして7着。それでも勝ったスターアニスから0秒7差、11番人気での健闘は評価できる内容だった。

■そして、夏 - サンアントワーヌ、短距離路線で咲く新たな可能性

桜花賞という大舞台を経験し、3か月の休養を経て、サンアントワーヌが選んだ次のステージは1200m戦。フィリーズレビューで見せたスピード、デビュー当初から感じられた軽いフットワーク。その資質は、短距離戦でこそ輝くのではないか——そんな期待を抱かずにはいられない。

今年のCBC賞には、例年以上に「1200m巧者」が揃った。

重賞で好走を続けるレイピアは、直線で見せる末脚が武器で、展開に左右されないタイプ。

ドナウブルーの仔ディアナザールは、まだ底を見せていない上昇馬で、スピードに任せた先行力が魅力の1頭だ。そして、もう1頭の3歳馬タマモイカロス。福島2歳S、マーガレットSのオープン特別勝ちの実績を持ち、前走の重賞・葵Sでも3着に入っている。ハンデ54キロと軽量を活かしたスピード勝負に持ち込めれば、古馬相手でも侮れない存在だ。

これらの顔ぶれを見ると、今年のCBC賞は序盤から流れが速くなる可能性が高い。昨年の覇者インビンシブルパパやディアナザールが積極的に前へ行けば、道中は締まったラップになり、差し馬にもチャンスが生まれる。

52キロの軽ハンデで挑むサンアントワーヌは、どこにポジションを取るのか。1400mでは中団から鋭く伸びる形が板についていたが、1200mではもう少し前に行く選択肢もある。スタートが決まれば、行こうと思えば行ける馬だ。ただ、無理に前へ行く必要はない。むしろ、速い流れを「利用する」形で中団の外目に構え、直線でスムーズに加速できれば、フィリーズレビューで見せたような伸びが再現できるはずだ。

1200mは初めての距離だが、サンアントワーヌの走りには短距離向きの軽さがある。

桜花賞で見せた一瞬の伸び、フィリーズレビューでの鋭い追い込み──あの片鱗が、よりスピードを要求される舞台でどう表現されるのか。その答えが、CBC賞のターフにある。

3歳馬がなかなか勝てない「七不思議」の重賞レースで、サンアントワーヌはどんな走りを見せるのか。古馬の壁は厚い。しかし勢いと伸びしろを持つ3歳牝馬が、その壁を軽やかに飛び越える瞬間を、是非見てみたいものである。

この夏、サンアントワーヌは「1200mでの自分の走り」を確立し、秋のスプリント路線へ向けて確かな一歩を踏み出そうとしている。

今週も、ワクワクする「夏の週末」がやってくる。

Photo by I.Natsume

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