[牝系図鑑]ディープボンドやローレルゲレイロらを輩出。気の強さと圧倒的なスピードを兼ね備えたモガミヒメ牝系。

サイアーラインや近親交配を中心に語られることが多い血統論だが、牝系を通じて繋がるDNAはサラブレッドの遺伝を語る上で非常に重要な要素を占める。
この連載では日本で繁栄している牝系を活躍馬とともに紹介し、その魅力を伝えていく。
今回取り上げるのは、ディープボンドなどを輩出したモガミヒメの牝系だ。

最大の長所は優れたスピード

代表馬
・ローレルゲレイロ
・ディープボンド

村田牧場で繋養されていたモガミヒメを根幹として繁栄している一族。最近では阪神大賞典を連覇し凱旋門賞にも挑戦したディープボンド(父キズナ)やAJCC、エプソムCを勝利したノースブリッジ(父モーリス)などで有名なファミリーだ。中距離以上の活躍馬が出ているがこのファミリーの最大の長所はそのスピードにある。

モガミヒメ

日本での牝祖は1923年生まれのセレタという馬まで遡り、非常に長い期間に渡って日本で繋がってきたファミリーと言えるだろう。
モガミヒメの産駒はモガミヒメの父カコイーシーズ、母父マルゼンスキーの影響を受けていて、気が強くスピード性能が高い馬が多い。

ローレルウェルシュ(父テンビー)のようにスプリントよりも短い距離で活躍する馬やマイルより少し長い距離が持ったとしてもラヴァーズレーン(父メジロライアン)のように逃げを信条とするようなタイプの産駒が目立つ。

多様なカテゴリーで勢力を伸ばすモガミヒメ

牝系図

繁殖として勢力を伸ばしたのはビッグテンビー(父テンビー)とゼフィランサス(父キングヘイロー)の2頭。

ビッグテンビーの枝はテンビーが母父になりスピードが強調された形になっているため、ローレルゲレイロやアメージングムーンのように優れたスピードを有するスプリンターが出たと見られる。孫世代のノースブリッジ(父モーリス)はAJCCを勝利しているが、中距離スピードタイプに出たのは牝系の影響だろう。

ノースブリッジ

ゼフィランサス(父キングヘイロー)はキングヘイローらしい力強さも兼ね備えていて、距離はビッグテンビーより融通が利いた方だ。そこにキズナを迎えて誕生したのがディープボンドで、スピードタイプに出やすい一族にディープインパクトを内包したキズナを迎えたことによってHaloらしい機動力のある馬となった。

またディープボンドはLyphardのインブリードを持つが、ここも粘り強さとしてしっかり遺伝しているのではないかと感じる。先行できるモガミヒメ牝系の良さも出ていて全てがハマった「当たり」と言えるだろう。

ディープボンド

モガミヒメ牝系は中距離以上での活躍が目立つファミリーだが、ここまで記した通りスピード性能が高く柔軟な一族だ。

スプリンターを生み出すことができる分岐、ステイヤーを生み出すことができる分岐がそれぞれあって多様性を有していることも、この一族が今後繁栄していく大きなアドバンテージとなることを予感させる。

写真:かぼす

画像:貴シンジ

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